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骰子回転劇場 日記

レビュー『Requiem Chronicler's Guide』

Amazonで買う2006年発売の製品だが、リクエストをいただいたので遅まきながらご紹介。

V:tR用クロニクルガイド

Vamppire: The Requiem は同じキャラクターで多くのシナリオを経験するほど面白くなるゲームだ。本書は複数のシナリオの筋をつなげたクロニクル(いわゆるキャンペーンシナリオ)の作り方や進め方を解説するストーリーテラー向けの手引き。サンプルアイデアや使い回しのきく汎用NPC集も収録されている。

クロニクルを退屈させないために多数のシナリオバリエーションが紹介されており、目先を変えたシナリオをやってみたい人にもおすすめできる。

Chapter One: Designing A Chronicle

クロニクル作成法。単発シナリオの作り方はV:tR基本ルール第4章に詳しいので、ここではどんなシナリオをどう組み合わせていけばクロニクルに一貫した筋を持たせられるかを説明している。

目先を変えたシナリオをやりたいだけなら、本章はとばしてChapter Two から読んでいってもさしつかえない。

Chapter Two: Chronicles

クロニクルの構想18種類。黒帯の見出しは「こんな風に話を広げていけばおもしろいんじゃない?」という大まかな提案、灰色見出しは直前の提案に基づいて作られたサンプルクロニクル設定。黒帯見出しごとに独立した読み切り記事になっているので、通して読む必要はない。pp.10-11の記事一覧を見て面白そうなところだけ拾い読みすればいい。

前述したように、この章はシナリオに変化を付けるヒント集にもなる。大きく分けてプレイヤーの取り組み方を変えるもの、キャラクターの環境を変えるもの、ゲームシステム自体を改造してしまうもの、と3種類ある。

Chapter Three: Antagonists

PCと対立する敵役を魅力的に見せる作成や演出のコツ。章末は使い回しの利く汎用NPCデータ集。人間の科学者や弁護士などのほか、「一般的な」ヴァンパイアを何パターンか収録する。

いつも誰かの依頼からシナリオを始めてしまうSTに

本書はV:tRの新しいプレイスタイルを提案するヒント集だ。「気がつけば最近、似たような筋のシナリオばかり作っている」「温めているネタはあるけど、1セッションでおさまりそうにない」そんなストーリーテラーにはうってつけといえよう。「PCをこういう状況に置いてみるのはどう?」「ゲームシステムのこのへん、使わないなら取っ払っちゃったら?」などと斬新な切り口を見せてくれる。シナリオの方向性というTRPGの根本的な部分を扱っているだけに、V:tRだけでなくWoDシリーズ全般に応用がきく部分も多い。

参考:Chapter Two 収録アイデア一覧

  1. Becoming a Vampire(抱擁直後の数日間を演じる)
  2. Damnation(許されない罪を犯して堕ちていく)
  3. The Clanless(氏族抜きで遊ぶためのルール改造)
  4. Vampire Familia(PC全員同じ血族の子孫)
  5. Generational(PCは他PCの子)
  6. The Other(もしも〈獣〉に自我があったら)
  7. Vampire Kings(権力の頂点に立ってみる)
  8. The Political, The Personal(政治駆け引きで理想を実現する)
  9. Procedual(プロ集団として任務を果たす)
  10. Operatic(演劇風にお約束プレイを楽しむ)
  11. Espionage(身分を偽って潜入する)
  12. War Stories(戦場に生きてみる)
  13. Hunter's Hunted(人間たちから逃げ回る)
  14. Bottle Chronicle(厳重な監禁から脱走する)
  15. Isolated(PC以外の血族がいない)
  16. Transcendence(人間に戻ることをめざす)
  17. Solo(プレイヤー1人しかいないとき)
  18. Monster Garage(限界まで削ぎ落とした簡易ルール)

書誌情報

ストック・ナンバー:25302
発売日:2006年3月3日
ページ数:192ページ
通販リンク:
White Wolf オンラインカタログ
Amazon日本
Amazon米国
DriveThruRPG.com(PDF版)

レビュー『World of Darkness: Urban Legends』

Amazonで買う

これは何の本?

