前回のキャラクターコンテストをばっくれたので今回は多少まじめに書いてみました。ネタ自体は不真面目です。
【サヴァラン/Savarins】
天は素晴しい肉を送ってくれるが、デヴィルが料理人をさしむける。——デイヴィッド・ギャリック
この枝族(bloodline)の起源は、名前よりもはるかに古い。始祖は17世紀末フランスの、ある自己顕示欲旺盛な宮廷料理人だという。この男、引退後に自ら考案したレシピの数々を書き残そうとしたのだが、完成間際に病に冒され余命幾ばくもないと医者に言いわたされた。我が著作が日の目を見るまでは死んでも死にきれぬ、と、老料理人はついに黒魔術に手を出し悪魔を呼び出して魂と引き替えにいましばらくの寿命を買い取った。言うまでもなく悪魔の正体はディーヴァ氏族のヴァンパイアで(Circle of Croneの一員だったらしい)、おかげで本は無事日の目を見たが著者本人は二度と日の目を見られない身の上に墜ちたというわけだ。
老料理人にとってヴァンパイアの食餌は受けいれがたいものだった。貴族出から平民出までみな一様に「素材」にそのままかぶりついて「これが最も美味」とは! 野蛮人も同然ではないか。たしかに新鮮な血が美味なのは認めるが、手を加えればさらに旨くなるとどうして誰も考えないのか。
酒に酔った人間の血を飲めばヴァンパイアも酔うことから、食物と血の味に因果関係があると考えた老料理人は、長年の研鑽のはてに「血に望み通りの風味をつける」という独自の訓え《調味術/Cuisene》をあみだし自らの枝族を創始する。実のところ、19世紀半ばに『美味礼賛』の著者が加わるまで、この枝族は単に料理人を意味する「カリナリアン(Culinarians)」と呼ばれていたのだ。
件の美食文学作家、つまりブリア=サヴァランは、人間では味わえない至高の美味を求めてディーヴァ氏族の抱擁を受けいれ、それでも飽きたらずにカリナリアン枝族に加わったのだが、《調味術/Cuisene》を駆使した饗宴で当時のパリ公子の外交におおいに貢献し、枝族を一躍有名にした。サヴァランはカリナリアン枝族の代名詞的人物になり、やがて枝族そのものの俗称になり、枝族自体も好んでその名を使った結果、事実上の正式名として定着してしまったのである。
血族のパーティに「軽い飲み物」が出されることは珍しくないが、それにサヴァランが手をかければ飲み物自体がまさしく「よそでは味わえないもてなし」に変わる。ゆえにサヴァランの「料理人」は社交好きの血族にひっぱりだこだが、彼らが血族にのみ作用する毒にも通じていることを知る者は少ない……
【祖氏族/Parent Clan】
ディーヴァ/Daeva
【俗称/Nickname】
料理人/Culinarians
【枝族の弱点/Bloodline Weakness】
至高の美味を追求するがゆえに、たとえ生きるためでもまずくて薄い血には我慢ならない。その傾向は齢を経るにつれますます強まっていく。サヴァラン枝族のヴァンパイアは、ディーヴァ氏族の弱点に加え、以下の弱点を有する。
サヴァラン枝族のヴァンパイアは、血を吸える対象の制限(基本ルールp.99「Effects of Blood Potency」参照)に関するかぎり、體血強度/Blood Potencyが本来より+2高いものとして扱う。すなわち、體血強度2にして動物の血では生きていけなくなり、體血強度5にして早くもヴァンパイアの血しか飲めなくなる。
體血強度への修正が適用されるのは、吸血対象の制限を決める時のみ。休眠(Torpor)期間の決定や訓えへ抵抗を試みる際のダイスプールなどには影響しない。
現在、體血強度9以上のサヴァランは存在を知られていない。STがそのようなヴァンパイアをゲームに登場させる場合は、吸血対象に関する任意の制限を考えてほしい。
【コヴナント/Covenant】
サヴァランは自らの長所を活かすためにも、単に生存するためにも、安定した血の供給が欠かせない。ゆえに、住んでいる街で支配的なコヴナントにくみすることが多い。
【外見】
明らかにフランス起源の枝族ではあるが、近年グルメへの関心の高まりとともに人種民族ともに多様になってきた。特にアジア系民族出身者の増加は著しい。サヴァラン枝族は外見についてはさほど注文がうるさくなく、たいていは自分の生まれた時代なり最新流行なり趣味に応じた恰好をしているが、社交の場に出ることが多いため、TPOに合わせた服装ができるだけの良識は要求される。
【寝処】
しばしば獲物の「調理場」を兼ねるので、人間にとっても(日当たりを除けば)快適な居住環境を確保していることが多い。大都市のマンションやホテルの一室、あるいは私邸を構えているというのが一般的。人口の少ない郊外や町村でサヴァランを見かけることはまれである。
【出身】
