灰緑色の異形の獣が二頭、行きつ戻りつしている様を、物影からうかがいながらスーツ姿の男が抑えた声で隣の若者に言う。
「……俺はいちど月を捨てたフィロドクスで、吸血鬼と組んで名声を手に入れた男だ。俺と組むのは出世のためにならないかもしれないぜ。それだけは先に言っておく」
「祖国ではヴァンピールと組んで戦っておりました——必要とあらば、仲間の屍を喰らってでも生き延びて、戦い続けたのが我らの一族であります」
「ならば歓迎する——ムーンダンサー」
傷だらけの手が乾いた握手を交わす。あとはどちらも無言で音も立てずに坂を上がってゆき、その姿が流れるように二頭の巨大な狼になる。一頭は銀毛混じりの灰色。一頭は輝くような純白。
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