May 23, 23.48 レビュー完了。若干以前の更新分もシェイプしましたこのエントリはProfessorが本日届きたての『Ghouls』を読みながら第一印象を書くリアルタイム更新です。随時内容が変わりますので引用される際は注意してください。
『Ghouls』はVampire: The Requiemの5冊目のサプリメントだ。生きながらヴァンパイアの血を飲み、下僕となる代償に不老不死を得た人間——グール/ghoul(V:tR p.166)の拡張サプリメントである。本書があると、グールをPCとして使えるというのが売りらしい。
【Prologue: Day Club】
狂ってます。
V:tM製品の巻頭小説の中でもとびきりの狂おしさ、残酷さ、そして淫猥さを備えた短編だ。最初の1ページを読んだだけでも本書が提供しようとする世界の雰囲気が生々しく濃密に伝わってくる。
1ヶ月近く血を飲ませてもらえず不安にうち震えるグール——ワードと、彼を全裸で挑発し、さんざん焦らしたあげくお預けをくらわす残忍な女ヴァンパイア。主人公の窮状を見かねて、別の血族に仕える女グール、ロビンがこんなことを言いだす。
「私は昨夜ご主人様から血をもらったばかりだから、私の血を飲めばすこしは気分が良くなるわ。ご主人様のが混じっているから……」
ロビンが日頃サディスティックな主人に痛めつけられているのを知っているだけに、それ以上傷つけるのも……とワードはためらうが。
Robin pulls me into a stall. She’s sitting on the toilet, pulling down her pants, her underwear. “Blake checks my body very thoroughly,” she tells me. “He’d notice any new cut or scar. But today there’s another way.”
As soon as I can smell the blood, I’m on my knees.
ロビンは俺を(公衆トイレの)個室に引っぱり込んだ。ズボンと下着を下ろしながら便器に座る。「ブレイクはいつも私の体をすごく念入りに調べるから、傷をつけたら絶対気づかれちゃうんだけど。今日は別の方法があるの」
たちのぼる血の臭いを嗅いだ瞬間、俺は彼女の脚の間に顔を埋めていた。
言うこと考えることに狂気がにじみ出るワードとは対照的に、他人の苦しみに涙する優しい心をもつロビン。WoDの巻頭小説には珍しいタイプで、なかなか魅力的なのだが……続きはぜひ自分の目で読んでほしい。
最後から2行目の台詞は文字通りの意味ではないと思いたい。
【Introduction】
グールをPCとして使えるのが売り、と先に書いたが、グールを扱うために最低限必要なルールは『Vampire: The Requiem』に掲載されている。本書はあくまでもオプション、という位置づけのはずだが、p.8「Setting」ではWorld of Darknessとは何かという説明を行い(V:tRの、しかも専門サプリメントを読もうという人間にそんな基本事項を説明する必要があるのか?)、p.9〜11「Ghoul Myths and Facts」では現実の民間伝承におけるグールとV:tRにおけるグールの違いを一問一答方式で説明するなど、ほとんどヴァンパイアやワーウルフなみの扱いがなされている。
p.10「How To Use This Book」は本書の構成の説明。第1章はグールをとりまく背景設定について。第2章はグールキャラクターの作成ルール。第3章はストーリーテラー向けのグール活用ガイド。第4章はグールのサンプルキャラクター集。AppendixはGhoul Familiesの自作について。
p.10「Theme」と「Mood」は、WoDサプリメントにほぼ必ず付いてくるセクションなのだが、最近あまり関係ない話がだらだら書いてある傾向が顕著で、どこがテーマなのかどんなムードを意図しているのかいまひとつ判らず。
p.10〜11「Inspiration」は参考資料の紹介。ブラム・ストーカー『吸血鬼ドラキュラ』以外は日本人にはなじみがうすいものばかり。
【Chapter One: Bound in Soul and Blood】
グールがどのように創られ、何のために使われるか。人間がグールになるとどういう点が変わるか。また植物や動物のグール、生まれつきグールであるGhoul Familyについて。
p.14「The Ideal Ghoul」は、血族がグール候補者を選ぶ際に考慮する点について。本書を通じて主張されていることだが、血族は概してグールを友達というより奴隷と見なしている。奴隷には何らかの利用価値がなくてはならない、という話。