World of Darkness汎用シナリオソース集。都市伝説を題材にした半完成シナリオ5本とシナリオアイデア9本を収録。それぞれ物語の展開や真相が数パターン用意されており、STの好みやPCの傾向に合わせて細部を組み立てていく。

アメリカの都市伝説をとりあげているが、日本や他の国の類似した伝説に置き換えるのはたやすい。どのシナリオソースも「伝説の真相」にひとひねり加えてあるので、プレイヤーが元ネタを知っていても興ざめどころか、むしろ知っていることがおおいに推奨される。

調査・謎解きが主体となるシナリオがほとんどで、結末に行きつくためにはプレイヤー同士の協調が求められる。情報収集をしていけば、プレイヤー自身が推理力を発揮しなくても謎は解ける仕掛けになっているので安心。

【注意:以下の文章ではシナリオの内容に触れています。プレイヤーが読んでも支障がない範囲にとどめていますが、気になる方はChapter〜を飛ばして「こんな人におすすめ」以降をお読みください。】

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twitterはじめました

新WoDのサプリメントが出る度にいちおう目は通しているのだが、これを他人様に見せられる形のレビューに仕立てるのが結構面倒で、読みながらIRCの#wod-jpに感想を実況中継で垂れ流して済ませているのが現状である。

「今、自分が何をしているか」をちょこちょこ書きつづるだけのゆるいソーシャルツール twitter が流行りと聞いたので、実験的に読書感想を垂れ流してみることにする。いちおうRSSもとれるようだし、twitterを試しに遊んでみたい人は友達登録もどうぞご自由に。

レビュー 『Chicago Workings』

Chicago Workings とは?

PCの近所に越してきた新しい隣人。それは風水師ふたりが半世紀あまり繰り広げてきた暗闘の、最終決戦の幕開けだった。シカゴすべてを巻きこむ魔術戦争の行く末は、PCたちの手に……。

『Chicago Workings』はワールド・オブ・ダークネスを背景世界とし、ストーリーテリング・システムで遊ぶための、一話完結シナリオだ。プレイヤー・キャラクターが人間/mortal という前提で作られているため、『ワールド・オブ・ダークネス』基本ルールさえあればプレイできる(ただし『Chicago Workings』は英語版)。

難易度と傾向

消費経験点0〜34点のキャラクター向きで、難しい謎解きはほとんどなく、高い戦闘力や交渉力も必要としない。作りたてのキャラクターや、WoDに不慣れなプレイヤーに適している。人数指定はないが、4人前後が適当だと思う。

舞台設定

アメリカ合衆国、シカゴ市。予備知識は必須ではないが、実在の地名や建物が関わってくる。地図や旅行ガイドを見せながら状況描写するとイメージの食い違いを防げるかも。

プレイヤー・キャラクターの前提

特定の技能や能力がないと行き詰まるという心配はない。そのためコンベなど「どんなキャラクターが来るか当日までわからない」セッションに向いている。ただ、PCが離れて暮らしていると導入が面倒なので、同じアパートに住んでいる、または家が隣同士という設定でキャラ作成してもらうのが無難だろう。

WoDの一般人が現実の人間と同じぐらい超常現象を信じていないという点は、はっきりさせておいたほうが、起承転結が引き立つ。

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SASに秘められた、遊びやすさ向上の3つの仕掛け

先日発売された WoD単発シナリオシリーズ「Storytelling Adventure System (SAS)」には、STが読みやすく遊びやすいように、様々な新しい仕掛けがほどこされているようだ(→解説原文(ページ最後))。

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レビュー『Territories』


表紙イメージ

これは何の本?

W:tF のワーウルフは、パックを組み、テリトリー(縄張り)を持っているのが一般的だ。なぜテリトリーを欲しがるのか、どうやって獲得するのか、維持にはどんな苦労があるか、については基本ルールブック p.45〜53に詳しい。しかしこれらの事柄は、基本ルールではゲームシステム上なんら影響を及ぼさなかった。本書はテリトリーの獲得・維持・向上を、ロールプレイの課題としてだけでなく、ゲームとしても楽しめるようにする拡張ルールブックである。ディベロッパー曰く「シムシティというか、シムテリトリー」。

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レビュー『City of the Damned: New Orleans』

これは何の本?

