骰子回転劇場・転|日記: レビュー『World of Darkness: Urban Legends』
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骰子回転劇場 日記

レビュー『World of Darkness: Urban Legends』

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これは何の本?

World of Darkness汎用シナリオソース集。都市伝説を題材にした半完成シナリオ5本とシナリオアイデア9本を収録。それぞれ物語の展開や真相が数パターン用意されており、STの好みやPCの傾向に合わせて細部を組み立てていく。

アメリカの都市伝説をとりあげているが、日本や他の国の類似した伝説に置き換えるのはたやすい。どのシナリオソースも「伝説の真相」にひとひねり加えてあるので、プレイヤーが元ネタを知っていても興ざめどころか、むしろ知っていることがおおいに推奨される。

調査・謎解きが主体となるシナリオがほとんどで、結末に行きつくためにはプレイヤー同士の協調が求められる。情報収集をしていけば、プレイヤー自身が推理力を発揮しなくても謎は解ける仕掛けになっているので安心。

【注意:以下の文章ではシナリオの内容に触れています。プレイヤーが読んでも支障がない範囲にとどめていますが、気になる方はChapter〜を飛ばして「こんな人におすすめ」以降をお読みください。】

Chapter 1: Unwilling Organ Donors(臓器泥棒)

映画のように鮮烈な幕開け。シリアスで現代的で、PCの内面的葛藤に踏みこんでいく、WoDの王道をゆく物語。シナリオの骨組みは固まっているので、あとは用意されたパーツを選んではめ込むだけ。PCの設定に左右される部分が多く、先にキャラクターを作ってもらってからシナリオを調整する前提で書かれているようだ。

プレイヤーの推理や演技に期待しすぎず、基本ルールをきちんと押さえてゲームシステムからドラマを演出していく手法をとっている。なんでも口八丁で押し切ってしまうロールプレイ猛者に手を焼いている人、逆に謎解きシナリオになるとプレイヤーが黙ってしまう人には好適なシナリオ。STは、基本ルールブックのどこにどんな判定が載っているか程度は把握しておく必要がある。

ここでは情報収集で行き詰まるのを防ぐシナリオ作りの方法が解説されているので、他のシナリオを遊ぶ際にも読んでおくと役立つだろう。

(English Version)
Vividly shocking opening, like a good suspense movie. The mood is modern and serious. Characters will experience inner conflicts and make the final bitter decision. This scenario is very well modularized, so all you have to do is picking your favorite materials and putting them into the plot frame. Most details, however, depend on characters' background. Maybe the best way is making player-characters first, then adjust the details with them.

This chapter doesn't depend on heavy-rollplaying nor strict rule-applying. It can be a countermeasure for players who abuse their eloquence to trample the rule. Players who aren't familiar with investigation on RPG also gain some benefits. Storytellers, be sure to have grasp of the WoD core rulebook.

Chapter one is useful even when you're going to play other scenarios. It'll prevent your players from stacking in some investigation scenes.

Chapter 2: The Jersey Devil(ジャージー・デビル)

前章とは対照的に、平凡な日常が非日常に塗り変わっていく恐怖を描く。状況描写の完成度が高く、重要な場面は本書をそのまま読みあげてもいいようになっている。そのぶん各場面のつなぎ方はST裁量に任されているようだ。

タイムリミットがあるのでプレイ時間を調整しやすいが、真相が釈然としないまま強制エンディングになだれこむ可能性も考えられる。PCに与える情報を整理し、ほんとうにその材料で真相に行き着けるかどうか、PLの視点からシミュレートしてみるといいかもしれない。

Chapter 3: Bloody Mary(ブラッディ・マリー)

大人志向なWoDでは珍しく、登場人物の大半が青少年。未成年キャラクターで遊ぶことが推奨されているようで、子供が仲間にいると有利な場面や、子供を巻きこまないと到達困難なエンディングパターンがある。だからといってPC全員を青少年にしてしまうと調査や情報収集の範囲が限られるため、落とし所が悩ましい。

超能力者・ワーウルフ・メイジなど、超常現象に精通したPCによる悪役退治シナリオにもできるが、力で押し切るには少々厳しい戦闘バランスになっている。戦闘を短時間で切り上げたければ、Defenseを表記より下げたほうがいいだろう。

Chapter 4: Alligators in the Sewers(下水道ワニ)

ちょっぴりクトゥルフ風味。好きなプレイヤーなら一発で元ネタがわかるだろう。『WoD: Second Sight』があれば色々と細部をいじれるが、使わなくても別に困らない。背景とNPC設定は非常にしっかりしているが、ストーリーはおおまかなあらすじが何通りか提示してあるだけ。シーンの切り分けや進め方はSTが考える必要がある。

いちばんの見所は下水道に関する汎用ルール集。下水道にはどこからどうやって入るのか、中はどんな風になっているのか、どういう障害や困難が待ち受けているか、基礎知識とさまざまな場面の判定例が用意されている。本章にかぎらず下水道を舞台にするシナリオに広く応用できそうだ。

Chapter 5: Doppelgängers(ドッペルゲンガー)

ドッペルゲンガーの発生・行動システムがメイン。後半のシナリオは「一例」と書かれているものの完成度は高く、短時間で手軽に遊ぶのによさそう。スティーブン・キングの『ダーク・ハーフ』が参考資料に挙げられている。個人的には、この発生原理で思い出すのはグレッグ・イーガンの短編集『ひとりっ子』だ。旧WoDに詳しい人なら Wraith: The Oblivion の Shadow を連想するかもしれない。

