
『Changeling』クロニクルの雰囲気は、妖精らしく気まぐれにくるくる変わる場合もあるだろう。だが根底に流れるムードは「甘美な毒」である。チェンジリングが出入りする見えざる世界は、不思議に満ちていると同時に危険や欺瞞もはらんでいる。美しい妖精はしばしば邪悪さを剥き出しにする。魅惑に満ちた〈垣根/The Hedge〉からはまさかの友も思わぬ敵も現れる。チェンジリングが操る魔法は奇跡のような効き目をもたらすが、不条理な反動や代償も伴う。そして、〈異人/The Others〉を恐れ、裏切りに怯え、やむなく人を欺きつづけることに傷つきながらもなお、チェンジリングたちは激情のまばゆさに惹きつけられ、妖精魔法の鮮やかな彩りを嘆賞するのだ。甘美と毒気、どちらを欠いても『Changeling』の世界は成り立たない。毒気がなくては、妖精は牙を抜かれたも同然。ヴィクトリア朝時代の寓話が子供たちに、世界が完璧なものではないなどと夢にも思わせまいと抱かせようとした脆い幻想のように、弱々しく薄っぺらい存在になってしまうだろう。だが甘美さがなくては、この世界は萎びた無価値な場所、斜に構えた虚無主義者の目に映る宇宙と化してしまい、本来の魅力を失ってしまう。恐怖あるところには奇跡もまたあり、甘美あるところには狂気もまた存在する。
【White Wolf Online, 2007/06/08】