骰子回転劇場・転|日記: レビュー『Territories』
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骰子回転劇場 日記

レビュー『Territories』


表紙イメージ

これは何の本?

W:tF のワーウルフは、パックを組み、テリトリー(縄張り)を持っているのが一般的だ。なぜテリトリーを欲しがるのか、どうやって獲得するのか、維持にはどんな苦労があるか、については基本ルールブック p.45〜53に詳しい。しかしこれらの事柄は、基本ルールではゲームシステム上なんら影響を及ぼさなかった。本書はテリトリーの獲得・維持・向上を、ロールプレイの課題としてだけでなく、ゲームとしても楽しめるようにする拡張ルールブックである。ディベロッパー曰く「シムシティというか、シムテリトリー」。

プロローグ: Homecoming

自己啓発セミナーマニアの恋人に付き合って林間キャンプにやってきたヒロイン。先住民の通過儀礼の真似事(しかも一切危険がないよう骨抜きにされたイベント)ぐらいで、人生観が変わるはずもないだろうに……と冷めた目で他の参加者を見つめていたが、その晩起きた事件によって彼女自身の人生が変えられてしまう……

深い森、そこを無知な人間から守ろうとするワーウルフ、〈最初の変身〉……W:tA を思わせる道具立てながら、ワーウルフ側の行動原理がいかにも W:tF らしい。精霊たちの描写も参考になる。

第1章: Drawing Borders (Player Design)

本書の目玉、テリトリーの拡張ルール。テリトリー内で特に PC の利害に深く関わるものを「element」と呼ばれる専用 Merit 群で表現する。これは Totem Merit などと同様、一つのパックに属する PC 同士が Merit 割振点や経験値を出し合って購入できる。element にはそれぞれ利益や不利益があり、プレイヤーが相談して好みの element を取得したり、不都合な element を排除するロールプレイをしたりしていくにつれ、PC たちの努力でテリトリーが住みよく、目的に適ったものに変わっていく様がゲーム的に実感できる仕組み。各 element を追加・削除するには実際のセッションで何をする必要があるか、どんなストーリーフックに使えるかという点も明記され、TRPG と乖離した単なる数値いじりゲームになってしまうのを防いでいる。

エレメントはさらに以下の2つに分類される。

  • Territory Features: 特定の地形、建造物、影界の特徴的なスポットなど、「目に見える」特徴。森林、クラブ、商店街、住宅地、影界で精霊の集まる場所、負の感情の吹きだまり……など約50種類。
  • Territory Descriptors: Territory Feature に追加で取得することで、その Feature に新たな特性を付与する Merit 群。たとえば Club/Bar (ナイトクラブ/バー)の feature に、Sanguine (ヴァンパイアが多い)の descriptor を追加取得すると、「ヴァンパイアの溜まり場になっているナイトクラブ/バー」ができあがるというわけだ。約20種類。

「いくら種類が沢山あっても、Merit ポイントや経験値を何十点もつぎこむわけには……」と思うかもしれないが心配無用。テリトリー内にあるすべての建造物や自然物を Merit として取得する必要はない。システム導入にあたっては、ストーリーテラーがある程度テリトリーの基本設定を作ってからプレイヤーの好みも多少取り入れる ST 主導方式と、プレイヤーにもテリトリー設定で頭を絞ってもらう代わり Merit コストを課さない ST/PL 協調方式の2種類が用意されている。

Element システム以外にも、テリトリー内で有利に活動できる Merit ・ Gift ・ Rite が追加され、テリトリーを持つありがたみが倍増した。

第2章: Mapping the Land (Storytelling)

テリトリーを焦点にしたクロニクルを行うストーリーテラー向けの手引き。ゲーム開始までに最低限どれぐらい設定を作っておけばいいか、テリトリーのどういうところがシナリオネタに使えるか、豊富な具体例をまじえて解説されている。特に p.64-65「Territorial Mindset」は、プレイヤーに「ウラサ的思考」をしてほしいと考える ST 必見の Tips。章末には、テリトリーのパトロール中に遭遇する事件を集めたランダム・エンカウンター表、具体的なストーリーフック、いつもとちょっと目先の変わる戦闘場所のアイデア集がある。スポーツジムで敵をプールに叩き込んだり、魚市場でマグロを振り回して戦ったり(?)、映画館の暗闇で大暴れしたり……想像するだに楽しそうだ。