本書は『Vampire: The Requiem』の都市設定資料集で、米国ルイジアナ州のニューオーリンズ市をとりあげる。この街はV:tRの「デフォルト」舞台設定であり、基本ルールにも地理や歴史、勢力図、主要NPCといった最低限の情報が収録されてすぐに遊べるようになっている。

本書はその基本設定をさらに掘り下げ、これまで語られなかった水面下の陰謀、隠れた真相、さらなる謎、各NPCの内情や思惑といった追加情報と、それを使ったシナリオアイデアを提供する。サンプルシナリオが1本付属する。

Prelude: Coming Storm

まだ血族になったばかりの主人公が、人間時代への感傷から思わぬ大事件に巻きこまれる。読者を主人公に見立てて二人称で語りかけるという異色の幕開けだ。いきなりニューオーリンズ在住の幼童にされてしまうのも妙な気分だが、実はこれには理由がある( Appendix の項で後述)。

Introduction

「本書のNPC設定には、基本ルール掲載分とかならずしも合致しない箇所がある」と断り書きがある。これは基本ルールの記述が間違っているわけではなく、基本ルール掲載分は各NPCの「表向き」の設定であり、本書の設定はふつう知られていない「裏の顔」だそうだ。またプロット案やシナリオ導入例は囲み記事以外の部分にも多数埋もれているのでどんどん拾ってくれ、という注意書きも。

ニューオーリンズといえば避けて通れないのはブードゥー教とアン・ライスだが、p. 11 Resources(参考資料リスト)にはやはりブードゥー関連の資料が目立つ。アン・ライス関連では当然ながら映画『インタビュー・ウィズ・ヴァンパイア』が。個人的には、本書の雰囲気はあの映画とはほど遠い気もするのだが。

Chapter One: A Look Back at the Big Easy

ニューオーリンズのヴァンパイア史。基本ルールにすでに詳細な年表が掲載済みだが、本章では個々の事件よりその裏で活躍した血族に注目し、時代背景の解説をまじえつつ主要NPCの活動の変遷をふりかえる(look back)。年表上の事件の真相がおしげもなく暴露されるため、プレイヤー専門の人が読んでしまうといささか興を削がれるかもしれない。特にp.22〜23は危険なのでいっそテープでも貼って袋綴じにすることをお勧めする。

本章がとりあげる時代は主に1850年以降。そのわずか150年少々の間に、少なからぬ長老が休眠や死亡や引退によって血族社会の重要ポストをしりぞいている。年若いPCにもパワーゲームのいちばん美味しいところに割りこむ余地は充分あるというわけだ。また、ライバル派閥同士がときに渋々ながら共同戦線を張ったり、第三勢力に煽られて無益な抗争をはじめたり、と対立構造そのものもめまぐるしく変化して飽きさせない。

ニューオーリンズの歴史を動かしてきた長老NPCたちは、けっして全知全能ではない。だまされもするし、失敗もする。知らないこともたくさんある。ときには血族にも説明がつかない超常現象に翻弄される。そうした失敗や偶然によっても歴史が形づくられているあたりがとてもリアルで、「大人のゲーム」らしい雰囲気だ。

Chapter Two: Points of Entry

ニューオーリンズの地理・治安・政治情勢・交通手段など、プレイヤー・キャラクターが実際にこの街に住む(または滞在する)にあたって気になる実用的な情報。

  • ニューオーリンズに行くにはどんな手段があるか。
  • 逃げだすとしたらどんなルートが考えられるか。
  • 市内の移動にはふつうどんな交通機関を使うんだろう。
  • 一年のうち観光客が多くなる時期はいつか。
  • この街の公子は誰で、どんな評判が知れわたっているか。
  • 三戒(The Traditions)の違反にはどれくらい厳しいか。
  • 他に守るべき慣習は何か。
  • もし掟破りが公子にばれたらどんな罰をくらうだろう。
  • 自分が属するコブナントは、この街では肩身が狭いだろうか、羽振りをきかせているだろうか。
  • この街に住むとしたら、どこが(血族にとって)住みよいか。
  • 好みのタイプの獲物はどの地区に行けば見つかるだろうか。
  • この街のエリュシオン(Elysium)はどこか。

と、この街を舞台にセッションを始めたら早晩プレイヤーから浴びせられそうな疑問に対する答えはだいたいここに揃っている。

他の都市でも使えそうな設定としては、「公園や広場を特定の血族が餌場として独占するのは禁止」というビダル公子の禁止令がある。マスカレードを侵さないかぎり、どんな血族でもここで狩りをしてかまわない。逆にいうと盛り場やもっと実入りのいい場所が独占欲の強い血族のドメインになっている可能性はおおいにあるわけで、PCをあまりガツガツさせず、かつ「もっと良いドメインが欲しい」という血族らしい動機を持たせられる仕掛けになっている。

