1187年、第3回十字軍時代のエルサレム攻防戦を描いた歴史スペクタクル大作。ちょうど週末のGehennaセッションで第2回十字軍を戦ったエルダーを演じる予定なので、勉強がてら観にいったのだが……
勉強は観る前に必要だった。
時代背景についてはほとんど説明がない。セッション用キャラ作成の時に調べて多少の予備知識があったから良かったようなものの、さもなければ誰がなにやらさっぱりわからない。時代柄テンプル騎士団もちょろちょろ出てきたようだが有名どころがいたかどうか記憶にない。とにかくサラディンとティベリウスとボードワン4世以外の男性登場人物の見分けがつかなかったもので。
合戦シーンはたしかに壮観。ときどき俯瞰になって死体を映すのがこの戦争の不毛さを象徴しているようでいい。集団戦闘はロード・オブ・ザ・リング三部作だけで向こう五年分堪能した気でいたのだが、砂漠に累々と横たわる戦死者の上に空を埋めつくすほどのハゲタカの群れが舞うシーンを見たときには、LotRが描けなかった、戦争の一側面を見たような気がして、これはこれで観にきてよかったな、と思った。
キリスト教の扱われ方にはかなり違和感がある。主人公が自殺した妻を「地獄に堕ちたのではない。私の心の中にいる」と言い張ったり、聖職者といえば悪役かチキンか破戒坊主しか出てこなかったり、十二世紀の宗教戦争を描いているにしてはキリスト教をあまりに軽く扱いすぎじゃないだろうか。当時の腐敗した教会を批判的に描いているというより、現代人の個人主義や感情論を安易に持ちこんだだけという印象をうける。
そこまではまあ、現代人の感覚に合わせたと思えば許せる。だがどうしても釈然としないのは、主人公がただの無責任野郎にしか見えないほど一貫性のない言動だ。他人の無謀や狂信や身勝手を率直に非難するのはいいが、いざとなると非難した当の相手と同じことをやって部下や民衆を犬死にさせる。主人公だけはご都合主義というやつでいつも一人だけ生き残る。これが最初から最後まで繰り返されるからたまらない。おまけにオーランド・ブルームの演技がたいそう淡々としているので、主人公が苦悩や後悔をしているとしてもちっとも伝わってこない。
もちろん主人公が賢明に行動していたら戦闘の大部分は回避され、映画としてはさぞかしつまらないものになっただろう、という理屈はわかる。時間の都合で心理描写の場面がカットされたのかもしれない。だが結果として上映されたものが
主人公の無責任さを、そのせいで犠牲になった当の民衆や家臣が手放しで賞賛するプロパガンダ風映画
に見えてしまっている事実はいかんともしがたい。
主役級以外の演技が貫禄たっぷりなだけになおさら惜しい。ティベリアスは渋くていい味出しているし、サラディンはあの禁欲的な長い顔といい、存在感といい、容赦ないが義は尊ぶ異教の将としての凄みといい、抜群のはまり役だと思う。
結論。
サラディン萌えの人におすすめ。
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