原文は氏が運営するV:tRリプレイ・ブログ A Requiem for Atlanta に掲載されている。翻訳許可をお願いしたら「自分で使うために書いたものだから、あまり文章が練れていないけど」と恐縮されてしまったが、コンベンション用の単発シナリオから大事なお客の接待プレイまで、アイデアの実用性は実証済み。奇をてらったものはないので、たいていのプレイ環境に使えるだろう。
ルールブックは買った、キャラ作成方法も読んだ、プレイヤー志望者もいる、じゃあどんなシナリオを作ろうか? と迷うSTの参考になれば幸いである。
なお、V:tR用語についてはProfessor独自の訳語をあて、初出の箇所で元の英語を併記した。公式日本語版とは異なる部分もあるがご容赦ねがいたい。
今回はブレインストーミングの手法を使って案を絞り出した。テーマは、血族らしく「血」で行こう。なんとなく思いつきで、シナリオの題名をすべて単語ひとつの形にして、それと「血」を組み合わせたときの意味の変化からネタを拾ってみることにした。頭の中ではなかなかクサくて良いと思ったんだが、実際にやってみるとわりとすぐ飽きてしまった。(そもそも題名を1語にすることにこだわりがあったわけでもないし。自分でも何を考えてたんだと思う)
とはいえ、「『血』がつく言葉をもとにして、いくつのストーリーの題名(とシナリオアイデア)を思いつけるか」に挑戦してみた。
まずBlood を含む2単語の言葉のリストを作る。次にそのリストを発想の踏み台にして、思いつくかぎりの対立構造、状況設定、人物像、情景などをかたっぱしから書き出す。もしこの言葉ひとつひとつがV:tRのテレビドラマのエピソード題名だとしたら、週刊TVガイドの番組欄には何と書いてあるだろう?
そうしてできた架空のエピソード一覧がこのシナリオアイデア集だ。不本意ながらひどい駄洒落になってしまったものもあるが、ネタ自体は使えるから、題名を変えればそれほどばかばかしく見えないだろう。いくつかは実際に今回のV:tRクロニクルでシナリオネタに使ったし、今後使う予定のものもある。コンベンション用の単発シナリオに仕立てたものもある。WW社にお客が来たときの接待プレイにも使った(たとえばモンテ・クック夫妻が『Ptolus』のサイン本にサインをしに来社したときも、僕はこのリストのネタでSTをやった)。
V:tR のシナリオアイデアを探してる? ここには25個ある。よければ使ってくれ。
1. 喪失 Blood Loss
あるPCと親しい人間が、突然、不慮の死を遂げた。PCたちは不死者の悲哀をまたひとつ思い知る——大事な友達が死んだのに、葬儀に出るのもはばかられるとは。仮面舞踏会/Masquerade を危険にさらすのを承知で、葬儀に出席するか? それとも旧友の死に不審なものを感じ、真相解明にのりだすか?
2. 伏流 Blood Flow
インヴィクトゥス/Invictus が他人名義で所有する会社の金が、秘密口座に横流しされているようだ。どこに、誰が、なんのために? インヴィクトゥスの構成員に頼まれてPCたちは調査をはじめるが、そこで別の疑問にぶつかる。そもそも依頼主は横流しのことをどうやって知ったんだ? 言われたことを信じて調査を続けるか、依頼人を裏切る覚悟で真相を探るか?
3. 兄弟 Blood Brothers
公子の宮廷に新顔のヴァンパイアが現れた。あるPCの血祖/sire が、PCより先に造った継嗣/childe だという。血祖の跡継ぎ(またはお気に入り)と目されてきたPCの立場はゆらぎはじめる。だが血祖はいま事件に巻きこまれており、もしかしたらこの自称「兄(姉)」が鍵を握っているのかもしれない。聞き出すにはどうすれば?
