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骰子回転劇場 日記

やっと発送

業を煮やしてAmazon.comに注文し直した『City of the Damned: New Orleans』は、注文から17時間で発送通知が来た。やれやれと胸をなで下ろす。今回ばかりはAmazonも公約を守ったわけだ。

ただ、Amazon.comについてはNacky卿のこんな体験談もあるので、この日記を読んで自分もjpから注文を切り換えようと思った人はよくよく考慮してほしい。送料は基本料金+1点ごとに定額料金がかかるので、安い本だと私が言った額より割高に感じるかもしれない。それでもWhite Wolfから直販するよりは安いが。

業を煮やして

『City Of The Damned: New Orleans』をAmazon.co.jpに注文していたのだが、発送予定日から1ヶ月近く経っても届かないのに業を煮やし、同じ商品を「24時間以内に発送」とうたうAmazon.comから買い直すことにした。送料はかかるが割引率が倍以上なので(co.jpは15%、comは34%)、けっきょくco.jp価格+400円程度で済むことがわかった。いちばん安い便だと2週間以上かかるが、発送すらされないものを待つよりは精神衛生に良い。

これが順調に届けば『World of Darkness: Mysterious Places』『Predators』も米国から買い直すつもりでいる。

『Predators』発売

W:tFのサプリメント第2弾。PCの敵役となる諸種族をとりあげる。『Hunting Ground: The Rockies』に出てくる敵もいい出来だっただけに、楽しみだ。

アマゾンは8月発売で登録されてしまっているので、早期の発送は期待薄。カードを使いたくないとか急がない人向け。最も確実なのはDriveThruRPG.comでPDF版を買うことだろう。

W:tFマスタースクリーンの発売が8月末に前倒し

White Wolf Onlineのリリーススケジュールが更新され、『Werewolf: The Forsaken Storyteller Screen』の発売予定が9月12日から8月29日に繰り上がっている。

濡れワイシャツとMDMA

我が目を疑いましたが正真正銘お役所が作ったものらしいです。

なんかえっちくさい。特に濡れワイシャツ。

DriveThruRPG.comがアフィリエイト・プログラムを開始

TRPG書籍のPDF版をオンライン販売するDriveThruRPG.comが、アフィリエイト・プログラムを開始した。

アカウント登録済みであれば、特に手続きの必要もなくアフィリエイトに参加することができる。ページ右上の「Log In」からログインした状態で各商品ページを表示させると、その商品へのアフィリエイト・リンクが下の方に表示される。

DriveThruRPG Affiliate link(Sample)

オレンジ部分のURLにリンクを貼るだけ。そのリンク経由で商品が購入された場合、購入額の5%が収入となる。これは自分がDriveThruから商品を買う際の割引にするか、PayPal経由で現金振り込みするかを選べる。

DriveThruは絶版本も多く扱っているので、紙では現在なかなか手に入らない本の紹介にも使えそうだ。

さらに詳しい話はFAQをどうぞ。

Beast Bindセッション

ちょっとふざけすぎてせっかくの情報収集の機会を反故にした。
自業自得ですな。

あとルールもさらっておかないとだめだ。

TRPGバトン

ともわかさんから回ってきた。あれよあれよというまに変種が山ほど発生したようだ。

所有しているTRPGの数

カウント不能。METとテーブルトップは別勘定か、とか、Webに公開されているTRPGシステムへのブックマークは「所有」とみなすのか、とか、バージョン違いは別タイトルとするか、とか、定義に迷うものが多すぎて数えるのがいやになった。奥にしまい込んでるものを引っ張り出すのもぞっとするし。

まあ、割合で言うとWoD英語版80%、その他の未訳洋物15%、翻訳物が4%、純国産が1%、というところ。

最近お気に入りのTRPG

Werewolf: The Forsaken』。大義のためでもなく、主君のためでもなく、ただ敵だらけのこの世の中で、大切な仲間と自分が生きていく余地をかちとるために戦う、というコンセプトに心を打たれる。

W:tAには「ガルゥは名声を欲しがるもの」という前提で成り立っているところがあって、キャラクターの地位や評判に関心が薄く、幸福に暮らせればそれでいいというプレイヤーに対しては行動意欲をかきたてるのが難しかったが、W:tFはそういう人たちが俄然やる気を出すようなゲームになっている。

PCは生きていく場所を自力で勝ち取らなければならないが、いったんテリトリーを手に入れれば、そこでどう生きていくかは自分の自由だ。偉い人があれこれ指図したりはしない。維持する努力を怠れば困るのは自分自身。そんなところがなんとも潔く、一種の清々しさをおぼえる。

褒めてるわりにこの日記ではV:tRばかり取りあげているじゃないか、という指摘もあろうが、それは単に、V:tRシリーズ製品の数がW:tFの3倍以上ある、というだけの話。

思い入れのあるTRPGを5タイトル

結構いろいろなところで話をしたので皆さんご存じのエピソードも多いかもしれないが。

ワーウルフ:ジ・アポカリプス
一度ならず私の人生を変えてきたゲーム。翻訳することの面白さと恐ろしさを教えてくれたゲームでもある。これと出会わなかったら、骰子回転劇場はおそらく生まれなかっただろう。

Engel
White Wolf製品のドイツ語訳を手がけているFeder & Schwert社が作ったD20ゲーム。天変地異と疫病によって荒廃し、文明が中世レベルにまで退行した27世紀の地球で、地上に降臨した天使(Engel)となって魔物から人類を守る。

世界設定はWoDに匹敵する緻密さを誇り、27世紀の文化、宗教、風俗、食物から着物、娯楽にいたるまで、いかにもドイツ人らしい生真面目さで丹念に作り込まれている。聖堂騎士団はサムラーイな鎧を着用し、白人が編み笠かぶって田植えに精を出し、夜にはライス・ワインで晩酌、という文化の混淆ぶりがたのしい。PCの主な敵となる昆虫型モンスターDreamseedのデザインもいかす。

さらにゲームマスター専用セクションを読むと、その緻密な世界設定がすべて違う意味を帯びて見えてくる、というミステリ的な楽しみもある。

残念ながらWhite Wolfによる英語版展開は止まってしまったが、本国ドイツではまだまだ元気にサプリメントが出ている。それが読みたさにアマゾン・ドイツから本を買ってしまったという、おそるべき吸引力を持ったゲームである。

Kult
10年近くも探し求めてきた因縁のゲーム。WoDの10倍どす黒い、スウェーデン生まれのモダンホラーTRPG。内容については武藤潤氏の紹介が詳しいが、グノーシス神話をベースにした異教的世界観で、初版リリース当初はずいぶん物議を醸したらしい。2版が絶版になったのちもカルト的なファンの手によって長らく支持され、ついに第3版が発売になった。

『ソード・ワールド』
いまでこそ未訳洋物に首まで浸かっている私だが、初めてマスターをやったのはこの作品。レーティング表を暗記するほど遊んだが、それが災いしたのか、誰も気にしないような設定のあらを気にするようになってしまって幻滅。以来、剣と魔法系RPGから現代物に移行していくきっかけとなる。

『メックウォリアー』
数あるリプレイ本の中でもいちばん好きだったのがこのゲームのやつだ。特に初代の「魔女たちの饗宴」「女神たちの彷徨」は手垢で黒くなるほど読んだ。独立愚連隊シリーズもそれなりの魅力はあったが、メックウォリアーならではの半端なシミュレーションゲームっぽさ、というかミリタリー臭さが薄れてしまった気がする。