Chapter Three: Games of the Elderst
Chapter Four: Wheels Within Wheels
Chapter Five: Working the Street

ここから3章は、ニューオーリンズ在住の血族NPCを一人ずつとりあげての解説だ。第3章がelder(長老)、第4章がancilla(若輩)、第5章がneonate(幼童)となる。

基本ルールの記述がPC向けの情報であるのに対し、本書の記述はST向けという位置づけ。ゆえに各NPCの秘めた野心、密かな悩み、後ろ暗い秘密、水面下の行動など、ふだんは表に出ない「裏設定」がつぎつぎと明らかになる。

長老7人、若輩9人、幼童9人、その全員が野心や秘密を隠しており、そのすべてに個性的な動機が設定されている。同じ権力を欲しがるのも、ある者は血族社会に公平な法の裁きをもたらしたいために、またある者はただ誰からも弾圧されずにすむように、とじつに様々なのだ。そのうえ誰もがその野心を実現するために着々と陰謀を進めている。

だが真に恐るべきは、それぞれの陰謀が互いに連動しているという点だ。互いにかみあいながら回転する歯車のように、長老の陰謀が若輩の陰謀に影響し、その若輩の陰謀は別の幼童の陰謀に影を落とす。一幼童が長老さえ欺く大ばくちを打ったりもする。幼童という小さな歯車が長老の大きな歯車を回し、そこに噛み合うすべての歯車を動かすこともあるのだ。

そのため、ひとつの事柄に関する記述があちこちに分散していて、ある長老の項ではっきり書かれていないので「ははあ、ここから先はSTの想像に任せるということか」と思ったら、ずっと後の幼童の項で意外な真相が明かされて「なんだってー!?」と驚愕する、ということもしばしばだ。

すべての影響を計算ずくで自殺を計画する血族が出てきたり、よかれと思って進めた計画が知らずに狂わされていたり、裏に思惑があるように見える行動がじつは壮大な狂気の産物だったり、傀儡を操る黒幕と見えた者が思わぬ第三勢力の傀儡だったり……読んでいてまったく飽きない。

幼童から権力への道は意外に近いことにも驚かされる。Antoine Savoyの右腕、Baron Cimitiereが頼みとする闇工作係、covenantに所属せず立場の弱い血族たちの声を代表するリーダー……いずれも幼童扱いなのだ。幼童キャラクターでは権力に無関心とか反動的とかいう態度が好まれる傾向があるが、ただ干渉されたくないだけでも力が必要なこの街では、そうそう無関心でもいられないのだろう。

Chapter Six: Storytelling

何層にも陰謀がからみあう本書の設定は、じっくり腰を据えて行うクロニクル(キャンペーンシナリオ)に最適だ。ストーリーテラー向けに、クロニクルを準備するにあたってはどこから手を着ければいいか、どんな対立構造が利用できるか、についての実践的な手引きになっている。また「PC全員モータル」「全員長老」などといった、ちょっとひねった前提での遊び方も紹介されている。

ここまでにも囲み記事でシナリオアイデアが多数出てくるが、この章は全体がシナリオアイデアの塊のようなものだ。なおp.124 In the Wake of the Storm は「ハリケーンによる洪水でニューオーリンズが水没したら」という、今となっては笑うに笑えないプロット例が載っている。ただし本書の出版は今年5月末のことで、ハリケーン・カトリーナの被害を予言したかのような内容になってしまったのは不幸な偶然の一致というよりほかない。

Appendix: The Dead Travel Fast

本書の設定を利用した1幕7場のシナリオ。11ページにわたるかなりのボリュームだ。ニューオーリンズに最近越してきた、またはこの街で〈抱擁〉されたばかりで、まだどの派閥にも与していない幼童キャラクターをPCに想定している。

PCは偶然、ある事件の唯一の目撃者となってしまい、街の支配権を巡って争う3つの派閥それぞれがPCたちを懐柔しようと接触してくる。他人の使い走りで事件に首を突っ込まされるのではなく、事件の鍵を握る中心人物として街のお歴々から注目を浴びるお膳立てのおかげで、かなり気分良く状況にはまりこんでもらえそうだ。

