
2006年発売の製品だが、リクエストをいただいたので遅まきながらご紹介。
Vamppire: The Requiem は同じキャラクターで多くのシナリオを経験するほど面白くなるゲームだ。本書は複数のシナリオの筋をつなげたクロニクル(いわゆるキャンペーンシナリオ)の作り方や進め方を解説するストーリーテラー向けの手引き。サンプルアイデアや使い回しのきく汎用NPC集も収録されている。
クロニクルを退屈させないために多数のシナリオバリエーションが紹介されており、目先を変えたシナリオをやってみたい人にもおすすめできる。
クロニクル作成法。単発シナリオの作り方はV:tR基本ルール第4章に詳しいので、ここではどんなシナリオをどう組み合わせていけばクロニクルに一貫した筋を持たせられるかを説明している。
目先を変えたシナリオをやりたいだけなら、本章はとばしてChapter Two から読んでいってもさしつかえない。
クロニクルの構想18種類。黒帯の見出しは「こんな風に話を広げていけばおもしろいんじゃない?」という大まかな提案、灰色見出しは直前の提案に基づいて作られたサンプルクロニクル設定。黒帯見出しごとに独立した読み切り記事になっているので、通して読む必要はない。pp.10-11の記事一覧を見て面白そうなところだけ拾い読みすればいい。
前述したように、この章はシナリオに変化を付けるヒント集にもなる。大きく分けてプレイヤーの取り組み方を変えるもの、キャラクターの環境を変えるもの、ゲームシステム自体を改造してしまうもの、と3種類ある。
PCと対立する敵役を魅力的に見せる作成や演出のコツ。章末は使い回しの利く汎用NPCデータ集。人間の科学者や弁護士などのほか、「一般的な」ヴァンパイアを何パターンか収録する。
本書はV:tRの新しいプレイスタイルを提案するヒント集だ。「気がつけば最近、似たような筋のシナリオばかり作っている」「温めているネタはあるけど、1セッションでおさまりそうにない」そんなストーリーテラーにはうってつけといえよう。「PCをこういう状況に置いてみるのはどう?」「ゲームシステムのこのへん、使わないなら取っ払っちゃったら?」などと斬新な切り口を見せてくれる。シナリオの方向性というTRPGの根本的な部分を扱っているだけに、V:tRだけでなくWoDシリーズ全般に応用がきく部分も多い。
ストック・ナンバー:25302
発売日:2006年3月3日
ページ数:192ページ
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White Wolf オンラインカタログ
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DriveThruRPG.com(PDF版)
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World of Darkness汎用シナリオソース集。都市伝説を題材にした半完成シナリオ5本とシナリオアイデア9本を収録。それぞれ物語の展開や真相が数パターン用意されており、STの好みやPCの傾向に合わせて細部を組み立てていく。
アメリカの都市伝説をとりあげているが、日本や他の国の類似した伝説に置き換えるのはたやすい。どのシナリオソースも「伝説の真相」にひとひねり加えてあるので、プレイヤーが元ネタを知っていても興ざめどころか、むしろ知っていることがおおいに推奨される。
調査・謎解きが主体となるシナリオがほとんどで、結末に行きつくためにはプレイヤー同士の協調が求められる。情報収集をしていけば、プレイヤー自身が推理力を発揮しなくても謎は解ける仕掛けになっているので安心。
【注意:以下の文章ではシナリオの内容に触れています。プレイヤーが読んでも支障がない範囲にとどめていますが、気になる方はChapter〜を飛ばして「こんな人におすすめ」以降をお読みください。】
映画のように鮮烈な幕開け。シリアスで現代的で、PCの内面的葛藤に踏みこんでいく、WoDの王道をゆく物語。シナリオの骨組みは固まっているので、あとは用意されたパーツを選んではめ込むだけ。PCの設定に左右される部分が多く、先にキャラクターを作ってもらってからシナリオを調整する前提で書かれているようだ。
プレイヤーの推理や演技に期待しすぎず、基本ルールをきちんと押さえてゲームシステムからドラマを演出していく手法をとっている。なんでも口八丁で押し切ってしまうロールプレイ猛者に手を焼いている人、逆に謎解きシナリオになるとプレイヤーが黙ってしまう人には好適なシナリオ。STは、基本ルールブックのどこにどんな判定が載っているか程度は把握しておく必要がある。
ここでは情報収集で行き詰まるのを防ぐシナリオ作りの方法が解説されているので、他のシナリオを遊ぶ際にも読んでおくと役立つだろう。
(English Version)
Vividly shocking opening, like a good suspense movie. The mood is modern and serious. Characters will experience inner conflicts and make the final bitter decision. This scenario is very well modularized, so all you have to do is picking your favorite materials and putting them into the plot frame. Most details, however, depend on characters' background. Maybe the best way is making player-characters first, then adjust the details with them.
This chapter doesn't depend on heavy-rollplaying nor strict rule-applying. It can be a countermeasure for players who abuse their eloquence to trample the rule. Players who aren't familiar with investigation on RPG also gain some benefits. Storytellers, be sure to have grasp of the WoD core rulebook.
Chapter one is useful even when you're going to play other scenarios. It'll prevent your players from stacking in some investigation scenes.
前章とは対照的に、平凡な日常が非日常に塗り変わっていく恐怖を描く。状況描写の完成度が高く、重要な場面は本書をそのまま読みあげてもいいようになっている。そのぶん各場面のつなぎ方はST裁量に任されているようだ。
タイムリミットがあるのでプレイ時間を調整しやすいが、真相が釈然としないまま強制エンディングになだれこむ可能性も考えられる。PCに与える情報を整理し、ほんとうにその材料で真相に行き着けるかどうか、PLの視点からシミュレートしてみるといいかもしれない。
大人志向なWoDでは珍しく、登場人物の大半が青少年。未成年キャラクターで遊ぶことが推奨されているようで、子供が仲間にいると有利な場面や、子供を巻きこまないと到達困難なエンディングパターンがある。だからといってPC全員を青少年にしてしまうと調査や情報収集の範囲が限られるため、落とし所が悩ましい。
超能力者・ワーウルフ・メイジなど、超常現象に精通したPCによる悪役退治シナリオにもできるが、力で押し切るには少々厳しい戦闘バランスになっている。戦闘を短時間で切り上げたければ、Defenseを表記より下げたほうがいいだろう。
ちょっぴりクトゥルフ風味。好きなプレイヤーなら一発で元ネタがわかるだろう。『WoD: Second Sight』があれば色々と細部をいじれるが、使わなくても別に困らない。背景とNPC設定は非常にしっかりしているが、ストーリーはおおまかなあらすじが何通りか提示してあるだけ。シーンの切り分けや進め方はSTが考える必要がある。
いちばんの見所は下水道に関する汎用ルール集。下水道にはどこからどうやって入るのか、中はどんな風になっているのか、どういう障害や困難が待ち受けているか、基礎知識とさまざまな場面の判定例が用意されている。本章にかぎらず下水道を舞台にするシナリオに広く応用できそうだ。
ドッペルゲンガーの発生・行動システムがメイン。後半のシナリオは「一例」と書かれているものの完成度は高く、短時間で手軽に遊ぶのによさそう。スティーブン・キングの『ダーク・ハーフ』が参考資料に挙げられている。個人的には、この発生原理で思い出すのはグレッグ・イーガンの短編集『ひとりっ子』だ。旧WoDに詳しい人なら Wraith: The Oblivion の Shadow を連想するかもしれない。
PCがオリジナルの人物と親しいほど話が進めやすい。プレイヤーが協力してくれるなら、プレイヤーがオリジナルとドッペルゲンガーを同時プレイするのもまた面白い。また、オリジナルのMoralityが極端に高い/低いほどドッペルゲンガーの存在が際だつ仕組みになっている。
これまでの章でとりあげなかったアメリカの有名な都市伝説を題材にしたシナリオ案9本。それぞれ History(都市伝説が生まれた背景)、Motivations(PCが事件に巻きこまれるきっかけ)、Story(PCが巻きこまれた後の展開)、Variations(さらにひねりを加えた例)に分かれている。NPCのデータやストーリーの細部はSTが詰める必要がある。ここに収録された都市伝説は以下のとおり。
細部まで設定済みだから楽だろうと既製品シナリオで遊ぼうとしたら、書かれていない前提やPC設定に合わない部分が出てきて、結局こまごまと修正を迫られたことはないだろうか? あるいは「メンツの中にそのシナリオをプレイした人がいる」という理由で、泣く泣く既成シナリオをあきらめたことがないだろうか?
そんな人に本書はおすすめだ。
同じシナリオをすでに読んだり遊んだりした人がプレイヤーになっても、どのパターンがどういう組み合わせで来るかは予想不能。つまり、完成品シナリオより柔軟でネタバレしにくく、ゼロから自作するよりは楽という、おいしいとこどりの一冊なのだ。
こうした構造は既刊『WoD: Mysterious Places』と似ているが、Mysterious Placesが「世の中には説明しきれない謎がある」という立場の物語主体だったのに対し、本書はシナリオ中に出てくる謎が納得ゆく程度に(すべてという保証はない)解明される仕掛けになっている。またPCの選択がストーリーの流れをより大きく左右する。プレイヤーにとっては「自分の手でクリアした」という達成感が得やすいだろう。
ストック・ナンバー:55303
定価:$24.99
ISBN:978-1-58846-489-7
ページ数:128
ディベロッパー:Luke Johnson
執筆者:Alan Alexander, Russell Bailey, Rick Chillot, Will Hindmarch, Luke Johnson, Amber E. Scott, Malcolm Sheppard
発売年月日:2007年5月2日
通販リンク:
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新WoDのサプリメントが出る度にいちおう目は通しているのだが、これを他人様に見せられる形のレビューに仕立てるのが結構面倒で、読みながらIRCの#wod-jpに感想を実況中継で垂れ流して済ませているのが現状である。
「今、自分が何をしているか」をちょこちょこ書きつづるだけのゆるいソーシャルツール twitter が流行りと聞いたので、実験的に読書感想を垂れ流してみることにする。いちおうRSSもとれるようだし、twitterを試しに遊んでみたい人は友達登録もどうぞご自由に。
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PCの近所に越してきた新しい隣人。それは風水師ふたりが半世紀あまり繰り広げてきた暗闘の、最終決戦の幕開けだった。シカゴすべてを巻きこむ魔術戦争の行く末は、PCたちの手に……。
『Chicago Workings』はワールド・オブ・ダークネスを背景世界とし、ストーリーテリング・システムで遊ぶための、一話完結シナリオだ。プレイヤー・キャラクターが人間/mortal という前提で作られているため、『ワールド・オブ・ダークネス』基本ルールさえあればプレイできる(ただし『Chicago Workings』は英語版)。
消費経験点0〜34点のキャラクター向きで、難しい謎解きはほとんどなく、高い戦闘力や交渉力も必要としない。作りたてのキャラクターや、WoDに不慣れなプレイヤーに適している。人数指定はないが、4人前後が適当だと思う。
アメリカ合衆国、シカゴ市。予備知識は必須ではないが、実在の地名や建物が関わってくる。地図や旅行ガイドを見せながら状況描写するとイメージの食い違いを防げるかも。
特定の技能や能力がないと行き詰まるという心配はない。そのためコンベなど「どんなキャラクターが来るか当日までわからない」セッションに向いている。ただ、PCが離れて暮らしていると導入が面倒なので、同じアパートに住んでいる、または家が隣同士という設定でキャラ作成してもらうのが無難だろう。
WoDの一般人が現実の人間と同じぐらい超常現象を信じていないという点は、はっきりさせておいたほうが、起承転結が引き立つ。
起承転結の「転」、つまり一般人であるPCを日常から超常の世界に引き込むp.30〜32の演出が非常に美しい。ここだけ切り取って映画にしたいぐらいだ。また、TRPGではあまりお目にかかれない類の「魔術」が登場するので、他のホラーTRPGとの違いを主張したい向きにもお勧め。
ほんとうに必要な情報はすべて向こうからやってくるので、情報収集のやりかたがわからない初心者とか、ささいな情報収集に時間をかけすぎるプレイヤーへの対策にもなる。その情報を得た上でどう行動するかはPCの決断に任されているので、強制感もあまりないだろう。
p.18のフローチャートが示すように、始めと終わりは決まっているが、途中はどういうルートを通ってもかまわない。巻末には各シーンの内容を小さなカードに要約したシーン・カードが付属し、情報の出し忘れや、重要な判定方法を容易にチェックできる工夫が施されている。
p.1-2 はシナリオ本編に直接関係のないイメージテキストなので、地名や人名がまったく分からなくても心配ない。実は『WoD: Chicago』に紙数の関係で掲載されなかった幻の短編小説だそうで、本シナリオはこれに触発されて生まれたという。
p.18まで事件の真相とNPCの説明が延々と続く。シナリオはいつになったら始まるのかと不安になるが、実はここが最も重要で、シナリオ構成要素すべての解説になっている。2つの蘊蓄は、PLに完全に理解させる必要はない。「なんだかわからないが背後に複雑な理論があるらしい」程度のはったりがかませれば、充分。
p.19からシナリオ本編となる。ほとんどの要素は説明済みなので、各シーン1〜2ページ程度で流れを説明する程度。「そのシーンにSTがやるべきこと」「PCに達成してもらうこと」「問題解決への障害/手助け」と、演出に使えそうな状況や推奨判定が並べられていて、具体的な進行はSTの裁量に任されている(p.18までが重要だと言ったよね?)