その後実際にプレイする機会に恵まれたが、ロボットアニメやシミュレーションゲームなどとんと興味がなかったくせに嬉々として遊んでいる自分の意外な適性に気づかされた。

気になる発売予定タイトル

Mind's Eye Theatre: The Requiem
V:tRのLARPバージョン。紙版は来月だからまあまだ予定ってことで。新導入のStatusシステムが、先行リリースのPDF版を入手したマニアたちから凄い凄いと大絶賛。Status traitが単なる肩書きを脱して、それを巡って争うに価値のあるリソースになっているらしい。断片的に流れる情報を見るかぎり、ゲーム上の利害を追求するとちゃんとWhite Wolfが考えるところの「血族らしい」ロールプレイになるように実に巧妙な仕掛けが施されているようだ。あと文章が信じられないほど平易で読みやすいのもいい。

バトンを渡す5人

こちらからだとまた同じような面子に回すはめになりそうだ。いっそバトンをここに置いておくので、まだもらってないが自分も語りたい!という人はこのエントリにトラックバックしてバトンを持っていってください。

WoD新製品の制作状況

White Wolf LiveJournal, 2005/6/23
今回の近況報告はV:tRディベロッパーのWill、ということでVampire関連製品のみ。

  • VIIは晴れて印刷に。
  • Invictusは編集&イラスト制作中
  • World of Darkness: Chicagoは3種族分の原稿が出そろったところ。
  • The Requiem Chronicler's Guideが校閲段階。
  • Ordo Draculはオリジンズで見本誌が公開 or 先行発売?

バットマン・ビギンズ

いいもの見ました。

今作のストーリーはコミック版にはない独自解釈だけに、原作を知っている人にはいろいろ思うところもあるのだろうが、私は原作はおろかこれまでのバットマン映画は一本も観ていないので素直に楽しめた。冷めたツッコミを入れずに最後まで観られた映画は『ロード・オブ・ザ・リング』以来だと思う。

プロットがとても整理されている印象を受けた。投げっぱなしとか矛盾する伏線がないので、「あれはなんだったんだろう」と釈然としない気分ではなく、「ああ終わった終わった」と気持ちよく映画館を出てこられる。

[V:tM] Gehennaセッション第5回

細かい事後処理は残っているが、シナリオ第1話が終了したようだ。aorenjarさんのキャラクターとの間に仕込んだネタも披露できたし、〔散華/Flower of Death〕を実戦で使うという野望は達成したし、狂乱して本性:怪物も満足させたし、個人的には大変充実したセッションだった。

  • 教訓1:4ターン以上戦わなければ〔散華〕よりノーマル《瞬速》のほうが効率が良い。
  • 教訓2:血族が吐くゲロは怖い。
  • 教訓3:人を疑うなら最後まで。

IRCで本編用・打ち合わせ用と2チャンネル使用しての進行だったが、後半は打ち合わせチャンネルに他のキャラまで仕切る勢いで指示を書き込みまくる。あんまりTRPGらしからぬ、というか、他キャラクターの本人意志を尊重しない場面演出重視のロールプレイ手法で、正直やりすぎかなと反省している。

ともわかさんのキャラとあまり交流できなかったのが残念。次は十字軍時代に遭ったことを思い出すイベントでも組みますかね。

Musical Baton

私生活上でもネット上でも、友人とか懇意にしている知り合いというものが極端に少ないことで定評のある私だが、最近面識を得たともわかさんからMusical Batonが回ってきてしまった。

最初に始めたのが誰かは知らないが、batonに指揮棒の意味があることを考えるとシャレのわかる人らしい。ふだん指揮される側(コントラバス奏者)としては指揮棒を渡されるとなんとも面映いが、まあさっさと誰かに渡そう。

Total volume of music files on my computer (コンピュータに入ってる音楽ファイルの容量)

2.76GB。数日前にだいぶ整理して1GBは捨てたはずだが……インターネットラジオを聴いていて気に入った曲があるとアーティストサイトを探してサンプルを拾ってくるせいで、捨てるそばから溜まる生活。最近ダークアンビエントとかネオクラシカル系に偏っているのでノーカット版のmp3サンプルをたくさん置いてあるCold Meat Industryにはよくお世話になっている。

Song playing right now (今聞いている曲)

  • Thy Veils「Everbeginning Night」—— from album 「Immemorable」

Thy VeilsはルーマニアのDaniel Dorobantu氏が立ち上げたソロプロジェクト。暗く静謐で氷を思わせる電子音楽系サウンドで、外出したくない暑い日のBGMにもってこいだ。公式サイトのただならぬ美しさは必見。Enter→News→右端のSound 「Sample」から色々試聴できる。上記の曲も聴けばなぜEverbeginningなのかわかるよ。

The last CD I bought (最後に買った CD)

CD-R

……やっぱりだめですか。そうですね。

ではあらためて。

疫病と災害によって中世レベルまで文明退行した地球を舞台に、天使(Engel)となって魔物と戦うドイツ製TRPG「Engel」のイメージサウンドトラック。私はこれを2年ぐらい方々探したあげくイギリスのレコード屋からやっと送ってもらったのだが、届いた3日後にiTune Music Storeでオンライン販売が始まった怨念の一枚。まあ荘厳かつうるさくないのでセッション用BGMには最適。

ちなみにIn The Nurseryは映画「インタビュー・ウィズ・ヴァンパイア」のサントラにも一曲だけ出てるらしい。

Five songs(tunes) I listen to a lot, or that mean a lot to me
(よく聞く、または特別な思い入れのある 5 曲)

  • Atrium Carceri「Illusion Breaks」
    セカンドアルバム「Seishinbyoin」から。このひと何かヤバイ薬でもやってるんじゃないだろうかと思うほど得体の知れない凄みの漂う暗黒アンビエント。
  • Mila Mar「Picnic on the Moon」
    よくあるヘブンリーヴォイス系と思ったら途中でいきなりブリッ子(死語)調に歌いだして背中が痒くなる。のだが、気がつくと「あれは痒かったなあ」ともういっぺん聴いている恐るべき中毒性音楽。
  • Dead Can Dance「Tell Me About the Forest (you once called home)」
    Werewolf: The Apocalypse第2版に歌詞が引用されていたきっかけで出会った曲。これがなければDead Can Danceの名前を一生知らないまま終わったかもしれない。
  • Sephiroth「Wolftribe」
    暗黒大国スウェーデン産のダーク・アンビエント。重低音で唸るシンセに呪術的なドラムビート、WoDがらみの作業をするときのBGMである。いちどW:tFセッションで流してみたい。
  • Chaostar「Day of Anger」
    ギターがジャカジャカ鳴る音楽はどうも苦手なので、ゴシックメタルといってもこんなのばっかり。

Five people to whom I'm passing the baton (バトンを渡す 5 名)

ご無沙汰の人も多いが、万一まだここを見てくれていて、気が向いたらでいいのでよろしく。ぶっちゃけチェーンメールですが必ず5人に回さねばならないというものでもないし、止めてしまってもいいらしいです。

Mage: The AwakeningTシャツ

ええっと……黒地にこの絵柄は恐すぎます。いやその、たしかにヘビメタ系Tシャツにはいかにもありがちなデザインといえばそれまでですけど、マゲワラファンがこれを着てアトランティスがどうたら魔法がどうたら真顔で喋っている図を想像すると特に……

