ここしばらくブログ更新どころか土日に外出する体力もない有様だったが、ラトル指揮ベルリンフィルのサントラを劇場で聴かなければ絶対後悔する、と、這うようにして映画館に行ってきた。もともと原作が好きだったということもあるし、嗅覚を主題にした小説を映像化可能なのか、という好奇心もあった。
結論からいう。この匂い立つエロスはただごとではないですよ。最初の殺人が起きた直後の一場面なんてもう、下手なベッドシーンよりえろいですよ。エロとエロスは違うのだとかねて力説していた知人がいるが、それはこのことかと身をもって納得した。
主人公はあらゆる匂いを嗅ぎ分ける異能の調香師なのだが、匂いを嗅いで脳内に想起されるイメージを映像が、その結果呼び起こされる感情を超一流オケのサントラが担当していて、『映画による匂いの再現』にみごとに成功している。
天才調香師の主人公にしかわからない、処女のあえかな香りが漂うシーンでは、ふわりと妙なるソプラノが絶妙な呼吸で重なって、聞き手の魂まで持っていきそうになる。
小説では終始淡々とした描写が続くのだが、映画では愛されることを知らない主人公の孤独に踏み込んでいたのがまた良い味を出している。原作者ズュースキント自身は映画化にはノータッチだそうだが、衝撃的なラストも含めて、たいへん誠実に映画化されていて、原作を先に読んだ人にも安心してお薦めできる。
字幕翻訳者はかの戸田奈津子女史なのだが、オリジナルの音声がかなり聞き取りやすい英語なのと、主人公にほとんど台詞がないので、あまり引っかかる部分はなかった。ただまあ、Psycheを「精霊」と訳すのはどんなもんかね。
(以下、ちょっとだけえろくさい&ネタバレ話)
ニュースで取り沙汰された集団全裸ラブシーンは、映画の文脈で観ると肉欲より愛を感じさせる場面だった。700人だったか750人だったか、あの一人一人が実に幸福そうないい表情をしているのだ。
恋した人と同じベッドで朝を迎えた経験のある人は、あのシーン最後の男女の表情にきっと何かを思い出さずにはいられないはず。
![]()
![]()
![]()