引用の多い映画だと聞いて、それなら予習していくか、と資料本を図書館で予約したらGWの臨時休館期間にかかってしまい引き取るに引き取れず、見切り発車で観に行ってきた。台詞に『マクベス』だの『十二夜』だのの引用がさらりと出てくるし、たぶん私が気づかなかった元ネタも多いのだろうが、気にせずともそれなりに楽しめる作品にまとまっているのはさすがウォシャウスキー兄弟というところか。
皮肉は台詞以外のところにも効いていて、例えばイギリスを牛耳る独裁政党のシンボルマークがロレーヌ十字そっくりな点。この十字は第二次世界大戦時にナチスドイツによるフランス占領に反対して戦ったレジスタンス組織のシンボルマークだ。それがナチスを思わせる件の独裁政権に使われているのは痛烈である。さらに遡ればジャンヌ・ダルクの旗印でもあり……つまり、もともとはイギリスの敵として掲げられた印なのだ。
いちばん気に入ったのは、冒頭の裁判所爆破がチャイコフスキーの『序曲1812年』に載せて行われるところ。これは楽譜上に本物の大砲をぶっ放す指示があるという、まことに恐るべきオーケストラ曲で(→iTMSで試聴)、建物をどっかんどっかんいわせながらクラシックを流すとすればこれ以上ぴったりなものはあるまい。1812年に起こったことを考えても象徴的な選曲だ。
前半は適度なアクションありどんでん返しありで良いのだが、ドミノの場面以降が思ったほど盛りあがらなくて残念。予定調和は結構だが、後半にも少しは意外性が欲しかった……
![]()