White Wolf Quarterly 2005年夏号公開

White Wolf Online, 2005/6/15
紙版は米国ではすでにCamarilla向けに配布されていたが、ようやくPDF版が公式サイトにアップされた。残念ながら目玉記事だったはずのM:tAプレビューは、紙版公開後ほとんどの内容が各種フォーラムに流出してしまって目新しい情報がないが、V:tRの話題はけっこう多い。W:tF情報は1ページだけ。ペンドラゴンの話もちょっとだけ。

» PDF版ダウンロード(直リン)

  • Mage: The Awakening』プレビュー
    起源神話、Path、Order、Arcana、Spell一例。もっと詳しい情報が公式サイトで公開されてしまっているが、まあまとめと思えば。ちなみにイメージカラーはやっぱり水色、というかアトランティスだけに海のイメージらしい。夏発売だけに涼しくていいやね。
  • Ordo Dracul』プレビュー
    最終章から「blood archemy」の抜粋紹介。飲み薬に自分の血を混ぜて魔力を付与するDiscipline/Devotionのコンビネーションシステム。Dragon Nestとlociの関係についても言及アリ。
  • 『Lore of the Forsaken』プレビュー
    locusやfetish周りの突っ込んだ話がメインになるようだ。トーテムの章では部族トーテムやルナ、Bale Houndのトーテムにも言及されるらしい。UrathaがGiftをどうやって覚えるか、それを使うことをどう考えているか、というあたりが興味深い。表紙はシャドウランみたいだ。
  • ボードゲーム『Vampire: Prince of the City』プレビュー
    公子空位の都市を舞台に、プレイヤーは五つのClanのいずれかを代表する長老ヴァンパイアとして、人望や権力を蓄えて公子の後釜を狙う、というゲームらしい。ボードが公開されてますがなんだかカタンみたいアートの雰囲気はAtlas Gamesのカードゲーム『Lunch Money』によく似てる。
  • 『Pendragon Fifth Edition』プレビュー
    具体的な内容には触れていないが、グレッグ・スタフォードのデザインノートの一部が公開されている。10月発売予定だとか。表紙がたぶん初公開。イノシシ狩りのシーンなんですがイノシシがまるでシシ神様やたらにばかでかい上、立ちむかう騎士は槍装備で、タイトルが入ってないと一瞬なんのゲームだろうと思う。

公開からだいぶ時間が経っているので情報が古くなっている可能性はあるが、Webのリリーススケジュールに載っていない製品の発売予定をいちおうメモ。

  • V:tR
    • VII……9月
    • Prince of the City(ボードゲーム)……9月
    • The Invictus……11月
  • W:tF
    • Lore of the Forsaken……9月
    • Blood of the Wolf……11月
    • Lodges……12月
  • M:tAw
    • Boston Unveiled……10月
    • Mage: The Awakening Screen……10月
    • Sanctum & Sigil……11月
  • WoD Core
    • World of Darkness: Chicago……12月

キングダム・オブ・ヘブン

1187年、第3回十字軍時代のエルサレム攻防戦を描いた歴史スペクタクル大作。ちょうど週末のGehennaセッションで第2回十字軍を戦ったエルダーを演じる予定なので、勉強がてら観にいったのだが……

勉強は観る前に必要だった。

時代背景についてはほとんど説明がない。セッション用キャラ作成の時に調べて多少の予備知識があったから良かったようなものの、さもなければ誰がなにやらさっぱりわからない。時代柄テンプル騎士団もちょろちょろ出てきたようだが有名どころがいたかどうか記憶にない。とにかくサラディンとティベリウスとボードワン4世以外の男性登場人物の見分けがつかなかったもので。

合戦シーンはたしかに壮観。ときどき俯瞰になって死体を映すのがこの戦争の不毛さを象徴しているようでいい。集団戦闘はロード・オブ・ザ・リング三部作だけで向こう五年分堪能した気でいたのだが、砂漠に累々と横たわる戦死者の上に空を埋めつくすほどのハゲタカの群れが舞うシーンを見たときには、LotRが描けなかった、戦争の一側面を見たような気がして、これはこれで観にきてよかったな、と思った。

キリスト教の扱われ方にはかなり違和感がある。主人公が自殺した妻を「地獄に堕ちたのではない。私の心の中にいる」と言い張ったり、聖職者といえば悪役かチキンか破戒坊主しか出てこなかったり、十二世紀の宗教戦争を描いているにしてはキリスト教をあまりに軽く扱いすぎじゃないだろうか。当時の腐敗した教会を批判的に描いているというより、現代人の個人主義や感情論を安易に持ちこんだだけという印象をうける。

そこまではまあ、現代人の感覚に合わせたと思えば許せる。だがどうしても釈然としないのは、主人公がただの無責任野郎にしか見えないほど一貫性のない言動だ。他人の無謀や狂信や身勝手を率直に非難するのはいいが、いざとなると非難した当の相手と同じことをやって部下や民衆を犬死にさせる。主人公だけはご都合主義というやつでいつも一人だけ生き残る。これが最初から最後まで繰り返されるからたまらない。おまけにオーランド・ブルームの演技がたいそう淡々としているので、主人公が苦悩や後悔をしているとしてもちっとも伝わってこない。

もちろん主人公が賢明に行動していたら戦闘の大部分は回避され、映画としてはさぞかしつまらないものになっただろう、という理屈はわかる。時間の都合で心理描写の場面がカットされたのかもしれない。だが結果として上映されたものが

主人公の無責任さを、そのせいで犠牲になった当の民衆や家臣が手放しで賞賛するプロパガンダ風映画

に見えてしまっている事実はいかんともしがたい。

主役級以外の演技が貫禄たっぷりなだけになおさら惜しい。ティベリアスは渋くていい味出しているし、サラディンはあの禁欲的な長い顔といい、存在感といい、容赦ないが義は尊ぶ異教の将としての凄みといい、抜群のはまり役だと思う。

結論。

サラディン萌えの人におすすめ。

モロス(Moros)

Mage Dailies, 2005/5/24

「寂滅の道歩む死霊術師にして、亡霊の住処また墳墓の王国たるスティギア界にそびえる鉛貨幣の灯台の公子」

(要旨)
寂滅の道/Path of Doomをたどり、スティギア界/Realm of Stygiaの荒野と黒い川を越え、迷宮の中心にある、鉛貨幣の灯台/The Watchtower of the Lead Coinに至って覚醒したメイジをモロスという。死者の魂が転生する道はスティギアの影響域にあるのだが、通行料として現世に残してきたものへの執着を手放さねばならない。それができない者は、鉛のように「浮かばれぬ」まま死者の領域にとどまりつづける。

モロスは別名「死霊術師/necromancer」といわれるように死を領分とする魔法使いだが、物質に干渉する術も得意とする。スティギアは閉じこめるもの、つなぎとめるものの領域だからだ。死霊術師といえば陰気で無口という偏見があるが、必ずしもそういう人物ばかりではない。陰鬱な顔をしているとしたら、それはおそらく他の者が遅かれ早かれどういう道をたどることになるか知りつくしているからだろう。

死者の魂が通る道というのがStygiaそのものにあるのか、Stygiaに属する異界にあるのか、どちらにもとれる記述だが、あんまり気にしたらいけないのだろう。

マスティゴス(Mastigos)

Mage Dailies, 2005/5/23

「笞(しもと)の道歩む妖術師にして、悪魔の住処また魘夢(えんむ)の王国たるパンデモニウム界にそびえる鉄責具の灯台の公子」

(要旨)