p.15「A New Life」は、人間がグールになることで社会生活上被る影響。かねがね、グールは人間としての生活もあるだろうに、主人の用事をいつこなしているのだろうと不思議に思っていたのだが、「グールになるとだんだん不眠症になる」という設定を見て深く納得。寝る間を惜しんで働いているわけですな。
p.15「Blood」は、ヴァンパイアの血がグールにとって持つ意義。
p.16「History of Blood」は人類が歴史上血にどのような宗教的意義を与えてきたか、という雑学的コラム。V:tRと直接の関係はないがネタにはなりそう。
p.16「Blood Pathology」は、グールと病気について。主人から貰った血が汚染されていたのがもとでC型肝炎やらエイズやらにかかって死ぬグールがいる、なんて生々しい話が紹介されている。また他にグールが抱える医学上の問題としては、物忘れが激しくなり過去の出来事を思いだしづらくなる、慢性的な不眠症になりひどくなると幻覚を見たりする、などがあるそうな。
p.16「The Vinculum and Sex」はグールと恋愛、性生活について。長く生きつづけるせいか、ヴァンパイアの呪われた血を飲みつづけるせいか、恋愛観や性生活の嗜好もだんだん歪んでいくらしい。
p.18「Objectification」はグールが物のように扱われる傾向(血族社会ではグールは財産だ)と、その屈辱に対してグールがどのように対処するか。反抗心をため込むタイプと、屈辱を快感に結びつけて乗り越えようとする(いわゆるマゾ)タイプがいるらしい。
物扱いの実例がいくつか挙げられているが、ちょっとどうかと思うものもある。
p.18〜22「The Reward for Service Rendered」は少しシステムのほうに踏みこんで、グールが習得できる訓え/Disciplineと、それを使えるグールがどのような役に立つかを考察する。V:tRグールはほとんどのDisciplineが習得可能なので、バリエーションはかなり多彩だ。Theban SorceryやCruacだって使えるぞ。(教師がいれば、の話だが)
各種訓えを習得させる利点だけでなく問題点も丁寧に指摘されている。たとえばCelerity、Recilience、Vigorなどの肉体強化系の訓えは、便利だがうっかり無意識に使って貴重なVitaeを浪費してしまう可能性がある。
p.22「Ghouls by Clan」は氏族/clan別にみるグール観と利用の傾向。サンプル・コンセプトが簡単に上げられており、グール・キャラクターを作る際のヒントになるだろう。
p.25〜40「Ghouls by Covenant」はコヴナント/covenant別にみるグール観と利用の傾向。どんな人物をグールに選ぶか、グールはどういう風に扱うべきだと思っているか、いった話を、ほぼ1コヴナントにつき3ページほども割いて細かく論じている。たとえばInvictusの間では、メンバー同士の会議にヴァンパイア本人ではなくグールを代理人に立ててよこすのが最近流行りだとか。
p.41「Ghoul Families」はこの本の目玉のひとつだ。ふつうグールは一人一人ヴァンパイアが作るものだし、妊婦をグールにすると胎児は流産か死産してしまう。ところが例外的に、グールが子供を産んで一族を成す場合というのもあって、これがGhoul Familyと呼ばれる。ここではゲームシステムにかかわらない設定をまとめて説明している。
p.45「Bloodlines」は、V:tR世界に現在確立された主なGhoul Familyのいくつかを紹介している。
p.53〜57「Fostering Thrall Bloodlines」は、意図的にGhoul Familyを作る方法について。p.54「Rumors」にはさらに怪しげな話が。
p.55「Independent Ghouls」は、特定の主人を持たない独立グールの話。グールはヴァンパイアの血を飲まねばならず、ヴァンパイアの血を飲めばVinculumに縛られてしまうのに、どうしてそんなものが存在しうるのか? その理由や独立グールとしての生き方について解説する。
p.57「Animal Ghouls」は動物のグールとその使い道について。ちなみにルールや数値に関する話はp.107「Animal Ghouls」でやっている。
p.59「Mandragora」は植物グールの説明。以前に流れたプレビュー記事があるので詳しくはそちらを参照されたい。プレビューに載らなかったものとしては、mandragora(植物グール)の詳しい作り方と維持の仕方、実例がある。lacrimaを飲んだ時のルール上の効果についてはp.106「The Blood and Wine: Lacrima」のほうに説明がある。無理して分けることもないだろうに……
【Chapter Two: Ghoul Characters and Special Rules】
