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骰子回転劇場 日記

レビュー『World of Darkness: Mysterious Places』

これは何の本?

World of Darkness 汎用サプリメント。なにげない日常の風景に紛れ、人々を超常の世界にひきずりこむ、奇怪で恐ろしい9つの「ミステリー・スポット」と、それを使ったシナリオアイデアを紹介する。

特定の都市や地理に依存しない設定なのでシナリオの舞台を選ばず使えるのが特徴。人間(mortal)キャラクターを想定した造りだが、Vampire/Werewolf/Mageでも充分楽しめる。

ネタバレは避けてレビューするつもりだが、心配な人はこの先を読まないように。

背景設定集+シナリオ作成キット

汎用性の高い舞台設定が売りだが、シナリオ展開例が充実しているのでシナリオ集のように使うこともできる。動機・導入・展開・結末とそれぞれ5〜6通り用意されたサンプルを順に拾っていくだけでもひととおりのプロットが作れてしまうのだ。サンプルの組み合わせを変えればがらりと違う話になる。

サンプルはかなり大ざっぱな書き方なので、実際にシナリオとして運用するには細部を作り込む必要があるだろう。もっとも、山場となるミステリー・スポットのデータや背景は綿密に設定されているので、まったく何もないところからシナリオを作るよりは楽なはずだ。

見えない敵、悪意なき悪意

本書が提案するシナリオのほとんどに共通するのは「ラスボス」の不在だ。トラブルの元凶である人物や怪物を見つけだし、それを交渉なり戦闘なりで排除して解決、というのはTRPGのシナリオによくあるパターンだが、その「それを倒せばなんとかなる何か」がそもそも存在しなかったり、戦闘で勝てるような「相手」ではなかったりするのが『Mysterious Places』の特徴だ。

桁違いの能力を誇るクトゥルフ怪物みたいなのが出てくるのか? いいや。PCは虐殺されるしかないのか? いいや。

とはいえ、中にはPCに死者や発狂者(や、もっとひどい運命をたどる者)が出るのは当たり前、未知の恐怖でPCを絶望のどん底に陥れる、地獄のようなミステリー・スポットもある。p.96 The Whispering Wood と p. 124 The Empty Roomが2凶といっていいだろう。とくに Whispering Wood は「PCが破滅するほうがおもしろい」という凶悪なしろものだ。キャラに愛着の強い人、PCが死なないゲームに慣れている人にはお勧めできない。

逆に、すばらしい恩恵をもたらすミステリー・スポットもある。シナリオ例ではその恩恵がさらに大きな災厄を引き起こすのだが、純粋な善意がおぞましい災厄に変わるからくりが恐ろしい。本書全体にPCに危害を及ぼす存在は多々登場するが、いずれも邪悪さとか悪意からやっているようには見えない。そもそも意図というものを持ち合わせているのかどうか怪しいのもいる。この「悪意の不在」も本書の特徴だといえるだろう。

なに、いいやつばかりしか出てこないのかって? 

君は自分の顔を刺した蚊を「いいやつ」と思うかい?

装丁とイラスト

第3章 Swamp Indian Hollow の挿絵が異彩を放っている。マルカヴィアン・クランブックの初版が好きだった人はp.54に注目。

……で、買い?

面白く読んだし、猛烈にこれを使ったシナリオがやりたくなったので、万人に読めといいたいところだがここは客観的にいこう。

ひらたく言えば「STのネタ集」なので、PL専門の人には用がない。同じ理由で、そのまま使えるシナリオが欲しい人には『World of Darkness: Ghost Stories』のほうがおすすめだ。先にも述べたが、「倒すべき敵」が存在しないシナリオを打ち出してきているので、やっぱり最後はボスキャラと戦闘しないと落ち着かない、というむきには『World of Darkness: Antagonists』をお勧めする。いろいろな意味で本書の対極をゆくソースブックだ。

では、この本は誰にお勧めなのか?

『Mysterious Places』が破滅すら楽しむようなシナリオを持ってきたのは、PCが生きのびることを前提に作られているようなV:tR/W:tFの既成シナリオを見てきた後だけに、驚きだったし、新鮮な感じがした(もちろん破滅型シナリオ自体はすでに他のホラーTRPGでおなじみだが……)。それと同時に、WoDコア系列はいよいよ「V:tRの半分」から「人間側から見たWorld of Darkness」として形をなしてきたな、とも思う。

WoDでは人間でいるかぎり超常現象の真相はわからない。知ったときには破滅をはじめるか、彼自身すでに人間ではないか、である。それを反映して本書でも「なにをきっかけに」超常現象が起こるかは説明されていても、「なぜそうなるのか」はまったく説明がない。だからVampire/Werewolf/Mageより「未知であることの恐怖」というホラーの主題のひとつがストレートに伝わってくるし、説明しなくていい気楽さのせいかどうか、執筆陣もどのシリーズよりも突拍子のないネタを出してくる。

だから、手間をいとわずWoDでホラー小説を再現してみたい、とか、新WoDで最もクレイジーな設定に興味がある、というSTにはぜひどうぞ。

参考:本書の構成

本書が収録するミステリー・スポットは全部で9つ。

  1. The Swimming Hole(水泳穴)
  2. The University(大学)
  3. Swamp Indian Hollow(沼沢インディアンの窪地)
  4. The Village Secret(村の秘密)
  5. The Statue of Weeping Alice(すすり泣くアリス像)
  6. Hillcrest Center for Elder Living(ヒルクレスト老人介護センター)
  7. The Whispering Wood(囁く森)
  8. The Junkyard(廃車場)
  9. The Empty Room(空き部屋)

各章はおおむね次のような構成になっている(章によってはこの通りの題名でないところもある)。

  • Summary(概要)
    ミステリー・スポットの概略、ふさわしい設置場所、PCに求められる前提条件など。前提条件といっても「互いに知り合いである」「肉親や友人の誰かが◯◯にいる」程度だから、現在進行中の史劇に織り込むのは簡単だ。設置場所もほとんどは街中や近郊を推奨している。
  • History(背景)
    その場所にまつわる歴史や人間関係。
  • Systems(システム)
    その場所がもたらす特殊な効果や、情報収集によって得られる情報、必要なNPCデータ。
  • Motives(PCが関わる動機)
    PCがこの場所を調べたり、事件に巻きこまれたり、囚われたりする理由づけの例。
  • Preliminary Events(導入イベント)
    PCをこの場所に誘導し、事件の前兆とするイベントの例。
  • Stories(プロット展開)
    この場所を用いたシナリオの展開例。
  • Ending It(結末)
    事態を収拾するのに考えられる手段、あるいはシナリオの締めくくり方の例。

書誌情報

ストック・ナンバー:WW55302
定価:$24.99
ISBN:1-58846-485-7
ページ数:128
ディベロッパー:Ken Cliffe
執筆者:Kraig Blackwelder, Rick Chillot, Geoffrey Grabowski, James Kiley, Matthew Mcfarland, Brett Rebischke-Smith, Chuck Wendig
発売年月日:2005年6月13日
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World of Darkness に関する海外ニュースを Professor がときに適当な翻訳でお届け。名前が日記なのは骰子回転劇場・転の日記コーナーだった名残。実質上WoD2.0対応の回転劇場なので改名検討中。