鍵となるNPCに感情移入してもらえるかどうかがシナリオ全ての成否を握る。また、序盤で脱線を許すとダレやすい。この序盤を乗り切るためのマスタリング技術はp.19に紹介されている。PLがハメられたと気がついた時にはすでに脱線する余地がない、という悪魔のようなテクニックだが、うまくやるには何度か試行錯誤が要りそうだ。
敵キャラはデータ的には笑っちゃうぐらい古典だが、描写を工夫して未知の気味悪さを醸し出している。人間が相手にするには若干固いかな、とも思うが、おそらくPCが4人いれば人数差で押し切れるだろう。
舞台を他の国や都市に移すことは可能だが、都会で、それも区画整理や再開発を繰り返して現在の形に発展してきたところ、というのが必須条件だ。レトロな建築と現代的なビルが同居しているような場所ならなお望ましい。東京や京都のように、都市設計に呪術的な意図があったといわれる土地ならWoDらしさが出そうだ。いずれにせよシカゴ以外を舞台にするなら、p.30-32の全面変更が必要となる。
人間向けシナリオだが、PCが超常種族(ヴァンパイア/ワーウルフ/メイジ/プロメシアン)でもそれなりに遊べる。特に作りたてのメイジキャラにはぴったりの設定だ。超常種族で遊ぶ場合、PCの動機付けを変える必要があるが、p.10にガイドラインが示されているので調整は楽だろう。
(著者確認済み。情報はWhite Wolf Forums)
著者 Will Hindmarch が、このシナリオを執筆するに至った顛末を公式フォーラムで語っている。ネタバレを含むので注意。
オンライン限定販売の電子書籍なので、書店やゲームショップには売っていない。DriveThruRPG.com からPDF書類として有料ダウンロードすることになる。日本円で概ね800〜900円ぐらい。他シリーズのシナリオと3本セットで買えば100円ほどお得になる。
WoDらしさがあって、単発で、世界設定を知らない初心者でも遊べる、という希有な特性を兼ね備えたシナリオだ。基本ルール1冊されば遊べるというのもお得感が高い。またSAS共通の特長として、PLにとってもSTにとっても「何をやればいいのか」がわかりやすい設計になっており、これまで「WoDって難しそう」と二の足を踏んでいた人にもとりつきやすいと思われる。
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先日発売された WoD単発シナリオシリーズ「Storytelling Adventure System (SAS)」には、STが読みやすく遊びやすいように、様々な新しい仕掛けがほどこされているようだ(→解説原文(ページ最後))。
SASの製品紹介ページや製品本体の表紙には、こんなマークが付いている。左から、プレイ時間、シナリオの傾向、難易度の目安を表している。
Scenes: 総シーン数=プレイ時間の目安
そのシナリオを構成するシーンの数。多いほど長編ということになる。第一弾のシナリオはどれも8〜9シーンで、サプリメントの付属シナリオと同程度。なお、プレイヤーの選択によっては出てこないシーンも含まれているので、実際のセッションではこれよりシーン数が少ない場合もある。
MPS dots:頭を使う度/アクション度/交渉重視度
キャラクターのMental(頭脳)、Physical(肉体)、Social(交渉力)がどの程度試されるかを、ストーリーテリングシステムおなじみの5ドット方式で表示する。ドットが高い分野は、それだけ大きな困難が用意されている、つまり重視されているということ。
| 0ドット | なんの問題もない |
| 1ドット | 能力を試されることがあるといえばある |
| 2ドット | 試されることはあるが、難しくはない |
| 3ドット | そこそこ歯ごたえがある |
| 4ドット | かなり厳しい試練がある |
| 5ドット | 限界に挑戦 |
XP LEVEL:経験点の目安
プレイヤー・キャラクターの想定経験値。ストーリーテリング・システムではキャラクターが成長のために消費した経験点が強さの目安となるため。強いキャラクターでシナリオを始めたいときは、初めから経験値をいくらか渡して成長させるのが普通。
| 0-34点 | 駆け出し |
| 35-74点 | 経験者 |
| 75-119点 | プロ |
| 120-179点 | ベテラン |
| 180点以上 | 伝説に残る |
巻末には、1シーンにつき1枚の「シーン・カード」が付属する。各シーンでSTが出すべき情報やイベント、PCが達成するべき目標、重要な判定や試練、PCが状況を打開するための手がかりなどがトランプ大のカードにまとめられている。
STがシナリオ全体の流れを把握し、情報の出し忘れや解決の行き詰まりを防げるほか、セッション中に「この状況は何と何で判定するんだったっけ……」とシナリオのプリントアウトをあちこちめくる手間も省けるというわけだ。
17インチモニタで実寸表示させても1ページが画面内におさまる。1ページ読むためにいちいちウィンドウをスクロールさせなくていい。オンラインでセッションする人や、マスタースクリーン代わりにノートパソコンを使っている人にはうれしい仕様だろう。
ちなみに、表紙はカラーとモノクロ2通り付いていて、カラー版の表紙は黒を基調、モノクロバージョンは白基調の配色になっている。インクジェットプリンタで真っ黒なページを印刷すると「あ、インクがもったいない……」と思ってしまう人は、2ページ目から印刷すればいい。
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W:tF のワーウルフは、パックを組み、テリトリー(縄張り)を持っているのが一般的だ。なぜテリトリーを欲しがるのか、どうやって獲得するのか、維持にはどんな苦労があるか、については基本ルールブック p.45〜53に詳しい。しかしこれらの事柄は、基本ルールではゲームシステム上なんら影響を及ぼさなかった。本書はテリトリーの獲得・維持・向上を、ロールプレイの課題としてだけでなく、ゲームとしても楽しめるようにする拡張ルールブックである。ディベロッパー曰く「シムシティというか、シムテリトリー」。
自己啓発セミナーマニアの恋人に付き合って林間キャンプにやってきたヒロイン。先住民の通過儀礼の真似事(しかも一切危険がないよう骨抜きにされたイベント)ぐらいで、人生観が変わるはずもないだろうに……と冷めた目で他の参加者を見つめていたが、その晩起きた事件によって彼女自身の人生が変えられてしまう……
深い森、そこを無知な人間から守ろうとするワーウルフ、〈最初の変身〉……W:tA を思わせる道具立てながら、ワーウルフ側の行動原理がいかにも W:tF らしい。精霊たちの描写も参考になる。
本書の目玉、テリトリーの拡張ルール。テリトリー内で特に PC の利害に深く関わるものを「element」と呼ばれる専用 Merit 群で表現する。これは Totem Merit などと同様、一つのパックに属する PC 同士が Merit 割振点や経験値を出し合って購入できる。element にはそれぞれ利益や不利益があり、プレイヤーが相談して好みの element を取得したり、不都合な element を排除するロールプレイをしたりしていくにつれ、PC たちの努力でテリトリーが住みよく、目的に適ったものに変わっていく様がゲーム的に実感できる仕組み。各 element を追加・削除するには実際のセッションで何をする必要があるか、どんなストーリーフックに使えるかという点も明記され、TRPG と乖離した単なる数値いじりゲームになってしまうのを防いでいる。
エレメントはさらに以下の2つに分類される。
「いくら種類が沢山あっても、Merit ポイントや経験値を何十点もつぎこむわけには……」と思うかもしれないが心配無用。テリトリー内にあるすべての建造物や自然物を Merit として取得する必要はない。システム導入にあたっては、ストーリーテラーがある程度テリトリーの基本設定を作ってからプレイヤーの好みも多少取り入れる ST 主導方式と、プレイヤーにもテリトリー設定で頭を絞ってもらう代わり Merit コストを課さない ST/PL 協調方式の2種類が用意されている。
Element システム以外にも、テリトリー内で有利に活動できる Merit ・ Gift ・ Rite が追加され、テリトリーを持つありがたみが倍増した。
テリトリーを焦点にしたクロニクルを行うストーリーテラー向けの手引き。ゲーム開始までに最低限どれぐらい設定を作っておけばいいか、テリトリーのどういうところがシナリオネタに使えるか、豊富な具体例をまじえて解説されている。特に p.64-65「Territorial Mindset」は、プレイヤーに「ウラサ的思考」をしてほしいと考える ST 必見の Tips。章末には、テリトリーのパトロール中に遭遇する事件を集めたランダム・エンカウンター表、具体的なストーリーフック、いつもとちょっと目先の変わる戦闘場所のアイデア集がある。スポーツジムで敵をプールに叩き込んだり、魚市場でマグロを振り回して戦ったり(?)、映画館の暗闇で大暴れしたり……想像するだに楽しそうだ。
テリトリーのサンプル設定集。5種類のテリトリーが収録されている。
うち1と5は、地理歴史から NPC まで詳細なデータが完備し、そのままでも使える。2〜4はより汎用的で、ST の好みに合わせてカスタマイズの余地を残した設定。
各設定はおおむね
という構成になっている。細部の書式はまちまちで、設定がカバーする範囲も差があるが、とにかく第1章の拡張ルールを使ってみたい人から、どうせクロニクルをやるならすべて自分の手で設定しないと気が済まないこだわり派まで、幅広いニーズに対応可能だ。
第1章で、新 WoD で存在しない Skill を用いた判定が指示されているという指摘がある(→詳細)。公式エラッタを待たなくとも、ST がちょっと想像力を働かせれば十分に対応できる内容だが、少なくとも Bureaucracy とか Finance という技能を探してルールブックを繰る必要はない、ということを付言しておく。
本書は次のような人にお勧めできる。
本書の売りはなんといってもテリトリーの拡張ルール。ST が「W:tF のワーウルフはそもそも……」などと説教せずとも、ルールを知れば「ああ、このゲームってテリトリーを守るのが大事なんだな、影界の影響も考えないと大変なことになるんだな」とプレイヤーが理詰めで納得できる。「ウラサらしい行動って何をしたらいいの?」と深く考え込んでしまう ST やプレイヤーにとって、ルールの有利不利を考えて行動すれば自然と「ウラサらしい行動」になるこのシステムは一つの朗報だろう。
もちろん、ルールの穴を突いて非現実的なボーナスを叩き出すマンチキンプレイヤーの温床になる可能性は否めないし、この手のロールプレイをルールや数値に頼るべきではない、という考え方もあろう。しかし W:tF は発売されてまだ年数の浅いゲームであり、旧 WoD と比べて「何をどれぐらい、どうやったらいいのか」というノウハウの蓄積があまりない。そういう意味で本書は貴重なガイドラインといえる。
たとえ街の狭い一角であっても、自分と大切な仲間の居場所を自力で勝ち取り、脅威から守り、よりよい方向に変えていける——それが W:tF の醍醐味だと私は思う。PC たちのそうした努力の結果が、Merit という目に見える形で反映されるこのシステムは、W:tF の楽しみを倍増させてくれるだろう。
ただ、同じテリトリー、同じパックで何シナリオも繰り返し遊ぶことで生きてくるシステムなので、単発セッションで無理に導入することはないとも思う。その場合でも、第2章以降のシナリオフックやサンプル設定集、ランダムエンカウンターなどはネタとしての利用価値十分で、いつものプレイに変化をつけるのに最適だ(そもそも、いちばん分量が多いのは第3章だし)。
ストック・ナンバー:WW30304
定価:$26.99 US
ISBN:1-58846-333-8
ページ数:128