生前から美食や調理に関心を持っていた者が多く、自然と富裕な中流〜上流階級出身者がほとんどを占める。元祖サヴァラン時代からの伝統で社交界と接触のある者が選ばれる傾向があるが、近年犯罪社会や医療方面に顔が利く血族の参入も増えている。足のつかない「食材」を容易に調達できるからだ。
【キャラクター作成の指針】
料理人たるもの、グルメの舌を喜ばせる新奇な味覚を考案する機知、《調味術》に必要なさまざまな調味料の組み合わせを覚える記憶力は欠かせない。ゆえにMental AttributeとMental Skillが最優先される傾向がある。素材の善し悪しを見抜く眼力のためにComposureも養いたいところ。もちろん良い食材を惹きつけるPresence、パトロンをがっちり確保するためのManipulationも高いに越したことはない。
【枝族の訓え】
透覚/Auspex、蠱惑/Majesty、剛力/Vigor、調味術/Cuisine*
【調味術/Cuisine】
めんどいので細かいデータは抜きです。要望があれば後日でっちあげます。
1ドット〔利き血/Tasting〕:血をほんの微量舐めただけで、それがヴァンパイアか、人間か、その他の超常生物かを判別できる。ヴァンパイアなら氏族およびBlood Potencyが自分より高いか低いか、人間なら性別やおよその年齢、健康状態までわかる。
2ドット〔調味/Seasoning〕:モータルのみ対象。特定の食物を摂取させることで、その血を吸ったヴァンパイアに術者の指定した味覚を感じさせることができる。この血は非常に美味であり、消費したときVitaeに換算して通常の2倍の効果を発揮する。
3ドット〔調理/Arranging〕:動物の血を人間の血に、人間の血をヴァンパイアの血に錯覚させる。通常ならBlood Potencyによる制限で飲めない血でも飲めるようになる。ただしVitaeに換算すると本来の1/2相当にしかならない。
4ドット〔調毒/Poisoning〕:人間の血をヴァンパイアにのみ作用する遅効性の毒物に変える。
5ドット〔昇華/Epiculian Tastes〕:術者に一定のコスト、ないし貴重な触媒の消費を要求するものの、動物の血を人間の血相当に、人間の血をヴァンパイアの血相当に変えることができる。〔調理〕の強化版であり、血の効力がVitae換算して半分になることはない。
【シナリオアイデア】
・街の有力血族が、メンツのかかった大パーティの「メインシェフ」としてサヴァラン枝族を雇い入れる。ところが彼は、メインディッシュに特別な種類の人間(例:18歳のフィンランド出身で生理中の処女)が必要だと言いだし、その調達係としてPCたちが駆り出される。
・ライバル血族が、パーティのホストのメンツを潰すために「メインシェフ」となるサヴァラン枝族の誘拐を計画。PCたちはそれを阻止してホストに恩を売るか、逆に手助けしてライバルに恩を売るかの二者択一を迫られることに。
・「メインシェフ」は、実はライバル血族の送りこんだ刺客だった。ホストが毒入りの「メインディッシュ」を口にする前に、PCたちはそれを阻止できるか?
・(W:tFとのクロスオーバーで)血を採っても採っても回復するUrathaはサヴァランにとって夢の食材。サヴァランの奸計にはまって囚われたパック仲間を救出に……
【アレンジ】
コンテストの趣旨に合わせてbloodline風味に仕立てましたが、covenantにしても美味しくいただけます。リゾート都市や大都会といった歓楽に関心の高い土地でたまにみかける、といった程度の小規模なものにして、CuiseneをCruacやTheban Sorceryのようなritualに変えるのです。
もともと「サヴァランの末裔」というより「美味を追求する者たち」という点にウェイトを置いた設定なので、同じ思想で結ばれた集団であるcovenantとは非常に相性がいいのです。Auspexによる鋭い味覚を活かしたMekhetの批評家、Animalismで野獣を飼い慣らし人血なみの美味に仕立て上げるVentrueの調理師、などとキャラクターの幅も広がります。
さらに想像を進めて、Savarin covenant内部に喰う専門のGourmets(美食家)と、味付き血を作る専門のChefs(調理師)という二つの派閥があって、それぞれ異なる系統のritualを持っている、というのはどうでしょう。美味なる血を作るritualを求めて高名なChefに弟子入りしたり、そのレシピが書かれているという稀覯書を探し求めたり、というようなシナリオネタが考えられます。
【あとがき】
そもそもの着想は、V:tMの『Dirty Secrets of the Black Hand』に載っていた追加技能「Blood Preparation」です。これは特定の薬物や香辛料や食物を人間に摂取させることで血においしく味付けをする(ないし毒を盛る)、というろくでもないスキルなんですが、もしV:tRの世界に存在したとしたらDaevaが飛びつかないわけがない……ですよね?
![]()
![]()
![]()