ニューオーリンズの3つの派閥とその違いをプレイヤー側に提示することと、PCたちの「居場所」をニューオーリンズに確立すること、この2点がシナリオの目的となっている。

基本的には一本道な展開だが、背後にある真相は本書にふさわしく何人もの陰謀と偶然が複雑にからみあったものだ。とかくややこしい陰謀ものはプレイヤーが謎解きに行き詰まって失敗しがちだが、このシナリオではその問題をうまく演出で処理している。「謎解きをやらせるとすぐ情報収集が行き詰まって……」というSTも、このシナリオなら対策は万全だ。「プレイヤーが自力で答えにたどりつけなくても、なんとなく自力で謎を解いたような達成感があじわえる」「戦闘しなくても戦闘したように盛りあがる」巧妙な仕掛けは、自作シナリオの参考にもなるだろう。

WWのシナリオとしてはかなり親切設計で、プレイヤーが脱線したり、やみくもに戦闘を仕掛けたりした場合の対処方法も書いてある。ただし、STは事前に登場するNPCの説明をよく読んで理解しておかないとかなりひどい目に遭う。

とてもよく練れたシナリオなのだが、難点がないわけではない。冒頭のプロローグが二人称になっているのは、実はこのシナリオの最初の場面、つまり重大事件を目撃するまでの経緯を説明するハンドアウトを兼ねているからなのだが……プロローグで「あなた」と呼ばれるPCが事件にかかわりあいになる動機は非常に感傷的な、ひいき目に見ても個人的なものなので、PCの人数が多い場合に「……で、なんで俺たちまでここにいるのよ?」と首をかしげる人が出るおそれがある。しかし個々に導入をロールプレイすると、そもそも最初の場面に持っていくことさえ困難なので、プロローグには適宜手を加えるつもりで準備したほうがよさそうだ。

装丁と挿絵

なぜかやたらとBaron Cimitiereのイラストが多い。他の連中の5倍ぐらいは登場している。シルクハットに丸眼鏡という特徴的な服装が絵にしやすいのだろうが……とりあえず男爵ファンの人は買って損なし。設定的にもおいしいとこ取りなので。

……で、買い?

本書はあくまで基本ルールの舞台設定の追加情報であり、全体にST向けの内容になっている。プレイヤーしかやらない、という人には読み物以上の価値はないだろう。ネタバレは嫌い、という人にはなおさらおすすめしない。

逆に、俺がSTだとか、身近にSTをしてくれる人がいないとかいう人は、迷わず買うべきだ。ただ複雑な設定をめぐらすだけでなく、それをどう活用していくか、その中に溶けこんでPCが活躍するにはどうしたらいいか、というところまで配慮がいきとどいた設定集であり、利用しないのはもったいない。俺はできあいの設定など頼らないぜ、という人でも、ネタとしていくらでも使い道がある。

この水準で凝りに凝った都市設定がそういくつも出るとは思えない。実際、他の都市設定が出るという噂も耳にしない。World of Darkness: Chicagoがあるじゃないか、という指摘もあろうが、あれはクロスオーバーを前提とした都市設定であり、V:tRのみで遊ぶものとはまた違ったゲームを意図していることだろう。

どうもJGCでの発表を又聞きするに、都市設定資料集は翻訳候補に入っていないという噂だが、本当だとしたらちょっと残念な話だ。

書誌情報

ストック・ナンバー:25200
定価:$26.99
ISBN:1-58846-248-X
ページ数:128
ディベロッパー:Justin Achilli, Mike Lee
執筆者:Ari Marmell, C. A. Suleiman
発売年月日:2005年5月30日
通販リンク:
White Wolf Online Catalog
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DriveThruRPG.com(PDF版)

レビュー『World of Darkness: Mysterious Places』

これは何の本?