ディベロッパー:Ethan Skemp
執筆者:Chris Campbell, James Kiley, Matthew McFarland, Peter Schaefer
発売年月日:2006年4月17日
ページ数:146
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DriveThruRPG.com(PDF 版)
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本書は『Vampire: The Requiem』の都市設定資料集で、米国ルイジアナ州のニューオーリンズ市をとりあげる。この街はV:tRの「デフォルト」舞台設定であり、基本ルールにも地理や歴史、勢力図、主要NPCといった最低限の情報が収録されてすぐに遊べるようになっている。
本書はその基本設定をさらに掘り下げ、これまで語られなかった水面下の陰謀、隠れた真相、さらなる謎、各NPCの内情や思惑といった追加情報と、それを使ったシナリオアイデアを提供する。サンプルシナリオが1本付属する。
まだ血族になったばかりの主人公が、人間時代への感傷から思わぬ大事件に巻きこまれる。読者を主人公に見立てて二人称で語りかけるという異色の幕開けだ。いきなりニューオーリンズ在住の幼童にされてしまうのも妙な気分だが、実はこれには理由がある( Appendix の項で後述)。
「本書のNPC設定には、基本ルール掲載分とかならずしも合致しない箇所がある」と断り書きがある。これは基本ルールの記述が間違っているわけではなく、基本ルール掲載分は各NPCの「表向き」の設定であり、本書の設定はふつう知られていない「裏の顔」だそうだ。またプロット案やシナリオ導入例は囲み記事以外の部分にも多数埋もれているのでどんどん拾ってくれ、という注意書きも。
ニューオーリンズといえば避けて通れないのはブードゥー教とアン・ライスだが、p. 11 Resources(参考資料リスト)にはやはりブードゥー関連の資料が目立つ。アン・ライス関連では当然ながら映画『インタビュー・ウィズ・ヴァンパイア』が。個人的には、本書の雰囲気はあの映画とはほど遠い気もするのだが。
ニューオーリンズのヴァンパイア史。基本ルールにすでに詳細な年表が掲載済みだが、本章では個々の事件よりその裏で活躍した血族に注目し、時代背景の解説をまじえつつ主要NPCの活動の変遷をふりかえる(look back)。年表上の事件の真相がおしげもなく暴露されるため、プレイヤー専門の人が読んでしまうといささか興を削がれるかもしれない。特にp.22〜23は危険なのでいっそテープでも貼って袋綴じにすることをお勧めする。
本章がとりあげる時代は主に1850年以降。そのわずか150年少々の間に、少なからぬ長老が休眠や死亡や引退によって血族社会の重要ポストをしりぞいている。年若いPCにもパワーゲームのいちばん美味しいところに割りこむ余地は充分あるというわけだ。また、ライバル派閥同士がときに渋々ながら共同戦線を張ったり、第三勢力に煽られて無益な抗争をはじめたり、と対立構造そのものもめまぐるしく変化して飽きさせない。
ニューオーリンズの歴史を動かしてきた長老NPCたちは、けっして全知全能ではない。だまされもするし、失敗もする。知らないこともたくさんある。ときには血族にも説明がつかない超常現象に翻弄される。そうした失敗や偶然によっても歴史が形づくられているあたりがとてもリアルで、「大人のゲーム」らしい雰囲気だ。
ニューオーリンズの地理・治安・政治情勢・交通手段など、プレイヤー・キャラクターが実際にこの街に住む(または滞在する)にあたって気になる実用的な情報。
と、この街を舞台にセッションを始めたら早晩プレイヤーから浴びせられそうな疑問に対する答えはだいたいここに揃っている。
他の都市でも使えそうな設定としては、「公園や広場を特定の血族が餌場として独占するのは禁止」というビダル公子の禁止令がある。マスカレードを侵さないかぎり、どんな血族でもここで狩りをしてかまわない。逆にいうと盛り場やもっと実入りのいい場所が独占欲の強い血族のドメインになっている可能性はおおいにあるわけで、PCをあまりガツガツさせず、かつ「もっと良いドメインが欲しい」という血族らしい動機を持たせられる仕掛けになっている。
ここから3章は、ニューオーリンズ在住の血族NPCを一人ずつとりあげての解説だ。第3章がelder(長老)、第4章がancilla(若輩)、第5章がneonate(幼童)となる。
基本ルールの記述がPC向けの情報であるのに対し、本書の記述はST向けという位置づけ。ゆえに各NPCの秘めた野心、密かな悩み、後ろ暗い秘密、水面下の行動など、ふだんは表に出ない「裏設定」がつぎつぎと明らかになる。
長老7人、若輩9人、幼童9人、その全員が野心や秘密を隠しており、そのすべてに個性的な動機が設定されている。同じ権力を欲しがるのも、ある者は血族社会に公平な法の裁きをもたらしたいために、またある者はただ誰からも弾圧されずにすむように、とじつに様々なのだ。そのうえ誰もがその野心を実現するために着々と陰謀を進めている。
だが真に恐るべきは、それぞれの陰謀が互いに連動しているという点だ。互いにかみあいながら回転する歯車のように、長老の陰謀が若輩の陰謀に影響し、その若輩の陰謀は別の幼童の陰謀に影を落とす。一幼童が長老さえ欺く大ばくちを打ったりもする。幼童という小さな歯車が長老の大きな歯車を回し、そこに噛み合うすべての歯車を動かすこともあるのだ。
そのため、ひとつの事柄に関する記述があちこちに分散していて、ある長老の項ではっきり書かれていないので「ははあ、ここから先はSTの想像に任せるということか」と思ったら、ずっと後の幼童の項で意外な真相が明かされて「なんだってー!?」と驚愕する、ということもしばしばだ。
すべての影響を計算ずくで自殺を計画する血族が出てきたり、よかれと思って進めた計画が知らずに狂わされていたり、裏に思惑があるように見える行動がじつは壮大な狂気の産物だったり、傀儡を操る黒幕と見えた者が思わぬ第三勢力の傀儡だったり……読んでいてまったく飽きない。
幼童から権力への道は意外に近いことにも驚かされる。Antoine Savoyの右腕、Baron Cimitiereが頼みとする闇工作係、covenantに所属せず立場の弱い血族たちの声を代表するリーダー……いずれも幼童扱いなのだ。幼童キャラクターでは権力に無関心とか反動的とかいう態度が好まれる傾向があるが、ただ干渉されたくないだけでも力が必要なこの街では、そうそう無関心でもいられないのだろう。
何層にも陰謀がからみあう本書の設定は、じっくり腰を据えて行うクロニクル(キャンペーンシナリオ)に最適だ。ストーリーテラー向けに、クロニクルを準備するにあたってはどこから手を着ければいいか、どんな対立構造が利用できるか、についての実践的な手引きになっている。また「PC全員モータル」「全員長老」などといった、ちょっとひねった前提での遊び方も紹介されている。
ここまでにも囲み記事でシナリオアイデアが多数出てくるが、この章は全体がシナリオアイデアの塊のようなものだ。なおp.124 In the Wake of the Storm は「ハリケーンによる洪水でニューオーリンズが水没したら」という、今となっては笑うに笑えないプロット例が載っている。ただし本書の出版は今年5月末のことで、ハリケーン・カトリーナの被害を予言したかのような内容になってしまったのは不幸な偶然の一致というよりほかない。
本書の設定を利用した1幕7場のシナリオ。11ページにわたるかなりのボリュームだ。ニューオーリンズに最近越してきた、またはこの街で〈抱擁〉されたばかりで、まだどの派閥にも与していない幼童キャラクターをPCに想定している。
PCは偶然、ある事件の唯一の目撃者となってしまい、街の支配権を巡って争う3つの派閥それぞれがPCたちを懐柔しようと接触してくる。他人の使い走りで事件に首を突っ込まされるのではなく、事件の鍵を握る中心人物として街のお歴々から注目を浴びるお膳立てのおかげで、かなり気分良く状況にはまりこんでもらえそうだ。
ニューオーリンズの3つの派閥とその違いをプレイヤー側に提示することと、PCたちの「居場所」をニューオーリンズに確立すること、この2点がシナリオの目的となっている。
基本的には一本道な展開だが、背後にある真相は本書にふさわしく何人もの陰謀と偶然が複雑にからみあったものだ。とかくややこしい陰謀ものはプレイヤーが謎解きに行き詰まって失敗しがちだが、このシナリオではその問題をうまく演出で処理している。「謎解きをやらせるとすぐ情報収集が行き詰まって……」というSTも、このシナリオなら対策は万全だ。「プレイヤーが自力で答えにたどりつけなくても、なんとなく自力で謎を解いたような達成感があじわえる」「戦闘しなくても戦闘したように盛りあがる」巧妙な仕掛けは、自作シナリオの参考にもなるだろう。
WWのシナリオとしてはかなり親切設計で、プレイヤーが脱線したり、やみくもに戦闘を仕掛けたりした場合の対処方法も書いてある。ただし、STは事前に登場するNPCの説明をよく読んで理解しておかないとかなりひどい目に遭う。
とてもよく練れたシナリオなのだが、難点がないわけではない。冒頭のプロローグが二人称になっているのは、実はこのシナリオの最初の場面、つまり重大事件を目撃するまでの経緯を説明するハンドアウトを兼ねているからなのだが……プロローグで「あなた」と呼ばれるPCが事件にかかわりあいになる動機は非常に感傷的な、ひいき目に見ても個人的なものなので、PCの人数が多い場合に「……で、なんで俺たちまでここにいるのよ?」と首をかしげる人が出るおそれがある。しかし個々に導入をロールプレイすると、そもそも最初の場面に持っていくことさえ困難なので、プロローグには適宜手を加えるつもりで準備したほうがよさそうだ。
なぜかやたらとBaron Cimitiereのイラストが多い。他の連中の5倍ぐらいは登場している。シルクハットに丸眼鏡という特徴的な服装が絵にしやすいのだろうが……とりあえず男爵ファンの人は買って損なし。設定的にもおいしいとこ取りなので。
本書はあくまで基本ルールの舞台設定の追加情報であり、全体にST向けの内容になっている。プレイヤーしかやらない、という人には読み物以上の価値はないだろう。ネタバレは嫌い、という人にはなおさらおすすめしない。
逆に、俺がSTだとか、身近にSTをしてくれる人がいないとかいう人は、迷わず買うべきだ。ただ複雑な設定をめぐらすだけでなく、それをどう活用していくか、その中に溶けこんでPCが活躍するにはどうしたらいいか、というところまで配慮がいきとどいた設定集であり、利用しないのはもったいない。俺はできあいの設定など頼らないぜ、という人でも、ネタとしていくらでも使い道がある。
この水準で凝りに凝った都市設定がそういくつも出るとは思えない。実際、他の都市設定が出るという噂も耳にしない。World of Darkness: Chicagoがあるじゃないか、という指摘もあろうが、あれはクロスオーバーを前提とした都市設定であり、V:tRのみで遊ぶものとはまた違ったゲームを意図していることだろう。
どうもJGCでの発表を又聞きするに、都市設定資料集は翻訳候補に入っていないという噂だが、本当だとしたらちょっと残念な話だ。
ストック・ナンバー:25200
定価:$26.99
ISBN:1-58846-248-X
ページ数:128
ディベロッパー:Justin Achilli, Mike Lee
執筆者:Ari Marmell, C. A. Suleiman
発売年月日:2005年5月30日
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World of Darkness 汎用サプリメント。なにげない日常の風景に紛れ、人々を超常の世界にひきずりこむ、奇怪で恐ろしい9つの「ミステリー・スポット」と、それを使ったシナリオアイデアを紹介する。