本書の目玉、グール・キャラクター作成ルール。VampireやWerewolfと同様、人間キャラクターにテンプレートを適用する形で制作する。
p.66「Special Concerns for Creating Ghoul Characters」で述べているように、すべてのグールは主人が何らかの目的に利用するために創ったものだ、という点を念頭に置いて創りたい。
p.71の「Inherited Ghoul」〜p.74「Unobtrusive」までがグール専用のMeritとなる。
NPC用などにある程度強いグールを創りたい場合には、p.76「I Wasn't Enthralled Last Night」に追加Experience Pointの目安がある。
p.77〜87「Game Effects of Being a Ghoul」はグールに関する様々なルールの特例を集めているセクションだが、「グールが訓えを使うと、目の奥で暗い炎が一瞬ひらめいて見えることがある」など、ロールプレイの演出に参考になるような設定もたくさん載っている。数値やルールにはあまり興味がない向きにも一読をお勧めする。
p.77「Body and Blood」は、グールが飲んだ血はどこに行くのか、Blood Potencyが高いヴァンパイアからVitaeを貰うことに利点はあるのか、グールはオーラで識別できるか、などの解説。
p.77〜79「Blood Ties」は、見出しは小さいがかなり重要なことが書いてある。グールが被るblood addiction、それを断って真人間に戻ろうとする場合のルール処理、Vitaeの供給が絶たれた場合の老化スピード、主人とのVinculumを断つには、等々。Vitae切れと老化についてはp.86にも言及がある。
p.79〜80「Taste of Family」は主人の血とそうでない血をグールが識別できるかどうかの判定ルール。変にきりのいい場所でコラムが入ってしまってわかりづらいが、p.80の「Roll Result」はこのセクションの判定結果表だ。
p.79「Optional Rule: The Thrill and Reluctance」は、ロマンティックというか、少々エロティックな香りもする選択ルールだ。グールはVitaeを、自分の肉体と魂を満たしてくれる主人の一部、と感じており、体内に入ってくるときは歓喜し、やむをえず消費するときは愛するご主人様が体内から抜けていくのを惜しむ。
Vitae値が上限いっぱいの時、グールは満たされた幸せな気分を味わう。これが心身の支えとなって負傷ペナルティを減らせるというオプションルールだ。1点でもVitaeを使ってしまったら恩恵は失われる。また、拷問や脅迫に耐える判定にボーナスを認めてもよいともある。愛の力は偉大なり。
p.80〜「Benefits of Ghoul Blood」はグールの基本能力について。ここに書いてある能力は、どんなグールでもVitae消費さえすれば使えるものなので、グール・プレイヤーを志すなら少なくともp.82「Using Disciplines」までは目を通しておくべきだろう。Disciplineの中にはグールが使うと効果が多少異なるものがあり、その説明がp.83〜85。
p.85「The Care and Feeding of Ghouls」は読んで字のごとく、ヴァンパイア・キャラクターが自分のグールを維持する際の注意点について。内容自体は前のセクションですでに説明されたことの繰りかえしのようだが、ヴァンパイアの視点から書かれているので、ヴァンパイアをプレイする場合にはこちらのほうがわかりやすいかもしれない。
p.86「Derangement」は、グール向きのderangement(狂気)のリスト。フェチ、マゾ、生き血偏愛、不眠症、等々各種取りそろえ。
自分のグールを〈抱擁〉しようと考えているヴァンパイア・プレイヤーは、p.87「Embracing Your Ghoul」を見てみるといいかも。
p.88「Ghoul Bloodlines」は、Ghoul Familyを創造する試みを判定で処理するためのシステム。こういうものをダイスで決めるのは無粋だと思う向きもあろうが、STの裁量で結果を決める場合にも修正値表は参考になるはずだ。
p.91「The Ghoul Families」の次からGhoul Familyが見開きで紹介されている。p.91の最後に、どう考えても次のセクションとは何の関係もない「Creating Mandragora」が紛れ込んでいるが、これはおそらくp.106「The Blood and Wine: Lacrima」の直前に入るべきものだろう。
p.106「The Blood and Wine: Lacrima」は、lacrimaを血族や人間が飲んだ場合のルール上の効果について。