4. 変節 Blood Transfusion
敵対する派閥/faction またはコヴナント/covenant のヴァンパイアが「脱党したい」とPCたちに受け入れを求めてきた。はたして信用したものか? 信用するにしても、言われるままに受け入れるより、相手が強いことをいえない立場のうちに利用できるだけ利用しておいたほうがよくないか? その後で敵対派閥に裏切り者がいると教えてやったら? 人の道としてはどこまで許されるのか?
5. 狂熱 Blood Fever
血族が感染すると狂乱/frenzy する疫病「赤熱病」が流行し、仮面舞踏会をおびやかす。街に疫病を持ちこんだ犯人はある流れ者のヴァンパイアだという。だが、彼は哀れなスケープゴートにすぎない。赤熱病の正体は、サークル・オブ・ザ・クローンのある同胞/coterieが敵を陥れるためにクルアック/Cruácで生みだした、魔の疫病だったのだ!
6. 艱難 Blood Pressure
うだるような真夏日が続くある晩、PCたちは吸血鬼ハンター集団に町はずれの廃工場に追いつめられて夜明けを迎える。陽光から身を隠し、ハンターたちの杭と斧をかわしつつ、日没まで睡魔と戦い続けなければならない。長い長い一日の始まりだ。
7. 争奪 Blood Feud
街の中心を占めるその領土/domainは、ヴェントルー/Ventrueの2つの名家が協力して100年間維持してきた。だが両家の当主に仕えるグールの男女が禁じられた恋に落ち、子供までもうけてしまう。二家の同盟は瓦解した。子供はどちらの家が引き取るのか? グールが結婚するとき、持参金/結納として家1軒が与えられるとしたら? 事態を丸く収めるには子供の存在がどうしても邪魔になり、「処理」の役目がPCたちに回ってきたら?
8. 人狼 Blood Moon
この町には古いしきたりがある。1年に3晩、人狼たちは町内のあらゆる血族の領土に出入りを許され、霊地の様子を調べてまわるのだ。今年のお目付役はPCたちに回ってきたが、よりによってそんなときに事件は起きる。人狼のパックに同行して血族の領土を巡回中、人狼たちの部族抗争に巻きこまれてしまった!
9. 痴情 Blood Lust
若々しい肉体のまま何百年も生きている、セクシーな血族の美女が数年ぶりに休眠からめざめた。どういうわけかPCの一人をいたくお気に召したらしい。PCたちを手駒に引き入れようとする計略か? それとも本気で惚れたのか? それを愛といっていいのだろうか? 呪い/The Curse で混乱した数世紀ぶんの記憶を抱えた女怪の愛——あるいは肉欲——は、PCたちが考えるものと同じでないかもしれない。
10. 初穂 Blood Oranges
街で活動するサークル・オブ・ザ・クローンは、祭司長/Hierophant と公子に対し、形式的な地代をおさめる慣習になっている。地代はクローンの同胞1つにつきブラッド・オレンジ1個だ。ところがPCたちの近所になわばりを構える同胞は、今年の地代を納めに来なかった。祭司長によれば、構成員4人ともが行方をくらましているという。いっぽう街ではカルト集団の犯行を思わせる連続殺人事件が起きており、現場に置かれたブラッド・オレンジは消えた4人の庭から穫れたものだった。彼らの囲い者/herd や寝所/haven に警察の捜査の手が迫っている。もしPCたちが仮面舞踏会を守り、消えた同胞の代わりに今年の地代を納めるなら、彼らの領土を譲り渡してもいい、と祭司長は言うのだが……
11. 業病 Blood Donor
ある有力なヴァンパイアの寵愛するグールが、突然病に倒れた。助かる道は肝臓移植しかない。手遅れにならないうちに適合するドナーと移植医を見つけられるか? グールの命はPCたちにかかっている。
12. 急使 Blood Drive
PCたちの任務は公子宮廷から森に住むワーウルフのパックに荷物を届けること。だが街から遠く離れたところで車の故障のため足止めを食ってしまう。ただの不運な事故か、ワーウルフと敵対する精霊の妨害工作か? 刻々と夜明けが迫る中、携帯電話も通じない僻地に取り残されたPCたちがとった手段とは?