特定の都市や地理に依存しない設定なのでシナリオの舞台を選ばず使えるのが特徴。人間(mortal)キャラクターを想定した造りだが、Vampire/Werewolf/Mageでも充分楽しめる。
ネタバレは避けてレビューするつもりだが、心配な人はこの先を読まないように。
汎用性の高い舞台設定が売りだが、シナリオ展開例が充実しているのでシナリオ集のように使うこともできる。動機・導入・展開・結末とそれぞれ5〜6通り用意されたサンプルを順に拾っていくだけでもひととおりのプロットが作れてしまうのだ。サンプルの組み合わせを変えればがらりと違う話になる。
サンプルはかなり大ざっぱな書き方なので、実際にシナリオとして運用するには細部を作り込む必要があるだろう。もっとも、山場となるミステリー・スポットのデータや背景は綿密に設定されているので、まったく何もないところからシナリオを作るよりは楽なはずだ。
本書が提案するシナリオのほとんどに共通するのは「ラスボス」の不在だ。トラブルの元凶である人物や怪物を見つけだし、それを交渉なり戦闘なりで排除して解決、というのはTRPGのシナリオによくあるパターンだが、その「それを倒せばなんとかなる何か」がそもそも存在しなかったり、戦闘で勝てるような「相手」ではなかったりするのが『Mysterious Places』の特徴だ。
桁違いの能力を誇るクトゥルフ怪物みたいなのが出てくるのか? いいや。PCは虐殺されるしかないのか? いいや。
とはいえ、中にはPCに死者や発狂者(や、もっとひどい運命をたどる者)が出るのは当たり前、未知の恐怖でPCを絶望のどん底に陥れる、地獄のようなミステリー・スポットもある。p.96 The Whispering Wood と p. 124 The Empty Roomが2凶といっていいだろう。とくに Whispering Wood は「PCが破滅するほうがおもしろい」という凶悪なしろものだ。キャラに愛着の強い人、PCが死なないゲームに慣れている人にはお勧めできない。
逆に、すばらしい恩恵をもたらすミステリー・スポットもある。シナリオ例ではその恩恵がさらに大きな災厄を引き起こすのだが、純粋な善意がおぞましい災厄に変わるからくりが恐ろしい。本書全体にPCに危害を及ぼす存在は多々登場するが、いずれも邪悪さとか悪意からやっているようには見えない。そもそも意図というものを持ち合わせているのかどうか怪しいのもいる。この「悪意の不在」も本書の特徴だといえるだろう。
なに、いいやつばかりしか出てこないのかって?
君は自分の顔を刺した蚊を「いいやつ」と思うかい?
第3章 Swamp Indian Hollow の挿絵が異彩を放っている。マルカヴィアン・クランブックの初版が好きだった人はp.54に注目。
面白く読んだし、猛烈にこれを使ったシナリオがやりたくなったので、万人に読めといいたいところだがここは客観的にいこう。
ひらたく言えば「STのネタ集」なので、PL専門の人には用がない。同じ理由で、そのまま使えるシナリオが欲しい人には『World of Darkness: Ghost Stories』のほうがおすすめだ。先にも述べたが、「倒すべき敵」が存在しないシナリオを打ち出してきているので、やっぱり最後はボスキャラと戦闘しないと落ち着かない、というむきには『World of Darkness: Antagonists』をお勧めする。いろいろな意味で本書の対極をゆくソースブックだ。
では、この本は誰にお勧めなのか?
『Mysterious Places』が破滅すら楽しむようなシナリオを持ってきたのは、PCが生きのびることを前提に作られているようなV:tR/W:tFの既成シナリオを見てきた後だけに、驚きだったし、新鮮な感じがした(もちろん破滅型シナリオ自体はすでに他のホラーTRPGでおなじみだが……)。それと同時に、WoDコア系列はいよいよ「V:tRの半分」から「人間側から見たWorld of Darkness」として形をなしてきたな、とも思う。
WoDでは人間でいるかぎり超常現象の真相はわからない。知ったときには破滅をはじめるか、彼自身すでに人間ではないか、である。それを反映して本書でも「なにをきっかけに」超常現象が起こるかは説明されていても、「なぜそうなるのか」はまったく説明がない。だからVampire/Werewolf/Mageより「未知であることの恐怖」というホラーの主題のひとつがストレートに伝わってくるし、説明しなくていい気楽さのせいかどうか、執筆陣もどのシリーズよりも突拍子のないネタを出してくる。
だから、手間をいとわずWoDでホラー小説を再現してみたい、とか、新WoDで最もクレイジーな設定に興味がある、というSTにはぜひどうぞ。
本書が収録するミステリー・スポットは全部で9つ。
各章はおおむね次のような構成になっている(章によってはこの通りの題名でないところもある)。
ストック・ナンバー:WW55302
定価:$24.99
ISBN:1-58846-485-7
ページ数:128
ディベロッパー:Ken Cliffe
執筆者:Kraig Blackwelder, Rick Chillot, Geoffrey Grabowski, James Kiley, Matthew Mcfarland, Brett Rebischke-Smith, Chuck Wendig
発売年月日:2005年6月13日
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Werewolf: The Forsaken の敵役クリーチャーのうち、特に精霊界の住人をとりあげた拡張サプリメント。Spirit(精霊)、Spirit-Ridden(精霊に憑依された生物)、Host(古代妖怪の分身)に加え、そのいずれでもない太古の怪物 ancient horrors が新登場。Spirit-Ridden/Host の作成ルールが追加される他、精霊界の住人を絡めたストーリーテリングについて、ST への指針を掲載する。
乱暴にいえば「W:tF モンスターマニュアル・精霊界編」とでもいうところか。
自傷行為を繰り返す少女とその養父母である Uratha を襲う悲劇。Spirit-Ridden と Azlu が登場し、いよいよW:tFの本領発揮という感がある。精霊に思考まで侵蝕され、養父母を「守護者の牡・牝」としか認識できなくなった少女の最期は悲壮というよりほかない。モダンホラー風の救いのない幕開けである。
珍しく長い序文がめだつ。本書には敵役として使えるサンプルキャラクターが多数登場するが、それを PC の経験値を上げるためだけにそのへんをうろうろして狩られるのを待っているヤラレ役のように扱ってほしくはない、というのだ。実際、うかうかしていると逆にPCをとって喰いかねない曲者ぞろいではある。本書が Predators(捕食獣)と題されているのは、こいつらはワーウルフを狩る者でもあるんだぞ、という含みかもしれない。
ワーウルフを狩るといえば Pure tribes だが、本書では割愛されたようだ。一冊丸ごと Pure 専用のサプリメントを作るからそれまで待ってくれ、とのこと。それだけではあんまりだと思ったのかどうか、基本ルールの範囲内でうまく Forsaken との差異を演出するTipsが p.10 What About The Pure?に紹介されている。
前半は精霊の概説とストーリーテリングの指針。精霊が何を考え、何を欲し、なぜ喰らい合うのか。なにかと敵対する彼らに Uratha が協力を求めるのはどんな時か。またその場合にどのように交渉すればよいか、を解説する。
総じて基本ルール p.265〜273 Spirits を追補する内容になっており、精霊の記憶や死生観にまつわる話が興味深い。精霊との交渉における具体的テクニックを解説する p.16〜18 Meeting with the Spirits は、かけひきをロールプレイで演出したいプレイヤーなら必見だ。いっぽうストーリーテラー要チェックなのは p.21 Manifestation。物質界にいる精霊の可視/不可視の扱いが若干変更されている。
後半は60種以上におよぶ精霊データ集。犬猫や四大元素といったお馴染みの顔ぶれも多いが、コンビニの精霊、無気力の精霊、データの精霊など、他ゲームではちょっと見かけないような類が大半を占める。さらには異質な精霊の融合から生まれるハイブリッド精霊というのもいて(例:車の精霊+苦痛の精霊=歩行者轢き殺しの精霊)、バラエティには事欠かない。
能力値は全体に Initiative や Defense 値が高く、力押しで倒すのは難しい。一対一でもかろうじて殴り殺せそうなのは Rank 1 どまり、中には Defense 12 なんて化物もいるから、ban を探り出すなり交渉に持ちこむなり頭を使わないと苦戦必至だ。
「掲載データと同じ種類の精霊だからといって能力値や ban をこの通りにしなくてもいい、むしろ変えろ」と随所で強調される。せっかく基本ルールブックに精霊の自作ルールがあるので、それを活用してほしい、という意図だろう。
精霊がSpirit-Urged/Claimed/Thiefとなる動機、憑代の選択基準、憑依後の変化などの解説。それぞれの憑依形態で「何ができるのか」「元に戻す方法」「憑代が死んだらどうなるか」については、p.78, 80, 83に明快なサマリがある。基本ルールで不明瞭なところが多かっただけにありがたい。
また Chapter One に出てくる精霊が取り憑いた場合に憑代がどのような異変を示すか、という例が p.101〜 Spirit Parasites に豊富に挙がっている。
参考資料にキングやクーンツの小説を挙げているだけあって、サンプルキャラクターもそのままモダンホラー小説に登場しそうなものばかりだ(火の精霊に憑かれた Firestarter だっている)。それらを使ったシナリオも1本付属する。
目玉は Spirit-Ridden キャラクターの作成ルールだ。Urged/Thief はモータル扱いだが、精霊が憑代と融合した Claimed は超常種族とみなされテンプレートを適用する。精霊の侵蝕度を示す Synthesis という専用特性値をもち、そこから算出した作成ポイントを支払って専用Aspectを購入することで腕を増やしたり毒を吐いてみたり、と能力をカスタマイズできる。侵蝕が進めば Synthesis が上がって Aspect を増やしたり強化したりできるが、そのぶん人間を装うのは難しくなる仕組み。
Host 各種族の起源や性質、寄生した人間に及ぼす影響、退治の方法、など。基本ルールの説明より格段に具体的な情報が増え、不気味さ百倍である。知られざる Host として蝗の Srizaku、鴉の Halaku、蛇の Razilu が追加された。
蜘蛛の Azlu、鼠の Bashilu にはキャラクター作成ルールがついた。精霊に似た能力値振り分け制だが、共食いによって進化成長する性質を、各個体に evolution point を持たせることで表現している。最も下等な個体だと1点しか持っていないが、共食いすると相手のevolution pointを吸収できる。これを支払ってAspectを購入することで上位形態に進化したり、特殊能力を得たりするシステムだ。
Aspectは種族ごとに独立したリストになっているので、適当にとっても「それらしい」格好がつく。プロローグに登場したAzluと同じ能力を再現できるAspectもちゃんと用意されているあたりは心憎い。
ラヴクラフトの引用で始まることがすべてを象徴している。はるかな昔、Father Wolfによって精霊界の奥地に追放された、精霊でもHostでもない文字通りのバケモノどもだ。
6体のhorrorが登場するが、正体について Option A・B と2種類の説明を用意していて、どちらを採用してもいいというのがおもしろい。能力値のほうは、純粋に数値だけ比較すると高ランクの精霊のほうが強いかな、とも思うが、盛り沢山のインチキな特殊能力はそれを補ってありあまる。まあ、V:tMで能力値に「勝てません」と書かれていたという伝説の長老よりは数値があるだけマシだろう。