(要旨)
笞の道/Path of Scourgingをたどり、パンデモニウム界/Realm of Pandemoniumの迷宮の中心にある、鉄責具の灯台/The Watchtower of the Iron Gauntletに至って覚醒したメイジをマスティゴスという。パンデモニウムは魘夢の領域と呼ばれるだけあって、嗜眠者/Sleeperが見る悪夢の中でもきわめつけのイヤ夢の吹きだまりだ。ここでは心の奥に押し込められていた最悪の恐怖や欲望が暴かれ、容赦ない嘲笑や非難を浴びる。だがそうした恥辱の試練をくぐり抜けることで、魂は罪をすすぎ、傷を癒し、過去の桎梏から解きはなたれて覚醒するのだ。

マスティゴスは精神や空間を操る魔法に長け、人が誰しも抱える心の暗黒面を引きずり出して武器とする。「妖術師/warlock」と呼ばれ、悪魔崇拝者だとか、地獄の悪魔を呼び出すとか言われるのはそれゆえだ。

「a gauntlet of humiliation and submission」というあたりからgauntletは篭手じゃなくて鞭打ち刑のほうと判断。それにしても直訳すると「屈辱と服従の試練」でなんだかSMみたいである。

アカンサス(Acanthus)

Mage Dailies, 2005/5/23

「アザミの道歩むenchantersにして、妖精の住処また魅惑の王国たるアルカディア界にそびえる月銀棘の灯台の公子」

(要旨)
アザミの道/Path of Thistleをたどり、アルカディア界/Realm of Arcadiaに入り、月銀棘の灯台/The Watchtower of the Lunargent Thornに至って覚醒したメイジをアカンサスという。アルカディアは妖精郷の伝説という形で嗜眠者/Sleeperの間にもおぼろげに知られる領域だ。そこではあらゆるものに魔法が宿り、美しさや醜さで人を惑わす。なににつけても極端で、中途半端なものがない。物事はうつろいやすく、またそれをよしとする。

アカンサスは別名enchanterといい、運勢や時の流れを操る魔法に長ける。物事にあたっては準備を整えたり時期を待ったりするよりもむしろ、当たって砕けろとまず飛びこんでみるのを旨とする。そのために余計な苦労をしたり、長期的にみれば最善とはいえない選択をしたりもするが、思い切りの良さと魔法に助けられた強運で、他のメイジには手に負えなかった事態を打開することも多い。アカンサスは覚醒者/The Awakenedの中でもいわばジョーカー、切り札的な存在である。

enchanterの訳語は思案中。前半のenchantmentはおおむね「付与された魔力」のニュアンスで使われているが、実際にはDestinyとTimeの魔法使いなわけで。enchantment=「妖精が使うような魔法」というくくりなのだろうが(実際Changeling: The Dreamingにおけるenchantmentとかなり近い感覚で使われている気もする)、適切な漢語が見つからない。他はなんとかそれらしい日本語で呼び分けできそうなだけに残念だ。

もんたメソッド

bricklife.weblog.*
プレゼンテーション手法として紹介されたものらしいが、即刻はてなキーワードになるほど大受けしたあげく、同じ効果をWebページ上で再現するスクリプトが続々作られているようだ。

百聞は一見にしかず、bricklife.weblog.*の下の方にもんたメソッドを実装したサイトへのリンクが貼ってあるので、実際に試してみてほしい(JavaScript要)。伏せ字になっている部分がクリック1発で表示されるのはけっこう愉快だ。

プレゼン手法としての効果はともかく、ちょっとした(1文とか)ネタバレを隠すのには、「続きを読む」とか背景同色テキストよりもスマートではないだろうか。

……普段からJavaScriptオフでブラウズしている人には効果がないのが難点だが。

WoD新製品の制作状況

White Wolf LiveJournal, 2005/6/13

シカゴで『World of Darkness: Chicago』用の資料本を30kgも買ってきてひいこら言っているJustinからの恒例近況報告がアップされている。

Ordo Dracul』は見本刷が上がってきているようだ。正式発売は7月だが「オリジンズに持っていく」というから、カマリリャ会員向けに先行発売もあるのかも。まあ日本人にはあまり関係ない話かもしれないが公式フォーラムにスポイラーが流れる可能性もあるからそちらに期待。

Predators』についてはJustinの気になる一言が。

..., which is good only if you like really creepy supernatural creatures for every occasion and crow-men with stolen severed heads. I happen to.

あれが気に入るのは、何かっていうとマジ不気味な化物が出てくるのと盗んだ生首を抱えたカラス男が好きな人だけじゃないかな。俺は好きだが。

『VII』ではアートディレクターPauline Bennyがまた凝った装丁を考えているらしい。

... looks so rad I'm thinking about changing the name of that book to VII, You Sons of Bitches!

(レイアウト原案が)あんまり過激なんでいっそ書名を変えようかと思ってるよ。『VIIのクソ野郎ども』に。

『Invictus』は原稿が上がって編集段階に。次作『Carthians』のブレーンストーミングも始まった。……するとcovenantソースブックの最後はCircle of the Croneということになる。最近影が薄いなあ。

牛転がし、10年越しの真相

V:tM初版時代の入門用シナリオ『Alien Hunger』は米国コロラド州のデンバーが舞台なのだが、地理や風土の説明の中に、コロラド地方の血族固有の風習が紹介されている。

Cow Tipping
牛転がし

Among mortals, cow tipping is the practice of going out late at night and finding a field with sleeping cows in it. Cows sleep standing up, and so the intrepid cow tippers sneak up on the unsuspecting beast in its repose and, well, tip it over. The cow falls on its side and wakes up in confusion, generally accompanied by much hilarity on the part of the (often drunk) tippers. (中略)In the slang of the Colorado Kindred, however, cow tipping refers to the practice of feeding from cattle on the outskirts of the city, ......

人間たちの間で「牛転がし」といえば、夜更けに放牧地に出かけていって眠っている牛に仕掛ける悪戯のことだ。牛は立ったまま眠る習性があるので、そこに忍び寄って、えいやっとひっくり返す。横倒しにされた拍子に目を覚ました牛がわけもわからず慌てふためく様は、(往々にして酔っぱらった)牛転がしたちにとって大層愉快なものだ。(中略)しかしコロラド在住の血族の間で「牛転がし」といえば、郊外に出かけていって牛の血で腹ごしらえする行為を指すスラングである。—— Alien Hunger, p.13

私がこの本を買ったのはたしか阪神大震災前のことで、何度かプレイもしたが、その間ずっと「牛転がし」は(血族云々はともかく)実在する慣習だと思っていた。ところが先日医学都市伝説というサイトを見ていたら、その牛転がしを動物虐待として禁止法案を出した州議員を「ジョークを真に受けたまぬけな政治家」としてからかう記事が紹介されているではないか。

そういう遊びが現実にあるわけでなく、一種のホラ話ジョークで、飲み会の余興として「今からcow tippingにでもいくか」と夜中に遠出して騒いだり、ちょっとトロイ仲間をからかったりするために使われるネタであるのだそうだ。——医学都市伝説:「牛転がし」非合法化?

いやはや。医学関係の調べ物をしていたのになんでこんなものに行きあたるのだか。10年も経ってから判ってもなあ。

なお同じデンバー市を中心舞台とするW:tFの地方設定資料集『Hunting Ground: The Rockies』では、cow tippingに関してはひとことも触れられていないようだ。

M:tAwプレビュー・ダイジェスト:Pathとは何か?

