V:tRやW:tFが溜まっているせいもあって周回遅れ気味ですが、毎日更新のフォローはShowさんのブログが頑張っておられるので、うちは当面このペースで。主に自分のメモ代わりに1週間分をまとめ読みしていきます。
【魔法の発見】
メイジ/Mageという存在がいつどのように発生したのか、確かなところは誰にも判らない。過去視に長けたメイジでさえ、それほど昔のことは見通せないからだ。ただ、メイジの間には起源神話めいたものがあるにはある。ひとつの滅亡した古代文明と、宇宙の支配者の座をめぐる戦争の物語だ。
その古代文明の名をアトランティスという。
太古の昔、人類は怪物たちの気まぐれに翻弄されるひ弱な生物にすぎなかった。日々生きのびるだけが精一杯、何かに怯えずに暮らすことなど夢のまた夢だったのである。
あるときを境に、世界各地で、一部の人間が夜ごと不思議な夢を見るようになった。風吹きすさぶ絶海の孤島、北極星の真下に、一本の尖塔がそそり立っている。これこそ世界の軸、天の穹窿の回転を支える心棒であり、頂上には龍の群が棲んでいた。
だが夢を見るたび、龍たちは一頭また一頭と塔から飛びたち、地平線の彼方へ去っていって、二度と戻ってこなかった。龍を恐れて精霊も怪物もこの島には住んでいなかったので、最後の龍が飛び去ると島にはもはや動くものとてない。それでも島は執拗に夢に現れ続ける。ここに至ってついに人々は、島が新たな住人を呼んでいるのだと悟った。彼らは怪物に脅かされない安住の地をめざして船出し、ついに夢に見たとおりの島にたどり着いた。
同じ龍の夢に導かれた人間が世界各地から続々と島に集まってきた。言葉や慣習は違えど、暴力や恐怖を逃れてやってきたのはみな同じだったから、移住者たちの間には争いは起こさないという暗黙の了解があった。
夢の訪れはなおもやまなかった。その啓示に従って夢見る者たちは深い洞穴で眠りにつき、魂だけが肉体を抜け出してはるかな高次諸界/Realms Supernalを目指した。
すると彼らのダイモーン、魂の双子が現れ、この先に進みたければ資格を見せろ、と試練を課した。大半が落伍したが、試練をくぐり抜けた者は高次諸界にたどりつき、創造の秘儀、万物を形づくる法則と組成を垣間見た。いまや彼らは、天の法、物質と精霊の世界を統べる上位法則を現出せしめる力を得た。思考を物質に変え、想像に血肉をまとわせることさえできるのだ。
これが魔法の発見である。
【アトランティスの興亡】
高次諸界から帰還した人々——メイジたちは、島民の指導者となって一つの都市を築きあげ、島の共通語で海の塔を意味する「アトランティス」と名づけた。様々なorderに枝分かれしたのもこの頃だ。
メイジたちは高次諸界で垣間見た、森羅万象を統べる万古不変の法則——Mysteriesを解きあかす手がかりを求めて、かつて見捨てた土地を訪れた。メイジが起こす奇跡に憧れ、多くの者がアトランティスを探し求めたが、ヴィジョンの導きがない者には決して見つからなかった。
アトランティスとは無関係に、独自に高次諸界へたどりつく魔法使いも時々いたらしいが、たいていは力を誤用して自滅するか、その力を恐れた民衆に殺されてしまった。神秘の技を究め、体系化するまでに到ったのはアトランティスだけだった。
だがその力がかえってメイジの分別を失わせ、傲慢さに拍車をかけた。アトランティス創立から何世代も経て、メイジたちの間に軋轢が生じ、魔術師同士の大戦争が勃発した。勝者は敗者をアトランティスから追放し、大いなる魔術を使って高次諸界に届く梯子を築いた。わざわざ肉体を脱いでアストラルの道を通ってゆくのは回りくどいというのだ。メイジたちは高次諸界にまさしく土足で踏みこみ、神々のように天上から君臨した。高次諸界に直接思考で干渉するため、彼らの命令はくだらないわがままや気まぐれにいたるまで逐一現実となった。可視と不可視の領域を分かつとばりは引き裂かれ、高次と低次がごちゃまぜになり、純粋たるべきものが汚され、宇宙は震撼する。