World of Darkness 汎用サプリメント。なにげない日常の風景に紛れ、人々を超常の世界にひきずりこむ、奇怪で恐ろしい9つの「ミステリー・スポット」と、それを使ったシナリオアイデアを紹介する。

特定の都市や地理に依存しない設定なのでシナリオの舞台を選ばず使えるのが特徴。人間(mortal)キャラクターを想定した造りだが、Vampire/Werewolf/Mageでも充分楽しめる。

ネタバレは避けてレビューするつもりだが、心配な人はこの先を読まないように。

背景設定集+シナリオ作成キット

汎用性の高い舞台設定が売りだが、シナリオ展開例が充実しているのでシナリオ集のように使うこともできる。動機・導入・展開・結末とそれぞれ5〜6通り用意されたサンプルを順に拾っていくだけでもひととおりのプロットが作れてしまうのだ。サンプルの組み合わせを変えればがらりと違う話になる。

サンプルはかなり大ざっぱな書き方なので、実際にシナリオとして運用するには細部を作り込む必要があるだろう。もっとも、山場となるミステリー・スポットのデータや背景は綿密に設定されているので、まったく何もないところからシナリオを作るよりは楽なはずだ。

見えない敵、悪意なき悪意

本書が提案するシナリオのほとんどに共通するのは「ラスボス」の不在だ。トラブルの元凶である人物や怪物を見つけだし、それを交渉なり戦闘なりで排除して解決、というのはTRPGのシナリオによくあるパターンだが、その「それを倒せばなんとかなる何か」がそもそも存在しなかったり、戦闘で勝てるような「相手」ではなかったりするのが『Mysterious Places』の特徴だ。

桁違いの能力を誇るクトゥルフ怪物みたいなのが出てくるのか? いいや。PCは虐殺されるしかないのか? いいや。

とはいえ、中にはPCに死者や発狂者(や、もっとひどい運命をたどる者)が出るのは当たり前、未知の恐怖でPCを絶望のどん底に陥れる、地獄のようなミステリー・スポットもある。p.96 The Whispering Wood と p. 124 The Empty Roomが2凶といっていいだろう。とくに Whispering Wood は「PCが破滅するほうがおもしろい」という凶悪なしろものだ。キャラに愛着の強い人、PCが死なないゲームに慣れている人にはお勧めできない。

逆に、すばらしい恩恵をもたらすミステリー・スポットもある。シナリオ例ではその恩恵がさらに大きな災厄を引き起こすのだが、純粋な善意がおぞましい災厄に変わるからくりが恐ろしい。本書全体にPCに危害を及ぼす存在は多々登場するが、いずれも邪悪さとか悪意からやっているようには見えない。そもそも意図というものを持ち合わせているのかどうか怪しいのもいる。この「悪意の不在」も本書の特徴だといえるだろう。

なに、いいやつばかりしか出てこないのかって? 

君は自分の顔を刺した蚊を「いいやつ」と思うかい?

装丁とイラスト

第3章 Swamp Indian Hollow の挿絵が異彩を放っている。マルカヴィアン・クランブックの初版が好きだった人はp.54に注目。

……で、買い?

面白く読んだし、猛烈にこれを使ったシナリオがやりたくなったので、万人に読めといいたいところだがここは客観的にいこう。

ひらたく言えば「STのネタ集」なので、PL専門の人には用がない。同じ理由で、そのまま使えるシナリオが欲しい人には『World of Darkness: Ghost Stories』のほうがおすすめだ。先にも述べたが、「倒すべき敵」が存在しないシナリオを打ち出してきているので、やっぱり最後はボスキャラと戦闘しないと落ち着かない、というむきには『World of Darkness: Antagonists』をお勧めする。いろいろな意味で本書の対極をゆくソースブックだ。

では、この本は誰にお勧めなのか?

『Mysterious Places』が破滅すら楽しむようなシナリオを持ってきたのは、PCが生きのびることを前提に作られているようなV:tR/W:tFの既成シナリオを見てきた後だけに、驚きだったし、新鮮な感じがした(もちろん破滅型シナリオ自体はすでに他のホラーTRPGでおなじみだが……)。それと同時に、WoDコア系列はいよいよ「V:tRの半分」から「人間側から見たWorld of Darkness」として形をなしてきたな、とも思う。

WoDでは人間でいるかぎり超常現象の真相はわからない。知ったときには破滅をはじめるか、彼自身すでに人間ではないか、である。それを反映して本書でも「なにをきっかけに」超常現象が起こるかは説明されていても、「なぜそうなるのか」はまったく説明がない。だからVampire/Werewolf/Mageより「未知であることの恐怖」というホラーの主題のひとつがストレートに伝わってくるし、説明しなくていい気楽さのせいかどうか、執筆陣もどのシリーズよりも突拍子のないネタを出してくる。