Mage Dailies, 2005/5/23

When a mage Awakens, his soul travels out of his body across the yawning chasm of the Abyss to the Realms Supernal. He is guided through the void by the light of a Watchtower with which his soul most closely resonates. The Watchtower and its surrounding Supernal Realm dictates a mage's path, and that path determines what sort of mage he becomes. Choosing one's path is often one of the earliest steps in character in Mage: The Awakening, ...(後略)

メイジが覚醒すると、魂は肉体を抜け出して、アビスの奈落を越え高次諸界をめざす。道標となるのはその魂と最も深く共鳴する〈灯台〉の光だ。どの高位界の灯台に招かれたかによってそのメイジが歩むべき〈道〉が定まり、ひいてはいかなる種類の魔法使いになるかを宿命づけられる。従って、道の選択はしばしばMage: The Awakeningでのキャラクター作成の第一歩となる。

White Wolf社員が酒を飲みに行くバー

White Wolf Forums】White Wolfが「社員の福利厚生のために」バーを一軒買った、と発表したのはたしか昨年のエイプリルフールのことで、てっきりジョーク記事だと思っていたら、WolfSpoorのIan A. A. Watsonが公式フォーラムでこう断言している。

Yes, they own a bar. No, it isn't an April Fools joke. It's called the Independent, IIRC.

ああ、(White Wolfが)バーを持ってるってのは本当だよ。いやエイプリルフールの冗談じゃなくてさ。たしか「The Independent」っていう名前だっけ。—— from a post by Ian A. A. Watson, June 9, 2005

Ianは最近公式フォーラムの管理人もやっているらしい「公式に近い筋」なので、話がだいぶ信憑性を帯びてくる。今年の4月には「公式筋」のJustin Achilli自ら

This weekend is our one-year anniversary of owning our bar, The Independent! Although I still think it's a ploy to funnel company moneys from employee pockets back into White Wolf coffers.

この週末は我が社がバー「The Independent」のオーナーになってちょうど1周年だ! もっとも俺は今でもこれが社員のポケットから給料を回収しようとする会社側の陰謀だと思ってるがね。—— White Wolf LiveJournal, April 14, 2005

と言及してもいる(もっともJustinはよくLiveJournalで大まじめにでたらめを言っているが……)。

Ian Watsonが電話帳で調べたところによれば、アトランタにThe Independentという名前の店は(これが件のバーかどうかは不明だが)1軒だけ存在する。

THE INDEPENDENT
931 MONROE DRIVE NE, ATLANTA, GA 30308
Phone: (404) 249-9869—— from a post by Ian A. A. Watson, June 9, 2005

Google Mapsでさっそく検索してみると(→地図を表示する)、公園のすぐそばで緑の多そうな地区である。

ところでGoogle Mapsには2地点間の経路と所要時間を計算する機能もある。仮にここが件のバーとすると、WW社員が仕事帰りに一杯引っかけに行くにはどれくらい時間がかかるのか、本社からの距離を調べてみた(→結果を表示)。

右端の道順表の番号をクリックすると地図が自動スクロールしながらどこで曲がったらいいか拡大表示してくれる。こういうことが居ながらにして調べられるとはいい時代になったものだ。

それはともかく、所要時間は車でおよそ23分。日本人の感覚からするとずいぶん離れているようだが、これぐらいはアメリカ人にとって当たり前なんだろうか?

Exalted第2版が2006年2月に発売決定

White Wolf Mailing List, 2005/6/10】White Wolfは公式メーリングリストで、『Exalted』を改訂したSecond Editionを来年2月にリリースすると公表した。(→原文(WolfSpoor転載分)

『Exalted』は超古代の地球を舞台にしたエピック・ファンタジーTRPGで、背景世界については「WoDと直接の関係はない」としながらも、WoDのレイスや変身種族などを彷彿とさせる要素がいろいろと取り込まれている。システムはWoDと同じStorytelling Systemだが、細部で様々な改良が試みられ、趣のかなり異なったルール体系になっている。ロール目標値の固定化、整然と書式統一された特殊能力ルール、特殊能力発動時の具体的な視覚描写など、WoD2.0に影響を与えたと思われる部分も多い。

Exaltedは現在White Wolfが展開する製品ラインのうち唯一旧Storytelling Systemを受け継ぐシリーズだが、第2版がWoDと同じく新Storytelling System対応になるのかどうかは不明。発表は「ルール及び設定面での改訂・改良」という表現にとどまっており、もともとWoDとは独自路線をとっていたゲームでもあるので、システムの根本的な変更はないのかもしれない。

なおディベロッパーはGeoffrey C. GrabowskiからJohn Chambersに交代するそうだ。

今年後半発売のWW製品が発表される

GamingReport.com, 2005/6/7
White WolfはGamingReport.comに対し、2005年夏以降に発売予定の製品ラインナップを明らかにした。WoD関連製品は2つ。発売直後から存在がほのめかされていたV:tRサプリメント『VII』と、4月のディベロッパー・チャットで言及されていた『Lore of the Forsaken』である。具体的な発売日については発表されなかったが、予価はどちらも26ドル99セント。

Vampire The Requiem: VII
The members of the reviled cult known as VII wage a private war on the Kindred, and some whisper that they're even older than the Damned themselves! Only those within the strange covenant know the truth of the matter...whether their hostility is a holy war, a vendetta, or something altogether different. This sourcebook for Vampire: the Requiem details three distinct and independent versions of this mysterious sect of vampires and vampire-killers, including history, beliefs, and prominent sect members, as well as providing information on making VII a playable faction, complete with new Disciplines, powers, and character options.

「VII」と呼ばれる悪名高いカルトの信者たちは、血族(Kindred)を目の敵にして襲うばかりか、囁かれる噂によれば、その歴史は血族よりも古いという! だが真相はこの奇怪なコヴナント内部の者にしかわからない……敵愾心を燃やすのは聖戦のためか、復讐のためか、はたまたまったく異なる理由があるのか。このV:tR用ソースブックでは、ヴァンパイアにしてヴァンパイア・キラーである謎の結社「VII」について、全く異なる3通りの真相を明らかにする。その歴史、思想、代表的なメンバーのほか、VII結社員をプレイヤー・キャラクターとして使用可能にする追加情報を掲載。あわせて新たなDiscipline、特殊能力、各種のオプションデータを収録する。

ディベロッパー・チャットで「3通りのVIIを出す」と言っていたのは冗談ではなかったらしい。いやはや。

いっぽう『Lore』については

Werewolf The Forsaken: Lore Of The Foresaken
An in-depth look at the spiritual aspects of werewolf society, Lore of the Foresaken is the consummate guide to the Uratha relationship with the spirit world.

ワーウルフ社会の精霊的側面について掘り下げた考察を提供する『Lore of the Foresaken』は、ウラザ(Uratha)と精霊界の交流に関する完全なガイドブックだ。

とお寒い概要なのだが、4月のディベロッパー・チャットでイーサン自身がもっと詳しい内容を明かしてくれている。

Q: 『Lore of the Forsaken』には何が載りますか?
A: 俺の血痕……というのは冗談で、おおまかに分けてauspiceの章、LunaやFirstbornといった主要トーテムの章、Giftとriteの章、それからlocusとawakenした物品とfetishの章、という構成になる。要はForsakenと精霊との関わりの実際面を扱うハンドブックだな。Forsakenが精霊に対して何をするのか、なぜそうするのか、その結果どういう問題が派生するか、って話をやる。結果だけでなく過程も重視して描くつもりだ。追加データも多少つけるが、どちらかといえばおまけだな。——2005/4/13のディベロッパー・チャットより

レビュー『Lancea Sanctum』追加

ファーストインプレッションは細かくやりすぎて収拾がつかなくなったので、きっぱり書き直してレビューにした。それでも長くなったのは、例によって分厚いくせに索引がない本なので、レビューを頼りに現物を拾い読みできる程度に内容をフォローしようと思ったらあまり削れなかったからだ。それだけ盛り沢山の内容だということでご勘弁ねがいたい。

レビュー『Lancea Sanctum』

“Heavenly Father, guide my aim as I serve as your Holy Spear, spilling the blood of the wicked in your name. Amen.”