WoD 製品のイラストは本文の内容に無関係なことが多いのだが、本書にかぎっては掲載の精霊や怪物をきちんとビジュアル化してくれているのがうれしい。Lune や Machingan Spirit に挿絵がついているのには正直感動してしまった。しかし最も強烈なのは p. 96の Living Succubus だと思う。夢に出てきたら泣くぞ。
本書はSamuel Araya など繊細で不気味な画風のイラストレーターで揃えたらしく、グロテスクが苦手な人にはつらいかもしれない。『Antagonists』や『Ghost Stories』のビジュアルが好き、という人には受けそうだ。
ちなみに表紙で意味ありげに立っているコウモリ男は内容と無関係です。
W:tF における主要な敵役はやはり精霊、Host、Ridden であり、基本ルールで不明瞭だったところ、イメージのわきにくいところを本書はみごとに補完してくれる。基本ルールですでに述べたことをくどくど再録したりはしていないので、まさに正しい意味での「サプリメント」である。迷わず「買い」と断言しよう。
ストーリーテラーにとって即戦力となるのはもちろんだが、プレイヤーも自分のPCが影界で相手にするのがどんな連中か知っておいて損はないだろう。へたに論述セクションを読むよりは、p.23〜 A Spirit Bestiary掲載のサンプルをたくさん見たほうがかえって雰囲気を把握しやすいかもしれない。
Host や Ridden の作成ルールは PC としての使用に立派に耐えうる造りになっていて、正直言うと NPC を作るのにここまで必要ないのではと思うほどだ。詳しい解説を読むほどにPCとして使ってみたい誘惑にかられる御仁もいるだろうが、Introduction で執筆陣が警告しているように、そういった使い方をするならST各自で調整が必要になるだろう。
とはいえ、「数値は適当に作ればいいと言われたって、どれぐらいが適当なのかわからないもんなあ」と日頃頭を悩ませているSTにとって、本書の作成ルールは時間こそかかるが変化に富んだNPCをあまりバランス面で迷わずに作れる、という点でありがたい存在になると思われる。
ストック・ナンバー:WW30300
定価:$29.99
ISBN:1-58846-326-5
ページ数:192
ディベロッパー:Ethan Skemp
執筆者:Aaron Dembski-Bowden, Jess Hartley, Forrest B. Marchinton, Deena McKinney, Ethan Skemp
発売年月日:2005年6月27日
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“Heavenly Father, guide my aim as I serve as your Holy Spear, spilling the blood of the wicked in your name. Amen.”
「天にまします我らが父よ、我が手を導き汝の聖槍たる務めを遂げさせたまえ、汝の名において邪なる者の血を流させたまえ。アーメン」——『Lancea Sanctum』よりThe Hunter's Preyer (p.88)
本書は『Vampire: The Requiem』のサプリメントで、五大covenantのひとつであるランケア・サンクトゥム(Lancea Sanctum)を専門的にとりあげたcovenant sourcebook第一弾だ。
血族の教会というべきランケア・サンクトゥムの歴史、教義、組織、活動について徹底解説するほか、テーベ魔術(Theban Sorcery)や特殊Disciplineの追加データ、サンプルキャラクターを収録し、またランケアと縁の深い新たな枝族(bloodline)も紹介する。
シカゴのランケア・サンクトゥムを束ねる司教(bishop)の多忙な日々を描いた短編小説。著者Greg StolzeはV:tRのノベライズを手がけており、この短編でもV:tR小説シリーズの登場人物であるSolomon Birchが活躍する。
羊皮紙風の薄茶の紙使い、カリグラフィ風の書体、木版画調に加工した挿絵といった見かけの古めかしさとは裏腹に、内容は銃弾乱れ飛び革ジャケが血に染まるバリバリの現代物だ。ランケアの「中世の装いをまとった現代」というイメージを象徴するようなデザインである。
本文に使われている書体があまりに装飾的すぎて、読みづらいこときわまりないのが残念。結局PDF版のテキストをテキストエディタにコピーし書体を変えて、やっとのことで判読した。
本書の概要、テーマとムード、各章の内容紹介、用語集。公式サイトからp.24〜25のPDFサンプルがダウンロードできる。
p.24 The Home of the Lanceは基本ルールで説明されなかった「そもそもLancea Sanctumという言葉は何を意味するのか?」という疑問に答えている。なんとなくロンギヌスの槍のことと思いがちだが、そうではないというのだ。公式フォーラムでも議論になった話題なので、一読しておくと知ったかぶりプレイヤー対策になるかもしれない。同ページParishes and Domainsは、ランケア独特の言い回し「parish」の定義について。
p.25 Lexiconは、ランケア・サンクトゥム内で使われる用語集。見出しをざっと眺めただけでも、闇のメシア、黒修道院、ロンギヌス聖書……と、抹香臭さというかゴシック的雰囲気満点の言葉が勢揃いだ。V:tR開発当初「サバト」と呼ばれていた(!)covenantだけのことはある。
p.30〜41がランケア・サンクトゥムの歴史、p.42〜p.47が世界各地における現状。
前半は、教祖ロンギヌスの遍歴から聖典編纂者モナクスの宣教、テーベ魔術(Theban Sorcery)の発見、各Creed(宗派)の誕生、新大陸進出から現在にいたるまでを綴る。ロンギヌスの槍や天使といった伝奇的要素も登場するが荒唐無稽に走ることもなく、説得力のある背景史になっている。ランケア草創期に活躍したヴァンパイアはすべて滅びたか失踪したかのどちらかで、V:tMにおけるメトセラ的存在がひとりも出てこないあたりは、いかにもWoD2.0らしい。
ランケア・サンクトゥムは由来が由来だけにカトリック的な雰囲気が色濃く漂うが、実際にはもっと懐が深い。人間社会のキリスト教会の盛衰を歪んだ鏡のように映しながらも、あくまでヴァンパイアの、ヴァンパイアによる、ヴァンパイアのためのキリスト教として独自の発展をとげ、あげくにイスラム教やユダヤ教までCreedとして呑みこんでしまったからだ。厳密にいえば「血族のキリスト教」というより「血族の一神教」と呼ぶべきなのかもしれない。
とはいえその歴史には現実のキリスト教会史が巧妙に溶けこんでおり、ローマの迫害、使徒の伝道と殉教、失われた聖槍、世俗権力との対立、異端審問、宗教改革や宗派分裂……と、随所で「ははぁ、これは◯◯のパロディだな」とにやにやさせられることうけあいだ。
後半は世界各地のランケア・サンクトゥムが、現地事情に合わせて活動や教義をどのように変えていったか。Creedについて頻繁に言及されるので、先にp.59〜64 The Creedsを読んだほうがわかりやすいかもしれない。相変わらず日本も中国もインドも東南アジアも十把一絡げの列強植民地扱いだが、とりたてて親日家でもないアメリカ人の認識などまあこんなものなのかもしれない。むしろ『Kindred of the East』のようなアクの強い設定が出てこなかったことにほっとした。
p.50〜はランケア・サンクトゥムの教義解説。二大聖典であるThe Testament of LonguinusとThe Sanguineous Catechismの内容が主だが、聖典自体にどう書いてあるかには一言も触れず、構成や内容や表現の分析という体裁でひたすら間接的な言及にとどめているのが逆に想像をかきたてる。ところどころ矛盾や欠落、現代では古めかしすぎて顧みられない部分、中世とは異なる解釈をとっている部分などの指摘があるのも変にリアルだ。『Rites of the Dragon』の例もあるので今後フィクションとして出版される可能性は考えられるが、このままずっと想像の余地を残しておいてほしい気もする。
p.59 The Creeds〜はCreed各派の紹介。カトリック的正統派のMonachal Creedをはじめキリスト教の宗派を反映したものが中心だが、聖典をイスラム教の文脈で解釈するIblic Creed、ユダヤ教徒をとりこむDammitic Creedといった非キリスト教Creedも登場する。異端Creedの例として、ランケア版聖母崇拝Livian Herecyとクー・クラックス・クランばりのCrimson Cavalryが挙げられている。
p.64 Titles and Offices〜はヒエラルキーと役職の解説。各役職を得るのに最低限必要なCovenant Status (Lancea Sanctum)のドット数が示されていて、誰が誰より偉いのか、どの程度重みのあるポストなのかがわかりやすい。1ドット前後の役職はけっこう多く、またlay position(在俗)といって比較的戒律のゆるやかな地位もあるので、PCへの報酬にしてもおもしろそうだ。後々その役職の仕事をシナリオネタにもできる。
カトリック教会とよく似た階級構造を持つとはいえ、ランケア・サンクトゥムに教皇はいない。汎世界的な組織を作りあげているわけでもない。上下関係は原則として一つの都市内で完結し、ある街の揉め事に「どこかよそにいるもっと偉い奴」が横槍を入れる、という事態を考えなくてもいいよう配慮した設定になっている。そのためランケアにおけるBishopやArchbishop、Cardinalは、カトリックの司教や大司教、枢機卿のイメージとだいぶ異なる点には注意が必要だろう。
p.72 Clan Roles in the Lancea Sanctum〜はランケア内における各Clanの役割。併せてそのClanの血族がランケアに入信する動機や、Creed選びの傾向などにも触れている。
p.77 Lancea Sanctum Ritae〜はランケアが行う大小の儀式(Ritae)。改まったApostolicaと日常的なEcclesiaに大別される。Apostolicaはミサや告解、四旬節といったカトリック由来の儀式が中心で、ときに残酷ながらも抑制の効いた印象だ。参加者にちょっとした特典(Willpower回復、一時的な判定ボーナスなど)を与えるオプションルールもあるが、採用する前にp.78囲み記事の警告は読んでおくべきだろう。レビュー冒頭に引いたThe Hunter's Preyer はEcclesia儀式のひとつで、ランケア信者が狩りにでかける前に呟く祈りだが、たった2行の短さなのでPCの日常のロールプレイにさりげなく織り込んでみたくなる。
p.89 Domain Politics〜はかつてInvictusと並ぶ権勢を誇ったランケアの、現在の権力観について。
Neonate篇(p.96〜)、Ancilla篇(p.115〜)、Elder篇(p.128〜)に分け、各世代の血族がランケアのどこに惹かれて入信するのか、信徒になるとどういう義務や責任があるのか、他の世代にどんな態度で接するか、またそれが歳を経るにつれどのように変化していくかを考察する。
特にプレイヤー・キャラクターになることが多いneonateには20ページも割いて、布教や入信の過程、勧誘に使われる理屈、ランケアにとってneonateが象徴する意味に到るまで徹底的に解説している。これでイメージが湧かないとは言わせない、といわんばかり読み応えある情報量だ。
またancilla、elderについてもその世代ならではの役割を示し、彼らも血族社会の責任ある一員なのだということを改めて実感させてくれる。血族の長老と聞くとどうも「ありあまる暇をかけひきや陰謀に費やしている偏執狂の怪物」というイメージしか浮かばない、という向きには一読を勧めたい。
