こんなはずではなかった。
黄色い歓声で沸きかえる若いお嬢さん方の間で私は困惑していた。
断じて、こんなつもりで観に来たのではないのだ。
これではまるで、この日を指折り数えて心待ちにしていた熱狂的なファンのようではないか。
違うのだ。
実写版『デビルマン』の酷評を聞いて、そんなにオモシロ映画になっているなら一度見てやろうと、冷やかし気分満々で、行きあたりばったりに選んだ映画館へ、たまたま到着した時間の次の上映の切符を買ったら、こういう席があたってしまったという、ただそれだけのことなのだ。
それがたまたま出演俳優の舞台挨拶付きの上映で、しかも本来前日に行われる予定だったのが台風上陸でゲスト到着が遅れ、延期された先がたまたま私が映画館に入ったその日その回だった、というだけのこと。ステージ上の若い男優たちに向かって「きゃー!」「こっち向いてーッ」などと甲高い声をはりあげたり手を振ったりしている(概ね)若いお嬢さん方の隙間に私が小さくなって座っているのは、あくまでも偶然なのだ。
断じて偶然だ。
え? 肝心の映画はどうだったって?
不条理芸術の域に達した噛み合わない台詞。
(あれほど笑いが止まらなかったのは『少林サッカー』以来である)
微笑ましいチープ感あふれる特殊効果。
(○○の首とか……○の○○れた胴体とか……)
原作を3宇宙単位くらい超越した脚本。
(原作者を貶めるためにあれを書いたのだとしたら脚本家は天才だ)
『キャシャーン』を観たときこれは近年いちばんのダメ映画だなと思ったがそれは間違っていた。『デビルマン』のようにすばらしいクズ映画を私はかつて見たことがない。
どんなつまらない映画でもスタッフロールを最後まで見ることを礼儀と考える私だが、今回だけはスタッフロールが始まった瞬間に席を立ったのだった。
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