「天にまします我らが父よ、我が手を導き汝の聖槍たる務めを遂げさせたまえ、汝の名において邪なる者の血を流させたまえ。アーメン」——『Lancea Sanctum』よりThe Hunter's Preyer (p.88)

これは何の本?

本書は『Vampire: The Requiem』のサプリメントで、五大covenantのひとつであるランケア・サンクトゥム(Lancea Sanctum)を専門的にとりあげたcovenant sourcebook第一弾だ。

血族の教会というべきランケア・サンクトゥムの歴史、教義、組織、活動について徹底解説するほか、テーベ魔術(Theban Sorcery)や特殊Disciplineの追加データ、サンプルキャラクターを収録し、またランケアと縁の深い新たな枝族(bloodline)も紹介する。

Prologue: Faithful Service

シカゴのランケア・サンクトゥムを束ねる司教(bishop)の多忙な日々を描いた短編小説。著者Greg StolzeはV:tRのノベライズを手がけており、この短編でもV:tR小説シリーズの登場人物であるSolomon Birchが活躍する。

羊皮紙風の薄茶の紙使い、カリグラフィ風の書体、木版画調に加工した挿絵といった見かけの古めかしさとは裏腹に、内容は銃弾乱れ飛び革ジャケが血に染まるバリバリの現代物だ。ランケアの「中世の装いをまとった現代」というイメージを象徴するようなデザインである。

本文に使われている書体があまりに装飾的すぎて、読みづらいこときわまりないのが残念。結局PDF版のテキストをテキストエディタにコピーし書体を変えて、やっとのことで判読した。

Introduction: Rejoice, For Thou Art Damned!

本書の概要、テーマとムード、各章の内容紹介、用語集。公式サイトからp.24〜25のPDFサンプルがダウンロードできる。

p.24 The Home of the Lanceは基本ルールで説明されなかった「そもそもLancea Sanctumという言葉は何を意味するのか?」という疑問に答えている。なんとなくロンギヌスの槍のことと思いがちだが、そうではないというのだ。公式フォーラムでも議論になった話題なので、一読しておくと知ったかぶりプレイヤー対策になるかもしれない。同ページParishes and Domainsは、ランケア独特の言い回し「parish」の定義について。

p.25 Lexiconは、ランケア・サンクトゥム内で使われる用語集。見出しをざっと眺めただけでも、闇のメシア、黒修道院、ロンギヌス聖書……と、抹香臭さというかゴシック的雰囲気満点の言葉が勢揃いだ。V:tR開発当初「サバト」と呼ばれていた(!)covenantだけのことはある。

Chapter One: The History of the Lancea Sanctum

p.30〜41がランケア・サンクトゥムの歴史、p.42〜p.47が世界各地における現状。

前半は、教祖ロンギヌスの遍歴から聖典編纂者モナクスの宣教、テーベ魔術(Theban Sorcery)の発見、各Creed(宗派)の誕生、新大陸進出から現在にいたるまでを綴る。ロンギヌスの槍や天使といった伝奇的要素も登場するが荒唐無稽に走ることもなく、説得力のある背景史になっている。ランケア草創期に活躍したヴァンパイアはすべて滅びたか失踪したかのどちらかで、V:tMにおけるメトセラ的存在がひとりも出てこないあたりは、いかにもWoD2.0らしい。

ランケア・サンクトゥムは由来が由来だけにカトリック的な雰囲気が色濃く漂うが、実際にはもっと懐が深い。人間社会のキリスト教会の盛衰を歪んだ鏡のように映しながらも、あくまでヴァンパイアの、ヴァンパイアによる、ヴァンパイアのためのキリスト教として独自の発展をとげ、あげくにイスラム教やユダヤ教までCreedとして呑みこんでしまったからだ。厳密にいえば「血族のキリスト教」というより「血族の一神教」と呼ぶべきなのかもしれない。

とはいえその歴史には現実のキリスト教会史が巧妙に溶けこんでおり、ローマの迫害、使徒の伝道と殉教、失われた聖槍、世俗権力との対立、異端審問、宗教改革や宗派分裂……と、随所で「ははぁ、これは◯◯のパロディだな」とにやにやさせられることうけあいだ。

後半は世界各地のランケア・サンクトゥムが、現地事情に合わせて活動や教義をどのように変えていったか。Creedについて頻繁に言及されるので、先にp.59〜64 The Creedsを読んだほうがわかりやすいかもしれない。相変わらず日本も中国もインドも東南アジアも十把一絡げの列強植民地扱いだが、とりたてて親日家でもないアメリカ人の認識などまあこんなものなのかもしれない。むしろ『Kindred of the East』のようなアクの強い設定が出てこなかったことにほっとした。

Chapter Two: Unlife in the Lancea Sanctum

p.50〜はランケア・サンクトゥムの教義解説。二大聖典であるThe Testament of LonguinusとThe Sanguineous Catechismの内容が主だが、聖典自体にどう書いてあるかには一言も触れず、構成や内容や表現の分析という体裁でひたすら間接的な言及にとどめているのが逆に想像をかきたてる。ところどころ矛盾や欠落、現代では古めかしすぎて顧みられない部分、中世とは異なる解釈をとっている部分などの指摘があるのも変にリアルだ。『Rites of the Dragon』の例もあるので今後フィクションとして出版される可能性は考えられるが、このままずっと想像の余地を残しておいてほしい気もする。

p.59 The Creeds〜はCreed各派の紹介。カトリック的正統派のMonachal Creedをはじめキリスト教の宗派を反映したものが中心だが、聖典をイスラム教の文脈で解釈するIblic Creed、ユダヤ教徒をとりこむDammitic Creedといった非キリスト教Creedも登場する。異端Creedの例として、ランケア版聖母崇拝Livian Herecyとクー・クラックス・クランばりのCrimson Cavalryが挙げられている。

p.64 Titles and Offices〜はヒエラルキーと役職の解説。各役職を得るのに最低限必要なCovenant Status (Lancea Sanctum)のドット数が示されていて、誰が誰より偉いのか、どの程度重みのあるポストなのかがわかりやすい。1ドット前後の役職はけっこう多く、またlay position(在俗)といって比較的戒律のゆるやかな地位もあるので、PCへの報酬にしてもおもしろそうだ。後々その役職の仕事をシナリオネタにもできる。