p.135 Relations with the World of Darkness〜は、他のコヴナント、ワーウルフ、メイジに対するランケアの基本姿勢。
p.144〜166はランケア内部に存在する各faction(党派)の紹介。Creedが人間の宗教でいうカトリックやプロテスタントのくくりだとすると、factionはその中でもさらに原理派、穏健派、改革派、保守派……と細分化された小集団を示すようだ。いささか不穏当な例えを使うなら、イスラム教シーア派の過激派グループ「アラーの鷹」なる集団がいたとしよう。「イスラム教シーア派」の部分がCreed、「過激派グループ『アラーの鷹』」の部分がfactionにあたる。
この章はえらくわかりづらい構成になっている。p.145〜154 Major Factionsに登場するHardliners、Unifiers、Neo-Reformistsは、実はfactionそのものではなく、数あるfactionの思想傾向を5つに分類した「タイプ」のうちの3つだ。3つしかないのにステレオタイプの項には5つ出てくるから混乱するが、残るMendicants、Procelytizersはp.154 Example Factions以降に説明がある。項目名が Mendicants: The Nepheshimというのは、Mendicantsに分類されるfactionの一例として、ここではThe Nepheshimというfactionを紹介しますよ、どうぞSTの叩き台に使ってください、という意味である。p.161のProselytizers: The Messengers of Longinusも同じ。
p.167以降がランケア・サンクトゥムに縁の深い新bloodline(枝族)。神が認めた血族の支配者を自認するIcarians、死の研究にとりつかれた隠者Osites、現代の鞭打ち行者Mortifiers of the Fleshの3つが追加されたが、実はもうひとつ、隠れキャラ的枝族がp.160 Nepheshim as Bloodlineにちらりと出てくる。
p.178〜185が追加Discipline。Icarian用のConstanceは、わずかなVitaeでResolveとWillpowerをはねあげるのでアンバランスに強く見えるが、IcarianはWillpowerがなかなか回復しない欠陥を抱えているので実は収支がつりあっている。Osites用のMement Moriは、幽霊が見えたり死人に口をきかせたりする、V:tMの《死霊術/Necromancy》っぽい能力だ。
Nahdadはp.160の「隠れ枝族」Nepheshim bloodline用。きわめて地味だがサバイバルにはきわめて重宝な術で、断食と放浪を続ける彼らにはぴったりといえよう。
だが最も個性的なのはMortifier用のScorgeだ。
自分を激しく鞭打ち→贖罪してすっきりしたのでWillpower回復
とか、苦痛=負傷ペナルティを肩代わりしたり押しつけたりするとか、この枝族の特徴にこだわりながらもゲーム上ちゃんと利用価値のあるパワーになっている。
p.186〜205はテーベ魔術について。そもそもこれは何なのか、というところから始まって、ゲームシステム上の各能力値との関係、新しい術法の発見や習得といったかなり突っ込んだ話にも触れている。
だが本書で最も有用なページはやはりp.195 Theban Sorcery Overviewだろう。なにげないサマリに見えるが、実はV:tR基本ルールで不明瞭だった記述を書き直した改訂版で、V:tR基本ルールも増刷分からはここの記述に合わせて訂正が入るそうだ。といってもどれが初版でどれが増刷かなんて見た目ではわからないし、そもそも数ページの改訂のために基本ルールを買い直すというのも不経済だから、結局、本書を買うのが建設的ということになる。
どうせV:tR本体と同じ値段だしな。
基本的に汎用NPCとして、STの急場しのぎやNPC作りのたたき台に使われることを想定した作りのようだ。背景設定はQuote(象徴的な台詞)、Background(経歴)、Description(外見)、Storytelling Hints(演出上の要点)が簡潔に書かれているのみ。そのぶん大司教から異端者から少数派Creedの信者まで幅広くカバーしている。『WoD: Antagonists』や『Hunting Ground: Rockies』の、背景設定だけでご飯3杯、もといシナリオ3本は書けそうな個性派NPCもいいが、こちらは別の意味で実用性が高そうだ。
表紙の凝ったデザインがひときわ目を惹く。胸に血で十字架を描いた裸の男が両腕を高々と差し上げている絵の、指の部分がタイトルロゴの隅に微妙に重なっていて、つや消し加工の指とつや出し加工のロゴの対比が絶妙な立体感を生んでいるのだ。他にもWorld of Darknessロゴの背景にLanceaのシンボルマークの一部が薄く敷き詰められていたり、Vampireロゴの色が鮮やかな朱に変えてあったり、背表紙下にcovenantマークが小さくあしらわれていたり、と細部まで神経が行き届いている。
挿絵は画風がかなりばらばらで好き嫌いのわかれるところ。
もしあなたが、以下にひとつでも思いあたることがあるなら、悪いことはいわない、とりあえず買っておいたほうがいい。
こうした需要に応える「ツールボックス」が本書である。膨大な設定のバリエーションが用意されているが、都合の良い部分だけ引き抜いてきて使っても破綻が生じないようになっているし、そもそもそういう使い方を想定して作られている。
ひとつの物を作るのに、道具箱の道具を全部使う必要はない。これはV:tRの元ディベロッパーJustin Achilliも、現ディベロッパーWill Hindmarchも、繰り返し述べていることだ。
だから、総計220ページのかなり分厚いサプリメントとはいえ、全部読まないと使えない、なんてことはない。とりあえず興味のある章節だけ拾い読みするのもありだろう。率直に言って読みにくい部分もあることだし。
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本書は『Werewolf: The Forsaken』(以下W:tF)のサプリメント第1弾で、米国コロラド州のデンバー市を中心としたロッキー山脈地方を舞台にゲームをするための地域設定資料集だ。
正確にいえば、ロッキー地方の設定と主要NPCの一部はすでにW:tF巻末に掲載されているので、本書の設定はそれを拡張する形になる。
『Werewolf: The Forsaken』310ページに登場するサンプルキャラクター、Moriartyを主人公に据えた短編小説。女ヴァンパイアにこてんぱんに叩きのめされる話なのだが、敗北を美化せず、情け容赦なく、惨めに描き出しているあたり、ある意味「滅びの美学」のゲームだったWerewolf: The Apocalypseとは違うのだなあと感慨深い。
叩きのめされるか叩きのめすかの違いはあるが、お蔵入りしてしまったW:tF小説『Heart of The Hunter』で最初に登場する敵役も女ヴァンパイアだったから、正直なところ「またか」という感は否めない。W:tFにはせっかくAzluやBeshiluといった独自の敵役がいるのだから、そちらが登場する話を読みたいものだ。
ストーリーはMoriartyが瀕死の重傷を負う場面で終わっており、不吉な未来を暗示しながらも結末ははっきり描かれない。これはMoriartyをPCやNPCとして利用しようとするユーザーをメタプロットで束縛しないための配慮だろう。あえて以後の展開を読者の想像にゆだねることによって、この短編はストーリーフックとしても利用できる「二度美味しい」仕掛けになっている。
見開き2ページのみの潔い前置き。WoDサプリメント冒頭の「いつものやつ」、すなわち章別の概要・本書のテーマ&ムード・参考資料が載っている。必要な情報がページをめくらずに手に入る簡潔さはかなり快感。WoDサプリメントで「あれはどのへんに載ってたっけ?」と探すとき、目次や索引をあたるよりHow To Use This Bookセクションの各章概要を見るほうが往々にして効率的だからだ。
p.11 Useful Resourceが参考資料リストだが、書籍のほかWebサイトがいくつか挙がっている。年々変化する街の最新事情をとらえるには確かに早くて安上がりだし、市や観光当局、大学の公式サイトなど比較的信頼性の高いソースが厳選されているのはうれしい。
ちなみに・Native American Resources:のいちばん最初、http://www.colorado.edu/csilw/arapahoproject/ は、今年3月にhttp://www.colorado.edu/csilw/newarapproj2.htmに移転している。
p.14〜20はデンバー市を中心としたコロラド地方の略史。メタプロットを排したWoD2.0世界では無味乾燥な章になるのではと心配していたが、蓋を開けてみればなかなかどうしてネタの宝庫だ。各時代の主要な史実をとりあげて「実はワーウルフの仕業であった」と強引にこじつけるのではなく、「そういう時代だったのでワーウルフたちはこんなことをした」という描き方にはとても好感が持てる。設定に無理がないうえ、このゲーム世界の主人公はワーウルフだということが素直に伝わってくるのだ。またp.15 War with the Utesでは先住民Uratha対入植者Urathaの抗争に触れつつも、「Urathaには同族を犠牲にしてまで人間を守る義理はない」「イデオロギーではなくテリトリーをめぐる争いであった」と明言しているあたり、tribeに民族色を持ちこまない毅然たる姿勢が感じられる。
W:tAのような神話や伝説への言及は皆無なのでガルゥ愛好家には物足りないかもしれない。ただW:tAが現代より神話時代の描写に詳しいのとは対照的に、この略史は現代へ近づくほど詳細になり、コロラドの現状に多大な影響を及ぼしたGurdilag討伐戦にもっとも紙数を割いている。そのため、過去から現在まで6ページ半と、記憶力と疲れ目と慌てるSTの負担にならない優しい分量でありながら、ただの読み物に終わらない資料価値を持っている。
さらに囲み記事として各時代を題材としたストーリーフックが登場する。どれも過去の因果が現代に報い……という話なので、これらを使うだけのために「Stone Ages: Werewolf」だの「Uratha: Wild West」だのをひねり出す手間もいらない。もちろん手間をいとわないSTならここの記述をもとに過去の時代を舞台にしたゲームをやっても面白いだろう。個人的にはp.15 War on Wolvesあたりのシナリオ化に挑戦してみたい。
p.20 Points of Entry〜p.25 The Wolf-Bloodedは、PCを本書の設定に導入するためのST向けのガイドラインだ。最初の変身を迎えたUrathaが、地元のワーウルフにどう扱われ、どのようにして各tribeに参入し、パックを組み、なわばりを確保し、一人前にやっていくのかが詳しく説明されている。とりあえず基本ルールで作りたてのPCで、デンバーを舞台にキャンペーンをやってみようと考えている人は必読。
p.25〜29 Geographyがコロラドの地理の解説、というか、ワーウルフにとっての重要スポットの紹介。ワーウルフにとっての暮らしやすさやテリトリー価値についての解説が主体で、地理や風土に関する基本情報は概説すらない。そういうものは観光ガイドなり地図なりWebサイトなりで最新情報をあたってくれ、ということらしい。ちょっとした観光ガイド並みの詳しさを誇った『Chicago by Night』などを記憶する身には寂しいかぎりだが、現実の情報は風化することを考えれば合理的だろう。
ここにはコロラドならではの風物に関するシナリオフックが6種類登場するが、デンバーで一番人気のテリトリーの領有権を争う天下一武道会風の Contendersには笑ってしまった。
