煙草の匂い消しにエッセンシャルオイルというものを使っている。植物から抽出した精油なので、消臭剤と違っていかにも「におい消してます!」というようなわざとらしさがないのがいい。コップにお湯を張って2、3滴落としておくといい具合にヤニ臭さを中和してくれるのだ。
そういうわけで机の上には「飲むな劇物」と書かれた使い捨てのプラスチックコップが常駐しているのだが、異変は数時間放置してすっかり冷めてしまった湯を交換しようとコップを持って立ちあがったとき発生したのだった。
めり。
めり?
異様な感触におもわず手元を見直すと、プラスチックコップにありうべからざる現象が起きていた。コップの中腹が裂けて水があふれ出してくるではないか。
泣きながら後片付け(水浸しになったプリントアウトの再出力含む)を終えたあと、まっぷたつになったコップの裂け目を調べてみると、裂けたというよりなにやら溶けたようになっている。
溶けた? だが中に入っていたのは溶剤の類ではなくグレープフルーツのオイルだったはずで……そこではたと気がついた。
最近の台所洗剤には柑橘系の成分を含むものがある。油分を分解するのに有効なのだという。プラスチックとてもとをただせば樹脂の類であり、そこに台所洗剤よりはるかに濃厚な柑橘系のエッセンシャルオイルが長時間にわたってコップの中腹に溜まっていたら……それは溶けもするだろう。
あとで同僚のご婦人にこの話をしたところ、プラスチックスプーンにこびりついた汚れを落とそうとしてオレンジ由来の成分を含む某洗剤につけておいたらスプーンがぐにゃぐにゃになった、という体験談を聞かせてくれた。
ミカンのたぐいといえどもあなどれないのである。
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