カトリック教会とよく似た階級構造を持つとはいえ、ランケア・サンクトゥムに教皇はいない。汎世界的な組織を作りあげているわけでもない。上下関係は原則として一つの都市内で完結し、ある街の揉め事に「どこかよそにいるもっと偉い奴」が横槍を入れる、という事態を考えなくてもいいよう配慮した設定になっている。そのためランケアにおけるBishopやArchbishop、Cardinalは、カトリックの司教や大司教、枢機卿のイメージとだいぶ異なる点には注意が必要だろう。

p.72 Clan Roles in the Lancea Sanctum〜はランケア内における各Clanの役割。併せてそのClanの血族がランケアに入信する動機や、Creed選びの傾向などにも触れている。

p.77 Lancea Sanctum Ritae〜はランケアが行う大小の儀式(Ritae)。改まったApostolicaと日常的なEcclesiaに大別される。Apostolicaはミサや告解、四旬節といったカトリック由来の儀式が中心で、ときに残酷ながらも抑制の効いた印象だ。参加者にちょっとした特典(Willpower回復、一時的な判定ボーナスなど)を与えるオプションルールもあるが、採用する前にp.78囲み記事の警告は読んでおくべきだろう。レビュー冒頭に引いたThe Hunter's Preyer はEcclesia儀式のひとつで、ランケア信者が狩りにでかける前に呟く祈りだが、たった2行の短さなのでPCの日常のロールプレイにさりげなく織り込んでみたくなる。

p.89 Domain Politics〜はかつてInvictusと並ぶ権勢を誇ったランケアの、現在の権力観について。

Chapter Three: The Lancea Sanctum and the Danse Macabre

Neonate篇(p.96〜)、Ancilla篇(p.115〜)、Elder篇(p.128〜)に分け、各世代の血族がランケアのどこに惹かれて入信するのか、信徒になるとどういう義務や責任があるのか、他の世代にどんな態度で接するか、またそれが歳を経るにつれどのように変化していくかを考察する。

特にプレイヤー・キャラクターになることが多いneonateには20ページも割いて、布教や入信の過程、勧誘に使われる理屈、ランケアにとってneonateが象徴する意味に到るまで徹底的に解説している。これでイメージが湧かないとは言わせない、といわんばかり読み応えある情報量だ。

またancilla、elderについてもその世代ならではの役割を示し、彼らも血族社会の責任ある一員なのだということを改めて実感させてくれる。血族の長老と聞くとどうも「ありあまる暇をかけひきや陰謀に費やしている偏執狂の怪物」というイメージしか浮かばない、という向きには一読を勧めたい。

p.135 Relations with the World of Darkness〜は、他のコヴナント、ワーウルフ、メイジに対するランケアの基本姿勢。

Chapter Four: Factions and Bloodlines

p.144〜166はランケア内部に存在する各faction(党派)の紹介。Creedが人間の宗教でいうカトリックやプロテスタントのくくりだとすると、factionはその中でもさらに原理派、穏健派、改革派、保守派……と細分化された小集団を示すようだ。いささか不穏当な例えを使うなら、イスラム教シーア派の過激派グループ「アラーの鷹」なる集団がいたとしよう。「イスラム教シーア派」の部分がCreed、「過激派グループ『アラーの鷹』」の部分がfactionにあたる。

この章はえらくわかりづらい構成になっている。p.145〜154 Major Factionsに登場するHardliners、Unifiers、Neo-Reformistsは、実はfactionそのものではなく、数あるfactionの思想傾向を5つに分類した「タイプ」のうちの3つだ。3つしかないのにステレオタイプの項には5つ出てくるから混乱するが、残るMendicants、Procelytizersはp.154 Example Factions以降に説明がある。項目名が Mendicants: The Nepheshimというのは、Mendicantsに分類されるfactionの一例として、ここではThe Nepheshimというfactionを紹介しますよ、どうぞSTの叩き台に使ってください、という意味である。p.161のProselytizers: The Messengers of Longinusも同じ。

p.167以降がランケア・サンクトゥムに縁の深い新bloodline(枝族)。神が認めた血族の支配者を自認するIcarians、死の研究にとりつかれた隠者Osites、現代の鞭打ち行者Mortifiers of the Fleshの3つが追加されたが、実はもうひとつ、隠れキャラ的枝族がp.160 Nepheshim as Bloodlineにちらりと出てくる。

Chapter Five: Disciplines and Rituals

p.178〜185が追加Discipline。Icarian用のConstanceは、わずかなVitaeでResolveとWillpowerをはねあげるのでアンバランスに強く見えるが、IcarianはWillpowerがなかなか回復しない欠陥を抱えているので実は収支がつりあっている。Osites用のMement Moriは、幽霊が見えたり死人に口をきかせたりする、V:tMの《死霊術/Necromancy》っぽい能力だ。

Nahdadはp.160の「隠れ枝族」Nepheshim bloodline用。きわめて地味だがサバイバルにはきわめて重宝な術で、断食と放浪を続ける彼らにはぴったりといえよう。

だが最も個性的なのはMortifier用のScorgeだ。
自分を激しく鞭打ち→贖罪してすっきりしたのでWillpower回復
とか、苦痛=負傷ペナルティを肩代わりしたり押しつけたりするとか、この枝族の特徴にこだわりながらもゲーム上ちゃんと利用価値のあるパワーになっている。

p.186〜205はテーベ魔術について。そもそもこれは何なのか、というところから始まって、ゲームシステム上の各能力値との関係、新しい術法の発見や習得といったかなり突っ込んだ話にも触れている。

だが本書で最も有用なページはやはりp.195 Theban Sorcery Overviewだろう。なにげないサマリに見えるが、実はV:tR基本ルールで不明瞭だった記述を書き直した改訂版で、V:tR基本ルールも増刷分からはここの記述に合わせて訂正が入るそうだ。といってもどれが初版でどれが増刷かなんて見た目ではわからないし、そもそも数ページの改訂のために基本ルールを買い直すというのも不経済だから、結局、本書を買うのが建設的ということになる。

どうせV:tR本体と同じ値段だしな。

Appendix: Allies and Antagonists

サンプルキャラクター集。略式能力値のNon-Conbatants(非戦闘員)17人、完全データ付きのCombatants(戦闘要員)3人。すべて肖像画付き、といってもいまひとつ冴えないご面相ばかりだが、p.218 Inspired Crusaderの眼帯姉ちゃんはかっこいいです。

基本的に汎用NPCとして、STの急場しのぎやNPC作りのたたき台に使われることを想定した作りのようだ。背景設定はQuote(象徴的な台詞)、Background(経歴)、Description(外見)、Storytelling Hints(演出上の要点)が簡潔に書かれているのみ。そのぶん大司教から異端者から少数派Creedの信者まで幅広くカバーしている。『WoD: Antagonists』や『Hunting Ground: Rockies』の、背景設定だけでご飯3杯、もといシナリオ3本は書けそうな個性派NPCもいいが、こちらは別の意味で実用性が高そうだ。

装丁と挿絵

表紙の凝ったデザインがひときわ目を惹く。胸に血で十字架を描いた裸の男が両腕を高々と差し上げている絵の、指の部分がタイトルロゴの隅に微妙に重なっていて、つや消し加工の指とつや出し加工のロゴの対比が絶妙な立体感を生んでいるのだ。他にもWorld of Darknessロゴの背景にLanceaのシンボルマークの一部が薄く敷き詰められていたり、Vampireロゴの色が鮮やかな朱に変えてあったり、背表紙下にcovenantマークが小さくあしらわれていたり、と細部まで神経が行き届いている。

挿絵は画風がかなりばらばらで好き嫌いのわかれるところ。

……で、買い?