PCがオリジナルの人物と親しいほど話が進めやすい。プレイヤーが協力してくれるなら、プレイヤーがオリジナルとドッペルゲンガーを同時プレイするのもまた面白い。また、オリジナルのMoralityが極端に高い/低いほどドッペルゲンガーの存在が際だつ仕組みになっている。

Chapter 6: Somebody Told Me(聞いた話なんだけど)

これまでの章でとりあげなかったアメリカの有名な都市伝説を題材にしたシナリオ案9本。それぞれ History(都市伝説が生まれた背景)、Motivations(PCが事件に巻きこまれるきっかけ)、Story(PCが巻きこまれた後の展開)、Variations(さらにひねりを加えた例)に分かれている。NPCのデータやストーリーの細部はSTが詰める必要がある。ここに収録された都市伝説は以下のとおり。

  • Arsenic in White Lace(呪いのドレス)
  • Bad Candy(危険な飴玉)
  • Circles in the Fields(ミステリー・サークル)
  • Gone(消えていく)
  • The Hook(鉤爪男)
  • The Maker's Mark(麻薬入り即席タトゥー)
  • The Mexican Pet(メキシコのペット)
  • The Phantom Caller(ありえない電話)
  • The Vanishing Hitchhiker(消えるヒッチハイカー)

こんな人におすすめ

細部まで設定済みだから楽だろうと既製品シナリオで遊ぼうとしたら、書かれていない前提やPC設定に合わない部分が出てきて、結局こまごまと修正を迫られたことはないだろうか? あるいは「メンツの中にそのシナリオをプレイした人がいる」という理由で、泣く泣く既成シナリオをあきらめたことがないだろうか?

そんな人に本書はおすすめだ。

同じシナリオをすでに読んだり遊んだりした人がプレイヤーになっても、どのパターンがどういう組み合わせで来るかは予想不能。つまり、完成品シナリオより柔軟でネタバレしにくく、ゼロから自作するよりは楽という、おいしいとこどりの一冊なのだ。

こうした構造は既刊『WoD: Mysterious Places』と似ているが、Mysterious Placesが「世の中には説明しきれない謎がある」という立場の物語主体だったのに対し、本書はシナリオ中に出てくる謎が納得ゆく程度に(すべてという保証はない)解明される仕掛けになっている。またPCの選択がストーリーの流れをより大きく左右する。プレイヤーにとっては「自分の手でクリアした」という達成感が得やすいだろう。

書誌情報

ストック・ナンバー:55303
定価:$24.99
ISBN:978-1-58846-489-7
ページ数:128
ディベロッパー:Luke Johnson
執筆者:Alan Alexander, Russell Bailey, Rick Chillot, Will Hindmarch, Luke Johnson, Amber E. Scott, Malcolm Sheppard
発売年月日:2007年5月2日
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「レビュー『World of Darkness: Urban Legends』」へのコメント

1

都市伝説に関する本ではジャン・ハロルド ブルンヴァンの著書がオススメできますよ。

- Comment by ナッキー at november 21, 2007 02:38 am
2

情報ありがとうございます。ブルンヴァンの本はずいぶん昔に『消えるヒッチハイカー』を読んだきりでした。改めて調べてみると、沢山出ているのですね! メキシカン・ペットに至っては書名になるほどメジャーだったとは。知りませんでした。

- Comment by Professor [TypeKey Profile Page] at november 21, 2007 08:50 am
3

一応は5冊、新宿書房から日本語訳が出版されている筈です。
(私の知る限りですが…、
 『消えるヒッチハイカー』・『ドーベルマンに何があったの?』(『チョーキング・ドーベルマン』)・『メキシコから来たペット』・『くそっ! なんてこった』・『赤ちゃん列車が行く』の5冊です)
都内の本屋さんでは1冊目しか手に入れる事が出来ませんでしたので、残り4冊はアマゾンで手に入れる事になってしまいましたが。

そして、『WoD:Urban Legends』についての解説ですが…、
各章で解説されている(他に転用出来そうな)一般的な知識等は、これは本当に貴重でうれしい情報でした。
吸血鬼ネタと並んで大好きな都市伝説ですから、これは是非とも読み込んでみたい処ですね(辞書と首っ引き、でしょうが…)
何時か何処かで聞いた事のある噂が沢山載っているので、思わず知らずに頬が緩んできてしまっています。

- Comment by カリー侍 at november 21, 2007 10:06 pm
4

>カリー侍さま
5冊まとめて読みたいところですが、けっこう良いお値段ですね……図書館に置いているか探してみようかな。それはそうと、待望のRequiem for Romeが出ましたねえ。

- Comment by Professor [TypeKey Profile Page] at november 22, 2007 06:51 pm
5

そうです、『Requiem for Rome』ですよ、問題なのはッ。
発売されればすぐにでも欲しい、処だったのですが…例によって例の如くにアマゾン(ジャパン)があの体たらく。
時間は掛かってしまいますが、仕方がありません、お店に入荷するのを待つ事にしますですよ。

- Comment by カリー侍 at november 22, 2007 07:53 pm
 

著者のブログに載ってしまった!『WoD: Urban Legends』レビュー

えらいことになった。『World of Darkness: Urban Legends』執筆陣の一人 Will Hindmarch 氏のブログに、私が先日... 続き... - Trackback from 骰子回転劇場・転|日記 november 29, 2007 07:36 am
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World of Darkness に関する海外ニュースを Professor がときに適当な翻訳でお届け。名前が日記なのは骰子回転劇場・転の日記コーナーだった名残。実質上WoD2.0対応の回転劇場なので改名検討中。