だから、手間をいとわずWoDでホラー小説を再現してみたい、とか、新WoDで最もクレイジーな設定に興味がある、というSTにはぜひどうぞ。

参考:本書の構成

本書が収録するミステリー・スポットは全部で9つ。

  1. The Swimming Hole(水泳穴)
  2. The University(大学)
  3. Swamp Indian Hollow(沼沢インディアンの窪地)
  4. The Village Secret(村の秘密)
  5. The Statue of Weeping Alice(すすり泣くアリス像)
  6. Hillcrest Center for Elder Living(ヒルクレスト老人介護センター)
  7. The Whispering Wood(囁く森)
  8. The Junkyard(廃車場)
  9. The Empty Room(空き部屋)

各章はおおむね次のような構成になっている(章によってはこの通りの題名でないところもある)。

  • Summary(概要)
    ミステリー・スポットの概略、ふさわしい設置場所、PCに求められる前提条件など。前提条件といっても「互いに知り合いである」「肉親や友人の誰かが◯◯にいる」程度だから、現在進行中の史劇に織り込むのは簡単だ。設置場所もほとんどは街中や近郊を推奨している。
  • History(背景)
    その場所にまつわる歴史や人間関係。
  • Systems(システム)
    その場所がもたらす特殊な効果や、情報収集によって得られる情報、必要なNPCデータ。
  • Motives(PCが関わる動機)
    PCがこの場所を調べたり、事件に巻きこまれたり、囚われたりする理由づけの例。
  • Preliminary Events(導入イベント)
    PCをこの場所に誘導し、事件の前兆とするイベントの例。
  • Stories(プロット展開)
    この場所を用いたシナリオの展開例。
  • Ending It(結末)
    事態を収拾するのに考えられる手段、あるいはシナリオの締めくくり方の例。

書誌情報

ストック・ナンバー:WW55302
定価:$24.99
ISBN:1-58846-485-7
ページ数:128
ディベロッパー:Ken Cliffe
執筆者:Kraig Blackwelder, Rick Chillot, Geoffrey Grabowski, James Kiley, Matthew Mcfarland, Brett Rebischke-Smith, Chuck Wendig
発売年月日:2005年6月13日
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レビュー『Predators』


これは何の本?

Werewolf: The Forsaken の敵役クリーチャーのうち、特に精霊界の住人をとりあげた拡張サプリメント。Spirit(精霊)、Spirit-Ridden(精霊に憑依された生物)、Host(古代妖怪の分身)に加え、そのいずれでもない太古の怪物 ancient horrors が新登場。Spirit-Ridden/Host の作成ルールが追加される他、精霊界の住人を絡めたストーリーテリングについて、ST への指針を掲載する。

乱暴にいえば「W:tF モンスターマニュアル・精霊界編」とでもいうところか。

Prologue: One Vengeance

自傷行為を繰り返す少女とその養父母である Uratha を襲う悲劇。Spirit-Ridden と Azlu が登場し、いよいよW:tFの本領発揮という感がある。精霊に思考まで侵蝕され、養父母を「守護者の牡・牝」としか認識できなくなった少女の最期は悲壮というよりほかない。モダンホラー風の救いのない幕開けである。

Introduction

珍しく長い序文がめだつ。本書には敵役として使えるサンプルキャラクターが多数登場するが、それを PC の経験値を上げるためだけにそのへんをうろうろして狩られるのを待っているヤラレ役のように扱ってほしくはない、というのだ。実際、うかうかしていると逆にPCをとって喰いかねない曲者ぞろいではある。本書が Predators(捕食獣)と題されているのは、こいつらはワーウルフを狩る者でもあるんだぞ、という含みかもしれない。

ワーウルフを狩るといえば Pure tribes だが、本書では割愛されたようだ。一冊丸ごと Pure 専用のサプリメントを作るからそれまで待ってくれ、とのこと。それだけではあんまりだと思ったのかどうか、基本ルールの範囲内でうまく Forsaken との差異を演出するTipsが p.10 What About The Pure?に紹介されている。

Chapter One: Denizens of the Shadow

前半は精霊の概説とストーリーテリングの指針。精霊が何を考え、何を欲し、なぜ喰らい合うのか。なにかと敵対する彼らに Uratha が協力を求めるのはどんな時か。またその場合にどのように交渉すればよいか、を解説する。