13. 怪盗 Blood Bank
ヴァンパイア版の金庫破り大作戦。
目標:ヴェントルーの権力者が広壮な屋敷に保管する、齢一千歳のヴァンパイアの血を入れた器。
警備:忠実な召使いでいっぱいの屋敷、高給で雇われた腕利き警備員、グール犬の群れ、血祖の宝を奪われまいとする継嗣たち。
報酬:器に保管された、値段の付けられない価値のある、魔力のこもった血。おそらく現代では忘れ去られた枝族/bloodline か訓え/Discipline の力が秘められているだろう。
14. 疑惑 Blood Type
過去に数々の問題を起こしたため、200年前からこの街に出入り禁止となっている枝族がある。PCに力を貸してくれているヴァンパイアに、その追放された枝族ではないかと疑惑がかかった。公子は部下に命じて彼の血を魔術的に分析させ、真偽を確かめようとする——だがそれには相当な苦痛が伴ううえ、永久的な後遺症が残ってしまう。彼は本当に大罪人の末裔なのか? 彼の疑いが晴れたとしても、次に疑われるのがPCたちだったとしたら?
15. 家畜 Blood Cells
狩りの途中にPCたちが偶然迷いこんだのは、違法の「血液牧場」だった。どこの誰ともわからない血族が6人、地下の檻に監禁され、動物や人間の血で飼われている。おそらく彼らの血がどこかの年経たヴァンパイア(たち)の食糧になっているのだろう。この家畜ヴァンパイアたちは誰の継嗣で、どこから連れてこられたのか? 長老たちの怒りをかうのを承知で真実を皆に知らしめるか、それとも隠蔽工作に協力して権力にとりいるか?
16. 粛清 Blood Bath
月曜日、流れ者のヴァンパイアが隣街から不吉な知らせをもたらした—— VII がやってくる、と。火曜日、最初の犠牲者の灰と「VII」のサインが発見される。初めこそ「あの流れ者は人を脅かしてよろこぶ、ただのほらふき屋だ」と断じる血族もいたが、木曜には街じゅうの血族が本当にそうだったらよかったのにと願うようになっていた。日曜日、街に領土の割り当てをもたない血族全てを標的とする咎人狩り/Blood Hunt が発令され、明くる月曜日には、街の血族人口は1週間前とくらべものにならないほどに激減していた。まさに虐殺の巷と化した7日間を、PCたちは生きのびることができるか。
17. 統計 Blood Count
今では通りを歩くだけでわかる。この半年で、街にヴァンパイアが目に見えて増えた。ヴァンパイアが多すぎる。誰かが無断で〈抱擁〉を行っているのか、他の街から流れこんでくるのか? 公子に人口調査を命じられた警吏/Sheriff は、人手不足だからとPCたちに代理を頼んでくる。PCたちは担当区画を調査して、そこで見かけたあらゆるヴァンパイアの活動記録をつけなければならない。
18. 追跡 Blood Trail
ある元老/Primogenのグールが脱走した。機密情報を持ち出したうえに、よりによって超常現象研究家グループのもとに身を寄せたらしい。仮面舞踏会を——ひいては脱走グールを——保護するために、PCたちはその研究家集団の行方を突き止めなければならない。追跡は困難を極める。相手は昼夜を問わず行動可能で、一般大衆に混じっても怪しまれず、血族に遭っても〈獣のざわめき/Predator's Taint〉を引き起こすこともない。夜ごと手がかりは失われてゆき、グールの主は焦燥をつのらせる。もしグールを捕まえられなければ、責任をとらされるのはPCたちだ。
19. 沈黙 Blood Witness
幼い少年がヴァンパイアの正体を目撃し、記憶を消される前に逃げのびた。4年後、PCたちはその少年と偶然出会う。仮面舞踏会を守るために何らかの手を打つか? それで長老たちを納得させられるだろうか? 少年は4年間沈黙を守ってきた——もはや仮面舞踏会の脅威ではないのでは? ヴァンパイアの存在を隠し通し、自分たちを守るためなら、ほんとうに何をしても許されるのか?