本書の目玉、コロラド地方にテリトリーを構えるパックの大紹介。11のパック、44人のForsaken、10箇所のlocus、10体のパック・トーテム、すべてNPCとしてもPCとしても使える完全なデータつき。PCたちのパックが新規参入する余地もむろん用意されている。
各パックは他のパックに対してきちんと自分の意見を持っており、金や義理やイデオロギーで互いに協力しているところもある。といっても全部が全部つながっているわけではないので、一部だけ登場させても大丈夫だ。11種類も出したって把握できないよと思った人もご安心あれ。
さらには全パックに2通りずつのシナリオフックが用意され、敵として登場する場合と味方として登場する場合でがらりと異なる顔を見せてくれる。もう食べられませんおなかいっぱいです。
そうそうたる頭数を揃えながらどれひとつとして似通った設定がなく、パックごと、個人ごと、locusごと、トーテムごとに豊かな個性を持っているのが恐ろしい。いやはや、まったく、よくもまあ、これだけ多彩な設定をひねりだしたものだ。
惜しむらくは、『Werewolf: The Forsaken』巻末に掲載されたキャラクターが再録されていないため、一つのパック全員のデータを見比べようと思うとWtFと本書両方を行ったり来たりしなければならないことか。
コロラド地方のShadow Realm側の情勢を解説する。精霊界側にどんな精霊の勢力が存在し、何を企み、どのように活動しているか、またその結果物質界へいかなる影響を及ぼしているか、という話が主体だ。欲をいえば、精霊界側がUrathaの目にはどう見えているのか、といった五感に訴える具体的描写があればありがたかったのだが……多彩なシナリオフックと敵役精霊のアイデアを提供してくれるだけでもよしとすべきだろう。
p.74 Urban Warfare〜p.85 On the Roadまでが市街地篇。デンバーのGurdilag戦争の経緯が精霊界の視点から語られる。p.16 Gurdilag〜p.20 The Presentと対になる内容なので、併せて読むと事件の全貌が見えてくる。すでにGurdilagは滅び戦争は過去のものとなっているが、禍根はハイブリッド精霊や心を壊されたUrathaといった形でいまも各地に残り、PCたちには手強い獲物、STには手頃なネタを提供してくれる。デンバー近郊の都市にも短い言及があり、特にボールダーの話は興味深い。争いもなく宿敵も寄りつかず、完璧すぎるほど平和な街——その裏に隠された理由(p.82)ときたら、まったくもって胸糞が悪くなる。
p.85 Wild Places〜p.93 Shadow World Tearsまでが野外篇。精霊界側でとくに興味深い場所や特殊な精霊種などを紹介する。やはり大自然に属するせいだろうか、神話や民間伝承的な匂いを漂わせているあたり、どことなくW:tAを彷彿として心和む。露骨なオマージュこそないが、Devil's Towerや人食い精霊など、WtAに登場したキーワードが随所に顔を出すのでマニアとしてはにやにやしてしまう。
p.85 Yellowstoneの、精霊The Lord of the PlainsとUrathaとの壮絶なかけひき、そしてバイソン生息数の増減にまつわる物語は、いろいろな意味でWtA以上にWtA的だ。
精霊以外の敵を集めた章。Pure Tribe、Bale Hound、Host、ワーウルフ・ハンターといった定番のほか、Gurdilagに心身を変異させられたミュータント・ワーウルフであるSu'ur、人間のGhostと人狼のGhost Childが融合した唯一無二の怪物The Bastard Son、ネクサス・クロウラーならぬNeighborhood Prowlerなどといったデンバー固有のモンスターも登場。おそらく都市ソースブックごとにこういった「ご当地モンスター」が載るのだろう。今後が楽しみだ。
すべてのモンスターにストーリーフックが付属し、背景設定も丹念に書き込まれていて想像をかきたてる。とりわけSu'urの「トーテム」には敵ながらほろりとさせられる。他の敵役もそれぞれに動機や思惑や理想をもってPCの前にたちふさがるのだが、「わけありの敵」にありがちな、同情を引こうとする下心が見え見えの設定がないので、PLとしても気持ちよく闘え、倒したときには充実感を感じられるにちがいない。
なにげないようでありがたいのは、Pure Tribe2パック、Su'urは1パック、それぞれトーテムも含めてメンバー全員の完全なデータが提供されていること。1体でもキャラクターを作ってみればわかることだが、パックを丸ごと一から作るのはなかなか骨が折れるのだ。
p.124 Tribal Affairs〜p.125 Storm Warningsはtribe間の対立、p.125 Spirit Matters〜p.128 The Riddenは精霊とのつきあいについて、p.128 Urban Legends〜p.130 Ski Resortsは都市伝説をシナリオに取り入れる手法について。
特に精霊とのつきあいに関する数節は、精霊をシナリオに登場させる際、「Urathaはこんなとき精霊をどう扱うのが普通なんだろう?」という様々な疑問に答えてくれる。むろんプレイヤーがそういうロールプレイをしなければならないと言っているわけではないが、STがシナリオを組む際にPCの出方を想定したり、W:tFの経験が少ないプレイヤーを誘導したりするには便利だろう。そういう意味ではPLの参考資料にもなる。
p.130〜141 Stalking Diseaseは1幕3場もののショートシナリオだ。一見しただけでは気づかないぐらい地味な扱いだが、作りはけっこう、いやかなり、いやたいへんに、丁寧だ。
WtA時代のWoD既成シナリオというとバグだらけだったり、後半はSTに丸投げの不親切構造だったり、そんなの判るわけないだろうと叫びたくなるほどシビアな一本道構造があるかと思えば、既存の世界設定を破壊しかねない無茶なボスが大活躍したり、と、どうもいい思い出がないのだが、 Stalking Diseaseはとても同じ会社が作ったとは思えないほど「きちんとしている」のである。
謎解きタイプのオーソドックスな内容で、とくにこのシナリオ専用にキャラクターを作らなくとも既存のキャラクターで始められるよういくつか導入パターンが用意されている。またWoDズレしたベテランプレイヤー対策、謎解きのテンションを維持するためのアドバイスなど、STへの配慮も怠りない。NPCとしてまたまた1パック分のキャラクターがトーテム付きの完全データで提供されているので、これだけ引っこ抜いてきてプレロールドPCにしたり、まったく違うシナリオを作ってしまうのも楽だろう。
個人的に好感をもったのは、ミッション達成した場合にPCが物質的見返り(ただし金銭ではない)を得られること。どうもWoDでは金や物の話をするのは無粋という雰囲気があったのだが、達成感だけでなく手ごたえのある報酬をかちとるというのは決して悪いことじゃない、そう思った。
なんといってもWilliam O'Connor描く表紙の美しさは特筆すべきだろう。雪に覆われた夜明けの山嶺でUrathaたちが血みどろの死闘を繰り広げているのだが、その背後で明るむ空の清澄な青さは見るたびに心洗われる思いがする。アマゾンから届いた箱を開けて初めて実物と対面したときには、おもわず裏表紙の朝日を拝みたくなってしまったぐらいだ。
本文中のイラストは、点数こそ少なめだが、画風の似通ったものを厳選しているようで、全体的に統一されたイメージを醸し出している。
なんとも惜しいのは見返しの地図があまりに、あまりに、あまりに大ざっぱなことだろう。なにしろ見渡すかぎりの山の中にぽつぽつと本文に登場する都市が丸印で示されているだけで、道路はおろか州境さえ示されていないのだ。たしかに地図はインターネットを見ろと書いてあるし州境がゲーム中に問題になることはまずないだろうが、これはさすがに簡潔にしすぎ。
W:tFにかぎらずWoDで困るのは、何でもやっていいと言われるとかえって何をやったらいいか困ってしまうことだ。W:tAはまだ長年蓄積された設定からインスピレーションを得ることもできたが、W:tFはまだ基本ルールが出たばかりで「これってアリなのかな?」と迷う人もいるだろう。
むろん何でもありの融通の高さがTRPGの身上とはいえ、フランス料理を出されればフランス料理らしく、日本料理が出れば日本料理らしく、恰好つけて粋な食い方をしてみたいと思うのも人情ではないか。
『Hunting Ground: The Rockies』が提供してくれるのは、いわばそういう「WtFの粋な食い方」である。型から入れというように、まずは付属シナリオをそのまま遊んでみるもよし、本文中のシナリオフックや敵データを使ってシナリオを作ってみるのもよし。俺は猿まねなどしないんだという御仁でも、バリエーション豊かな設定は自作シナリオを考えるのに絶好のたたき台になるだろう。
その多様性こそが最大の美点といってもいいかもしれない。WtAに長く親しんでいたり、基本ルールの概説を斜め読みしただけで済ませていると、とかく「これはこういうものだから」と決めつけがちだが、本書は出てくるlocusひとつとっても、最新鋭機器でいっぱいの基地あり街角の古本屋あり、うち捨てられた廃トレーラーありはたまた山奥の一本の木あり、ページを繰るごとに「ああ、こんなのがあってもいいんだ」と肩の凝る固定観念がほぐれていく。
逆にW:tAはやったことないがW:tFには興味がある、とりあえず遊んでみたいがどこから手を付けていいかわからない、という向きは、本書を見れば舞台設定からキャラクターから敵データからシナリオまで、すぐに遊べる素材がひととおり何でも揃う。できあいの素材にはちがいないが、本書の素材は下ごしらえに一切手抜きがない。
そのまま使えるしアレンジも楽しい、11のパック、44人のForsaken、10箇所のlocus、10体のパック・トーテム、3つの敵パック+6種類のモンスター、3つの都市設定とシナリオ1本——とどめに
65本のシナリオアイデア。
これがAmazon価格にして2600円弱で手に入ると思えば、コストパフォーマンスは相当に高い。飲み会1回控えても買う価値は充分にあるのではないか。
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» World of Darkness: Antagonists
届きました。リアルタイム更新はじめるよ。
まずW:tF、M:tF情報を楽しみにしていた人には残念なお知らせが。
本書にワーウルフは登場する。メイジも、登場する。しかし、具体的データは載っていない。
だがそれでも、本書にはV:tR、W:tF、M:tAwいずれにも有益な内容が詰まっている。Mattが発売に先立ち語っていたとおり「ストーリーテラーだけでなくプレイヤーにも役立つ本」に仕上がっていることはたしかだ。
その理由をこれから紹介しよう。
【Antagonistsとは】
Your antagonist is someone who you are having a contest, fight, or quarrel with.- コウビルド英語辞典
ひとことでいうと「敵役」だ。古典的なホラー小説やTRPGは、おおむね人間社会に適応して生きている主人公から見て、そのモラルや常識を超越したモンスターの脅威を描くものが多い。その視点を180度変えモンスターを主人公に据えてしまったのがWorld of DarknessというTRPGシリーズなわけで、2.0になって「やっぱり人間を主人公にWoDがやりたい」という遊び方がコアルールでサポートされるようになったとはいえ、『Vampire: The Requiem』などモンスター・ルールブックを使うときの基本路線は1.0時代と変わらない。
しかし、古典的ホラーで敵役だったモンスターが主人公になってしまったら、誰が敵役をすればいいんだろう?