mandragoraからはヴァンパイアが飲める樹液が採れる、というと「じゃあそれだけ飲んで生きている人畜無害な吸血鬼キャラも作れる?」と期待するむきは多そうだが、残念ながらWoD世界はそれほど甘い汁は吸えないようにできている。
1本のmandragoraが1ヶ月に産出するlacrimaを全部飲んでもようやくVitae1点にしかならない。それだけの量のlacrimaを飲めばまちがいなくlacrima中毒になってしまうだろう。
p.106「Tears of The Clans」は、mandragoraに血を与えたヴァンパイアの氏族によって異なるlacrimaの効能の解説。たとえばNosferatuの血を吸って育ったmandragoraのlacrimaは非常に色が薄く、塗ると透明になる。モータルが触れると皮膚から浸透し、強烈な刺激と、耳をつんざく甲高い悲鳴の幻聴を生じさせる。
p.107「Animal Ghouls」も意義がよく判らないセクションだ。動物グールが人間のグールとルール上異なる点の説明なのだが、たったの4項目しかない。たったこれだけならp.57に含めてくれていれば便利なのだが……
【Chapter Three: Storytelling Ghouls】
ストーリーテラー向けの章。グールはヴァンパイアにとって「予期せぬ伏兵」であり、うまく使えばSTにとってきわめて有効な切り札となる、というのが本書の主張である。
p.111〜113「Using Ghouls as Antagonists」は敵役としてのグールについて。グールがPCの敵に回るとしたら、どんな動機で、どのような攻撃をしかけてくるか、というネタがいくつか上がっている。
p.113〜114「Ghoul as Allies and Associates」は反対に、味方としてのグールについて。
p.114〜「Acts of Allegiance」は、ヴァンパイアがグールを必要とする動機色々。
p.116〜「Ghoul Characters」はグールをプレイヤー・キャラクターとして使用する場合の指針あれこれ。
p.116「Master and Servant」ではPCのご主人様を設定する際のTips。
p.117〜121「A Ghoul's Life」ではグールが実際にどういう生活を送っているものなのかいくつかのタイプを紹介する。
p.119「Roleplaying The Vinculum」はヴァンパイア・キャラクターにとっても参考になる。
【Chapter Four: The Debased】
グールのサンプル・キャラクター8人のデータを背景設定つきで収録。様々なタイプが揃っていて、そのまま自分のシナリオにNPCとして登場させたり、あるいは少し設定をいじって自分のグールにしたり、使いがいがありそうだ。
個人的にGinny Allan, The WerewolfとSiobhan, Bat Ladyが気に入りました。
ワーウルフといってもUratha・グールではないのでご安心を。
【Appendix: Creating Ghoul Families】
本書で紹介されたものとは別に、オリジナルのGhoul Familyを自作する方法や、バランスの取り方に関する言及。
【装丁と挿絵】
表紙や章扉はさすがに気合いの入った描きこみっぷりなのだが、本文挿絵は妙に荒っぽいタッチのイラストが目立ち、内容となんとなくそぐわない気もする。好みの問題もあるのかもしれないが。
【買う?】
基本ルールでグールの説明を読んで物足りないと思ったり、実際のところこういう部分はどうなの?とか突っ込みを入れたりしていた人には文句なくお勧め。グールをもっとリアルにロールプレイしたいST、グールPCになってご主人様に翻弄されてみたいPL、どちらにもきっと役に立つはずだ。
ただ、主眼はあくまでグールPC作成ルールとグール・ファミリーなので、CoteriesやHunting Groundのような豊富なST向け記事やシナリオソースを期待するとちょっとがっかりするかもしれない。
また全体を通じてなんとなく大人なというか、淫靡な雰囲気の漂う設定作りになっているので、そういう生々しい話とか変態とかが嫌いな方にはちょっときつい内容かも。
そういう生々しい話が大好きな人には当然ながらV:tRサプリ中いちばんのお勧めです。
![]()
辛抱たまらずPDF版を買った矢先にアマゾンから届く。
『Lancea Sanctum』では盛りだくさんの内容を伝えようとがんばったばかりにレビューを宙ぶらりんにしているので、初心にもどって速報性優先のファーストインプレッションに徹しようと思う。
終わるまで眠らないぜ。
![]()
【The Sunday Morning Hangover】バニラ味コーラの話を聞いたときにもずいぶん驚いたものだが、ここまでくるともう開いた口がふさがらない。
そもそもいかなる風味なのか想像もつかない。はたしてコーラの味付けの新境地を開く製品になるのだろうか。
![]()