20. 空白 Blood Libel
PCの一人は、ある晩めざめると、見知らぬ廃屋の地下室にいた。ゆうべは一晩じゅう狂乱していたらしく何も思い出せない。仲間のところにもどってみると、街の血族のひとりがゆうべ同族喰らい/diablerie で殺されたという。しかも、被害者の同胞が言い張るには、犯人はほかならぬ自分らしい。ほんとうに自分がやったのだろうか? 違うなら、なぜ彼らは嘘をつくのだろう? 自分が無実だとしても、警吏にそれを証明できるだろうか? そもそも血族にとって無罪とは何を意味するのか?
21. 間伐 Blood Letting
問題は単純だ——街の血族が増えすぎて手に負えなくなった。対策は簡単だ——間引けばいい。街の各コヴナントに対し、公子から無情な布告がくだる。「構成員の一人を宮廷処刑人に引き渡し、抹殺せよ」従わないコヴナントには翌晩公子の処刑人と捕吏/Hound がさしむけられる——構成員2人ぶんの死刑執行状を持って。
22. 代償 Blood Vessel
心を病んだモルブス枝族/Morbus と体を病んだグールたちがPCたちを監禁する。PCの誰かが自分の血を飲み、枝族の跡継ぎになってくれるなら解放してやろう、とモルブスは言う。さもなければ自分の代で枝族が絶滅してしまうと思いこんでいるのだ。返事を渋っていると、今度はPCたちの従者/retainer や囲い者やグールを噛んで疫病を移してやるぞ、と脅してくる。一人を犠牲にして自由をかちとるか、理不尽な要求に屈するぐらいなら全員で永遠の滅び/Final Death を選ぶか?
23. 汚点 Blood Stains
あるPCが殺した人間が、亡霊/ghost となってつきまとう。PCたちが人間から血を吸おうとすると、亡霊がその人間に憑依して邪魔をするのだ。餓えて休眠に陥り、無抵抗になったところを滅ぼそうという狙いらしい。亡霊の祟りを逃れるために、PCたちはやむなく人間の霊媒たちと取引する。彼らは偉大な死霊使いだと自称するが……
24. 肉親 Blood Relation
公子の宮廷で小耳にはさんだ話によれば、ある血族が公子から報奨として人間をひとり賜った。それはなんとPCの実の子(または兄弟姉妹)だ。件の血族は1ヶ月以内にその人間を血族に迎えたいと願い出て、公子の許可をとりつけた。だが闇の抱擁/Embrace を授ける前に一定の観察期間をおくのがこの街のならわしだ。資質ありと認められれば、その人間は晴れて血族の仲間入り。そうでなければ仮面舞踏会を守るために殺される。さあ、PCはどう動く? 息子や兄弟が抱擁をうけられるように影から手助けする? せめて人として死ねるように妨害する? 他の血族の所有物を盗んだ罪人になるもいとわず、命がけで彼らに街を脱出させる?
25. 審判 Blood Test
ランケア・サンクトゥムの司祭がある同胞に不審を抱いた。サークル・オブ・ザ・クローンの教徒というが、実はランケア信者を堕落させるべく潜入したベリアルズ・ブルード/Belial's Brood の一味ではないか? 司祭はこの同胞とつきあいがなくシンパの可能性の薄そうなPCたちに目をつけ、彼らがほんとうにクローン教徒なのか悪魔崇拝者なのか見極めてほしいと頼んでくる。だがそのためには彼らの怪しげな教義に感化されたふりをしなければならない。ミイラ取りがミイラにならないように……
【元記事:A Requiem for Atlanta - 25 Vampire Stories】
【著:Will Hindmarch 訳:Professor】
(c) Will Hindmarch. All rights reserved.
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