その「誰が」を作るための道具箱を提供するのが『World of Darkness: Antagonists』だ。
ヴァンパイア、ワーウルフ、メイジ、人間——どの種族をプレイヤー・キャラクターに選んでも、本書があれば敵には困らない。
【Chapter One: The Living Dead】
WoD2.0にliving dead(アンデッド)を登場させるためのデータとルールを24ページにわたって掲載。巻頭小説もこの章関連のテーマなので、事実上の本書の目玉だ。ゾンビが出る出るとは発売前から言われていたが、ゾンビだけでなく5種類のアンデッド系モンスターが「living dead」という総称で紹介されている。
ヴァンパイアについての解説は完全に『Vampire: The Requiem』へ譲る形になったので、敵役としてだけヴァンパイアを出したいSTには残念だが、フランケンシュタインが扱えるのはすばらしい。WoD1.0ではゴシックホラーを意識した世界観を展開ながらも結局フランケンシュタインの怪物を大きく扱ったルールは登場しなかったからだ。
《Zombies》
能力値はPower、 Finesse、Resilienceの3種類に簡略化されたNPC仕様で、ghostとおなじくSkillはなし。NPCとして使用されることが前提になっているようだ。
zombiesの作成システムの柔軟さは特筆すべきだろう。Aspect(特性)とWeaknesses(弱点)を自由に組み合わせることにより、ロメロの古典的ゾンビからバイオハザード的ゾンビまで幅広く再現できる。Aspects/Weaknesses一覧は、「このゾンビに殺された人間はゾンビになる」「生前愛していた人だけは攻撃できない」など勘所を外さない品揃えだ。
zombiesにはゾンビ・テンプレートとでも呼ぶべき基本能力値が用意されており、これにCreation Pointsを消費してAttributesを上昇させたり、Aspectsを追加したりしてキャラクターを作成する(Weaknessesを取得すればそのぶんCreation Pointsが浮く。WoD1.0における〈自由割振点/Freebie Points〉と似たようなものだと思えばいい)。使用したCreation Pointsの量が強さの目安になるわけだ。大群で登場させる場合のことも考慮されており、出現数に応じてCreation Pointの上限下限が設定されている。たとえばメイジが魔法でゾンビを作るような場合などに「強力なゾンビを数体」「弱いが墓場を埋めつくすほどのゾンビの大群」といった選択の幅ができるわけだ。
個人的に、1000体以上のゾンビを出現させる状況がルールでフォローされているのがとてもうれしかった。「もしSTが気に入らなければ、以下は自由に変えてかまわない」というお題目を100回書かれるより、チャートに一行「出現数が1000体以上の場合」とひっそり書かれているほうがいい。実際にゲームで使うことはまずないだろうが、こういうこともやっていいんだよ、とシステムレベルで可能性を示唆してくれるのは大歓迎だ。
また、大笑いしつつ感心させられたのはzombiesだけが持つ特性値「Physical Integrity」。下品な直訳をするなら「五体満足度」になるだろうか。この特性値は作りたての時点で10あり、手足その他が失われていくにつれ不可逆的に減少していく。Physical Integrityはzombiesが判定に使えるダイスプールの上限値となり、また、作られてから日数が経つにつれて強制的に減らされていくので、ゾンビが徐々に腐って使い物にならなくなるさまがルール上にも反映されるのだ。
データやルールだけでなく、WWお得意の蘊蓄も盛り込まれている。ひとくちにゾンビといってもどんな種類のものが知られていて、どんな原因で生まれるのか、どのへんがゾンビの怖いところなのか、といった内容だ。本文中にも参考資料はあがっているが、p.17にも詳しい。
《Imbued》
Hunter: The Reckoningをやる人にはまぎらわしいかぎりだが、WoD2.0におけるimbuedの定義は「死んだ人間ないし動物の死体を組み合わせて造った肉体に生命が吹きこまれたもの」である。要するにフランケンだ。もっとも顔がつぎはぎ細工である必要はないし、部品としてなら電子機器やマジックアイテムを組み込んでもかまわないようなので、一種のサイボーグや使い魔的なキャラクターもこの部類に含められそうではある。もっとも、「つぎはぎ死体が生き返る」「怪物の身体に無垢な魂」というコンセプトが強調されているあたり、やはり基本はフランケンシュタインの怪物と考えておくのが無難だろう。
imbuedの特性値はプレイヤー・キャラクターとおなじAttributes 9種類のフル表記。Skillも場合によっては持てるので、PCとして使用できないこともない。しかし、コンセプト上Intelligenceを高くすることが推奨されていないので、imbued PCの人数によってはSTに相当な頭痛を引き起こす可能性がある。
特殊能力はSupernatural Powersリストの中からコンセプトに応じて取捨選択するシステム。本書に登場する「敵役」が持つ超常能力はzombies以外すべてこの書式が採用されている。各能力のルールはすべて登場したページに書いてあるので、本をあちこちめくらなくていいのはありがたいが、今後種類が増えたときに重複や矛盾が発生しやすそうでちょっと気にかかる。
《Revenants/Intruders》
死者の霊が自分の死体に取り憑いて動かしているもの。WoDコアのghostが持つNumina: Possession(憑依能力)とまぎらわしいが、死んでいる人間にとり憑くあたりが違い。原因については現世への執着をはじめ4種類が具体的なキャラクターアイデアとともに提示されている。
能力値9種類のフル表記で、SkillやMeritも生前のものが使える。revenant固有の特性値であるEssenceを消費すれば、死霊としてNumina能力をふるうことも可能だ。もっともEssenceはrevenantの存在を維持するだけで消耗していくので、補充しないとあっという間に自滅してしまう。
興味深いのはEssenceの補充方法だ。
Wraithファンのみなさん、萌えどころですよ。
revenantはVirtue/Viceを持たないかわり、最大3つの「現世へ執着する理由」=Passionを持つことができる。自分を殺した犯人に復讐するとか、生前やりかけた研究を完成させるとかいったものだ。このPassionを幾分なりとも満たす行動をとれば、その満足度に応じた量のEssenceを回復できる。
Wraith: The OblivionのWraithが持つPassionとそっくりなのだ。
revenantの存在条件はかなり厳しいが、living deadの中では最も人間に近いので、墓場から蘇ったPCが復讐する『The Crow』ばりのセッションも夢ではない。
《Sample Characters》
zombies2種類、imbued1体, revenant1体, intruders1体。どれも背景がしっかり設定されており、これだけでもシナリオソースにできる充実ぶり。残念なのは、本文にも背景情報が掲載されているのにキャラクターデータではその点に言及されていないことぐらいか。
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届きはしたのだが今帰ってきたところなので読んでいる余裕がない。
読みながら更新しますのでしばらくこのエントリは内容が変わりますよ。
ちなみにworldofdarkness.comのFlashがWoD: Ghost Storiesのものになっています。
【相変わらず繊細な表紙】
表紙はWoDコアルールやV:tRと同じつや消し加工で、「Ghost Stories」「the World of Darkness」というロゴだけがつや有り加工。早々にカバーを作らないとひっかき傷がつきそうで怖い。全体に渋い紫っぽい落ちついたトーンで、Webの表紙写真よりは緑色はかなり抑えた感じ。厚みはWoDコアの半分ぐらい。
裏表紙のイラストは本文の使い回しのようだが、繊細な画風のイラストレーターが使われていて個人的には気に入った。ただ、木の枝から首吊りがぶらぶらぶら下がっている絵なんかがあるので、その手の趣味を介さない家族や友人や恋人に見せるにははばかりがあるかもしれない。といってもレイスほど怖くはないですが。
【Prologue: Clutch】
White Wolfの公式メーリングリストで公開されたのはここの冒頭だったようだ。ページレイアウトにはやたらと気合いが入っている。余白に気持ち悪い写真やイラストをべたべた貼りまくるデザインはKult第3版のプレイヤーズガイドを彷彿とする(もっともこちらにはゴキブリはいないが)。
とにかく痛そうな話ではある。あと、エックハルトの引用なんかでえらく高尚にはじまるので翻訳する人は大変そうだ。
【クレジットの新趣向】
p.10のクレジットページの右上に、WoDコアの表紙写真と「For use with the World of Darkness Rulebook」というキャプションが入り、WoDコアがないと遊べない本であることがわかりやすく示された。
もっとも『Coteries』を見たらそんなものはなかった。こんなところぐらいフォーマットは統一すればいいのに……
【Introduction】
White Wolf Onlineでサンプルとしてp.12〜21がPDF形式で無料公開されています。
前口上、本書の構成、幽霊譚のストーリーテリングについての考察。
ネタの立て方からキャラクターとの絡ませ方までいろいろ蘊蓄を垂れているのでWoD2.0でモータルPCセッションをやりたいSTには一読の価値があるかもしれない。
章末はGhost関連のルールのサマリ4ページ。WoDコアからの文字通りの抜き書きで、Ghost独特の特性値表記法、Anchorに関するルール、物質界への出現や意思疎通の方法がごく簡単に要約されているのみ。残り2ページは4種類のGhostデータの再録だ。Numinaの細かい説明などはWoDコアを参照しなければならない。本文中に登場する新NuminaのデータをまとめていたりNumina一覧表が添えられてたりすればもっとありがたかったのだが。
【Chapter 1: Dust to Dust】
章内の構成は以下のようになっている。
このシナリオは、舞台となるエリアをPCたちがある程度自由に歩き回りながら進めていく、いわゆる箱庭型のシナリオのようだ。V:tRデモシナリオのようにSTが読みあげる状況描写文まで用意する親切設計ではないが、旧WoDによくあった「シナリオアイデアだけ書いてなげっぱなし」というパターンでもなくて一安心。
p.36に追加Numinaのデータがある。またp.47に汎用性の高い追加動物データがあり、V:tRやW:tFでも流用できそうだ。
この手の追加データがひっそり全編にちらばっているようなので、総索引作ると便利かも。
【Chapter 2: The Terrifying Tale of James Magnus】
参考資料として『ブレア・ウィッチ・プロジェクト』や『シャイニング』が上がってます。舞台となる地方についてはかなり実用的な(警察や消防、事件があったときの当局の標準対応など)設定が書いてあってありがたい。
非常にオーソドックスな幽霊ものシナリオで、読んでいると無性にディテールや演出を考えたくなってしまう。ストーリーもわかりやすいので、他のホラーTRPG経験者をWoD2.0に引きこむ際の入門シナリオに良さそうだ。
【Chapter 3: No Way Out】
複数の箇所を頻繁に行き来する進行になるようで、地図などを用意しておくのがよさそうだ。追加データはなし。オチが凄いが、シナリオの進め方によっては補足説明をしないとウケないかも。
【Chapter 4: Roots and Branches】
ActとSceneにきっちり分けられ、それぞれのシーンでの登場人物も冒頭に明記してある、シナリオ作者の几帳面な人柄がうかがえる構成。過去の怨念とか歴史の闇とかいうキーワードに弱い人に好かれそうだ。敵がかなり強め。
【Chapter 5: Holy Ghost】
ストリートが舞台になる。宗教もすこし絡んでくるが、まあそれほど説明は必要ないだろう。WoDコアの対幽霊ルールをフルに使う可能性があるので、STはルールの予習を欠かさないこと。
【索引】
NPC一覧とか特殊Numina索引なんて親切なものはありません。自分で作るしかない。WoD2.0になっても読者を甘やかさない姿勢は健在のようです。
【巻末広告】
『WoD: Antagonists』でした。
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