第3章: Lines in the Sand (Sample Territories)

テリトリーのサンプル設定集。5種類のテリトリーが収録されている。

  1. Small Town: Hood River (小さな町)
  2. The Forested Wilderness (大自然の一部)
  3. The City Block (大都市の一角)
  4. Suburbia (都市の郊外)
  5. War Zone: The Organ Pipe Cactus National Monument (交戦地帯)

うち1と5は、地理歴史から NPC まで詳細なデータが完備し、そのままでも使える。2〜4はより汎用的で、ST の好みに合わせてカスタマイズの余地を残した設定。

各設定はおおむね

  1. 土地の概観
  2. PC たちを導入する方法
  3. そこをテリトリーとすることの有利不利
  4. NPC の地元民
  5. そのテリトリーを拡張した場合の利点と問題
  6. 脅威となりうる勢力(精霊、Host、人間、Pure tribes など)

という構成になっている。細部の書式はまちまちで、設定がカバーする範囲も差があるが、とにかく第1章の拡張ルールを使ってみたい人から、どうせクロニクルをやるならすべて自分の手で設定しないと気が済まないこだわり派まで、幅広いニーズに対応可能だ。

エラッタ情報

第1章で、新 WoD で存在しない Skill を用いた判定が指示されているという指摘がある(→詳細)。公式エラッタを待たなくとも、ST がちょっと想像力を働かせれば十分に対応できる内容だが、少なくとも Bureaucracy とか Finance という技能を探してルールブックを繰る必要はない、ということを付言しておく。

……で、買い?

本書は次のような人にお勧めできる。

  • 昔から町や村の設定を作るのが大好き
  • 別に好きじゃないが設定を作らなかったために困った経験がある
  • W:tF で腰を据えてじっくりキャンペーンしたい
  • PC にもっとウラサっぽく振る舞ってほしい
  • シムシティにハマった経験がある

本書の売りはなんといってもテリトリーの拡張ルール。ST が「W:tF のワーウルフはそもそも……」などと説教せずとも、ルールを知れば「ああ、このゲームってテリトリーを守るのが大事なんだな、影界の影響も考えないと大変なことになるんだな」とプレイヤーが理詰めで納得できる。「ウラサらしい行動って何をしたらいいの?」と深く考え込んでしまう ST やプレイヤーにとって、ルールの有利不利を考えて行動すれば自然と「ウラサらしい行動」になるこのシステムは一つの朗報だろう。

もちろん、ルールの穴を突いて非現実的なボーナスを叩き出すマンチキンプレイヤーの温床になる可能性は否めないし、この手のロールプレイをルールや数値に頼るべきではない、という考え方もあろう。しかし W:tF は発売されてまだ年数の浅いゲームであり、旧 WoD と比べて「何をどれぐらい、どうやったらいいのか」というノウハウの蓄積があまりない。そういう意味で本書は貴重なガイドラインといえる。

たとえ街の狭い一角であっても、自分と大切な仲間の居場所を自力で勝ち取り、脅威から守り、よりよい方向に変えていける——それが W:tF の醍醐味だと私は思う。PC たちのそうした努力の結果が、Merit という目に見える形で反映されるこのシステムは、W:tF の楽しみを倍増させてくれるだろう。

ただ、同じテリトリー、同じパックで何シナリオも繰り返し遊ぶことで生きてくるシステムなので、単発セッションで無理に導入することはないとも思う。その場合でも、第2章以降のシナリオフックやサンプル設定集、ランダムエンカウンターなどはネタとしての利用価値十分で、いつものプレイに変化をつけるのに最適だ(そもそも、いちばん分量が多いのは第3章だし)。

書誌情報

ストック・ナンバー:WW30304
定価:$26.99 US
ISBN:1-58846-333-8
ページ数:128
ディベロッパー:Ethan Skemp
執筆者:Chris Campbell, James Kiley, Matthew McFarland, Peter Schaefer
発売年月日:2006年4月17日
ページ数:146
通販リンク:
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DriveThruRPG.com(PDF 版)

 

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World of Darkness に関する海外ニュースを Professor がときに適当な翻訳でお届け。名前が日記なのは骰子回転劇場・転の日記コーナーだった名残。実質上WoD2.0対応の回転劇場なので改名検討中。