これを見かねて辺境に追放されていたメイジが蜂起し、アトランティスの天梯に攻め上って高次諸界の宮殿のメイジを襲撃した。恐ろしい乱戦が繰り広げられ、負けた方は——天上メイジも地上メイジも——天の高みから真っ逆さまに地上へ墜落していった。
ついに天上メイジは押し寄せる地上メイジを食い止めるため、天梯を破壊する挙に出た。天梯と共に世界そのものの一部も崩れ落ち、後には虚無の深淵——アビス/Abyssが残った。高次諸界と低次諸界の秩序は回復したものの、これまでのように魂が行き来することはできなくなってしまった。アビスはありうべからざる非在の在、命とエネルギーを呑みこむ底なし淵だからだ。同じ世界の一部だった高次諸界と低次諸界は、アビスによって二つの世界に引き裂かれてしまった。精霊界と物質界の境界には魔法でしか通れない障壁——ガントレット/Gauntletがそびえ立ち、天梯崩壊の反動でアトランティス島の地盤は砕け、島は海底に沈んでしまった。
これがメイジ揺籃の地の最後である。
【五つの灯台】
メイジたちはふたたび各地に散って失われた知識を集め直そうとしたが遅々として進まなかった。怪物たちの跋扈する地で生きのびるだけでも一苦労だったからだ。高次諸界との接触を断たれたために、魔法そのものを忘れてしまうメイジも出てきた。アビスの引力にひきずられて魂の目が「眠って」しまい、高次諸界のヴィジョンを受けつけなくなってしまうのだ。これがクワイエセンス/Quiescence、俗に言う「まどろみの呪縛/Sleeping Curse」である。こういう者の眼前で魔法を使うと、アビスの力をも呼び起こすことになる。
かろうじて魂の覚醒を保つメイジもいたが、アビス越しに高次諸界の力を引き出すのは次第に困難になり、うまくいっても時にはその力が歪曲されていて予期せぬ副作用を生じることもあった。このままでは数年のうちに覚醒者/Awakenedはひとりもいなくなってしまう、と危惧されたそのとき、五つの灯台/Watchtowerが次々と現れた。
この五灯台を創ったのは、オラクル/Oracleと呼ばれる五人の王、追放されたアトランティス人の末裔たるメイジだという。オラクルたちは天梯に攻め上って神を僭称するメイジ王たち——エクサルク/Exarchに戦いを挑んだ。天梯が破壊された後も高次諸界に残り、神々の玉座を僣取する不届き者どもと戦い続けていた。だがアビスが地上にもたらす悪影響に気づいて戦いを止め、それぞれ高次界の一つに、アトランティス島に祖先を導いた尖塔を模して、高い塔を魔法で築いた。その礎石には自身の魂の徳とありったけの魔法の知識を封じ込めた。これが下位諸界のメイジたちの魂にアビスの深淵を越えて導きのヴィジョンを送ったのである。かつてアトランティスの塔が祖先を呼び寄せたように。
ヴィジョンを正しく読み解き、いにしえの道を思い出したメイジたちは、洞窟や人里離れた塔の暗闇に引き籠もり、肉体を抜け出して旅立った。アビスを越える辛い旅だったが、幾人かは灯台のひとつにたどり着き、その礎石に自分の名前を刻んだ。
彼らが肉体に戻って目覚めると、まどろみの呪縛から解放されていた。灯台に自らの魂の手で名を刻んだことで、いまいちど高位諸界との接触を取り戻したからである。たった一つの領域とではあるが。
神々を僭称したメイジたちのことはほとんど忘れられてしまった。まだ生きているとしても姿を隠しているのだろうし、地上に干渉しているとしてもよほど巧妙に偶然や自然のなりゆきを装っているのだろう。かつて人が神となった時代があったことは、もう誰も覚えていない。
メイジを除いては誰も。
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