もしあなたが、以下にひとつでも思いあたることがあるなら、悪いことはいわない、とりあえず買っておいたほうがいい。

  • 基本ルールの説明は読んだがランケア・サンクトゥムのイメージがさっぱりつかめない
  • というか、信者が普段何をやっているのか想像がつかない
  • デモクロニクルで公子やマルドナートの言動が理解できない
  • 背景設定にはあんまり興味ない。でも追加データは欲しい。
  • ニューオリンズを舞台にしたシナリオをやる予定がある。

こうした需要に応える「ツールボックス」が本書である。膨大な設定のバリエーションが用意されているが、都合の良い部分だけ引き抜いてきて使っても破綻が生じないようになっているし、そもそもそういう使い方を想定して作られている。

ひとつの物を作るのに、道具箱の道具を全部使う必要はない。これはV:tRの元ディベロッパーJustin Achilliも、現ディベロッパーWill Hindmarchも、繰り返し述べていることだ。

だから、総計220ページのかなり分厚いサプリメントとはいえ、全部読まないと使えない、なんてことはない。とりあえず興味のある章節だけ拾い読みするのもありだろう。率直に言って読みにくい部分もあることだし。

新Mind's Eye TheatreがDriveThruで先行発売、ハードカバー版も予約受付開始

White Wolf Online, 2005/6/3】WoD2.0対応の『Mind's Eye Theatre』コアルールと、これを使ってVampire: The Requiemを遊ぶための『Mind's Eye Theatre: The Requiem』が、来月の正式リリースに先駆け、DriveThruRPG.comでPDF版での先行発売を開始した。

ハードカバー版の発売は来月7/17だが、White Wolf公式サイトの通販ページ上でPreorder(予約注文)の受付がはじまっている。

White Wolf公式ファンクラブCamarillaの会員は、ハードカバー版を20%引で購入でき、さらに購入した会員は、DriveThruRPG.comからPDF版を無料でダウンロードできる(→詳細(英語))。

Mind's Eye Theatre(MET)は、Vampire, WerewolfなどWorld of DarknessシリーズのゲームをLARP(ライブアクション・ロールプレイング)スタイルで遊ぶためのルールシステム。

LARPスタイルではプレイヤーがキャラクターの行動を実際に台詞や演技で表現するため(プレイ中の事故を防ぐため、武器になりうるものは持たない、相手の体に触れないなどの制約はある)、判定にダイスを使わず、STの介在を要求する部分を最小限に抑えたシステムになっている。

海外では定期的に集まってコスプレイヤーばりの扮装でLARPを楽しむサークルもあるほか、IRCやWebチャットを介した大規模なオンラインロールプレイ(いわゆる「なりきりチャット」)用のシステムとしても人気が高い。ルールが明快で、ある程度の行為はPLが自分で判断して解決できるため、STの負担が低いのはもちろん、特にシナリオを用意せずPLの自主性に任せて即興でストーリーを織り上げていくプレイスタイルにも適しているからだ。1.0時代からWeb上にはLARP愛好者のサイトが数多く存在し、基本ルールのWoD2.0対応が待たれていた。

『Mind's Eye Theatre』シリーズは昨年8月から発売されている『World of Darkness』系列製品と背景世界を共有するが、根幹となるルール体系はまったく異なる。そのため『Mind's Eye Theatre』シリーズのプレイに『World of Darkness』シリーズ製品が必要になることはない。もっとも世界観やシナリオアイデアの点で、WoDサプリメントが参考になることは多いだろう。

レビュー『Hunting Ground: The Rockies』

これは何の本?

本書は『Werewolf: The Forsaken』(以下W:tF)のサプリメント第1弾で、米国コロラド州のデンバー市を中心としたロッキー山脈地方を舞台にゲームをするための地域設定資料集だ。

正確にいえば、ロッキー地方の設定と主要NPCの一部はすでにW:tF巻末に掲載されているので、本書の設定はそれを拡張する形になる。

Prologue: Bushwhaked (p.2)

『Werewolf: The Forsaken』310ページに登場するサンプルキャラクター、Moriartyを主人公に据えた短編小説。女ヴァンパイアにこてんぱんに叩きのめされる話なのだが、敗北を美化せず、情け容赦なく、惨めに描き出しているあたり、ある意味「滅びの美学」のゲームだったWerewolf: The Apocalypseとは違うのだなあと感慨深い。

叩きのめされるか叩きのめすかの違いはあるが、お蔵入りしてしまったW:tF小説『Heart of The Hunter』で最初に登場する敵役も女ヴァンパイアだったから、正直なところ「またか」という感は否めない。W:tFにはせっかくAzluBeshiluといった独自の敵役がいるのだから、そちらが登場する話を読みたいものだ。

ストーリーはMoriartyが瀕死の重傷を負う場面で終わっており、不吉な未来を暗示しながらも結末ははっきり描かれない。これはMoriartyをPCやNPCとして利用しようとするユーザーをメタプロットで束縛しないための配慮だろう。あえて以後の展開を読者の想像にゆだねることによって、この短編はストーリーフックとしても利用できる「二度美味しい」仕掛けになっている。

Introduction (p.10)

見開き2ページのみの潔い前置き。WoDサプリメント冒頭の「いつものやつ」、すなわち章別の概要・本書のテーマ&ムード・参考資料が載っている。必要な情報がページをめくらずに手に入る簡潔さはかなり快感。WoDサプリメントで「あれはどのへんに載ってたっけ?」と探すとき、目次や索引をあたるよりHow To Use This Bookセクションの各章概要を見るほうが往々にして効率的だからだ。

p.11 Useful Resourceが参考資料リストだが、書籍のほかWebサイトがいくつか挙がっている。年々変化する街の最新事情をとらえるには確かに早くて安上がりだし、市や観光当局、大学の公式サイトなど比較的信頼性の高いソースが厳選されているのはうれしい。

ちなみに・Native American Resources:のいちばん最初、http://www.colorado.edu/csilw/arapahoproject/ は、今年3月にhttp://www.colorado.edu/csilw/newarapproj2.htmに移転している。

Chapter One: Time And Place (p.12)

p.14〜20はデンバー市を中心としたコロラド地方の略史。メタプロットを排したWoD2.0世界では無味乾燥な章になるのではと心配していたが、蓋を開けてみればなかなかどうしてネタの宝庫だ。各時代の主要な史実をとりあげて「実はワーウルフの仕業であった」と強引にこじつけるのではなく、「そういう時代だったのでワーウルフたちはこんなことをした」という描き方にはとても好感が持てる。設定に無理がないうえ、このゲーム世界の主人公はワーウルフだということが素直に伝わってくるのだ。またp.15 War with the Utesでは先住民Uratha対入植者Urathaの抗争に触れつつも、「Urathaには同族を犠牲にしてまで人間を守る義理はない」「イデオロギーではなくテリトリーをめぐる争いであった」と明言しているあたり、tribeに民族色を持ちこまない毅然たる姿勢が感じられる。

W:tAのような神話や伝説への言及は皆無なのでガルゥ愛好家には物足りないかもしれない。ただW:tAが現代より神話時代の描写に詳しいのとは対照的に、この略史は現代へ近づくほど詳細になり、コロラドの現状に多大な影響を及ぼしたGurdilag討伐戦にもっとも紙数を割いている。そのため、過去から現在まで6ページ半と、記憶力と疲れ目と慌てるSTの負担にならない優しい分量でありながら、ただの読み物に終わらない資料価値を持っている。

さらに囲み記事として各時代を題材としたストーリーフックが登場する。どれも過去の因果が現代に報い……という話なので、これらを使うだけのために「Stone Ages: Werewolf」だの「Uratha: Wild West」だのをひねり出す手間もいらない。もちろん手間をいとわないSTならここの記述をもとに過去の時代を舞台にしたゲームをやっても面白いだろう。個人的にはp.15 War on Wolvesあたりのシナリオ化に挑戦してみたい。

p.20 Points of Entry〜p.25 The Wolf-Bloodedは、PCを本書の設定に導入するためのST向けのガイドラインだ。最初の変身を迎えたUrathaが、地元のワーウルフにどう扱われ、どのようにして各tribeに参入し、パックを組み、なわばりを確保し、一人前にやっていくのかが詳しく説明されている。とりあえず基本ルールで作りたてのPC