総じて基本ルール p.265〜273 Spirits を追補する内容になっており、精霊の記憶や死生観にまつわる話が興味深い。精霊との交渉における具体的テクニックを解説する p.16〜18 Meeting with the Spirits は、かけひきをロールプレイで演出したいプレイヤーなら必見だ。いっぽうストーリーテラー要チェックなのは p.21 Manifestation。物質界にいる精霊の可視/不可視の扱いが若干変更されている。

後半は60種以上におよぶ精霊データ集。犬猫や四大元素といったお馴染みの顔ぶれも多いが、コンビニの精霊、無気力の精霊、データの精霊など、他ゲームではちょっと見かけないような類が大半を占める。さらには異質な精霊の融合から生まれるハイブリッド精霊というのもいて(例:車の精霊+苦痛の精霊=歩行者轢き殺しの精霊)、バラエティには事欠かない。

能力値は全体に Initiative や Defense 値が高く、力押しで倒すのは難しい。一対一でもかろうじて殴り殺せそうなのは Rank 1 どまり、中には Defense 12 なんて化物もいるから、ban を探り出すなり交渉に持ちこむなり頭を使わないと苦戦必至だ。

「掲載データと同じ種類の精霊だからといって能力値や ban をこの通りにしなくてもいい、むしろ変えろ」と随所で強調される。せっかく基本ルールブックに精霊の自作ルールがあるので、それを活用してほしい、という意図だろう。

Chapter Two: The Spirit-Ridden

精霊がSpirit-Urged/Claimed/Thiefとなる動機、憑代の選択基準、憑依後の変化などの解説。それぞれの憑依形態で「何ができるのか」「元に戻す方法」「憑代が死んだらどうなるか」については、p.78, 80, 83に明快なサマリがある。基本ルールで不明瞭なところが多かっただけにありがたい。

また Chapter One に出てくる精霊が取り憑いた場合に憑代がどのような異変を示すか、という例が p.101〜 Spirit Parasites に豊富に挙がっている。

参考資料にキングやクーンツの小説を挙げているだけあって、サンプルキャラクターもそのままモダンホラー小説に登場しそうなものばかりだ(火の精霊に憑かれた Firestarter だっている)。それらを使ったシナリオも1本付属する。

目玉は Spirit-Ridden キャラクターの作成ルールだ。Urged/Thief はモータル扱いだが、精霊が憑代と融合した Claimed は超常種族とみなされテンプレートを適用する。精霊の侵蝕度を示す Synthesis という専用特性値をもち、そこから算出した作成ポイントを支払って専用Aspectを購入することで腕を増やしたり毒を吐いてみたり、と能力をカスタマイズできる。侵蝕が進めば Synthesis が上がって Aspect を増やしたり強化したりできるが、そのぶん人間を装うのは難しくなる仕組み。

Chapter Three: The Swarms Within: The Hosts

Host 各種族の起源や性質、寄生した人間に及ぼす影響、退治の方法、など。基本ルールの説明より格段に具体的な情報が増え、不気味さ百倍である。知られざる Host として蝗の Srizaku、鴉の Halaku、蛇の Razilu が追加された。

蜘蛛の Azlu、鼠の Bashilu にはキャラクター作成ルールがついた。精霊に似た能力値振り分け制だが、共食いによって進化成長する性質を、各個体に evolution point を持たせることで表現している。最も下等な個体だと1点しか持っていないが、共食いすると相手のevolution pointを吸収できる。これを支払ってAspectを購入することで上位形態に進化したり、特殊能力を得たりするシステムだ。

Aspectは種族ごとに独立したリストになっているので、適当にとっても「それらしい」格好がつく。プロローグに登場したAzluと同じ能力を再現できるAspectもちゃんと用意されているあたりは心憎い。

Chapter Four: Horrors of An Ancient Age

ラヴクラフトの引用で始まることがすべてを象徴している。はるかな昔、Father Wolfによって精霊界の奥地に追放された、精霊でもHostでもない文字通りのバケモノどもだ。

6体のhorrorが登場するが、正体について Option A・B と2種類の説明を用意していて、どちらを採用してもいいというのがおもしろい。能力値のほうは、純粋に数値だけ比較すると高ランクの精霊のほうが強いかな、とも思うが、盛り沢山のインチキな特殊能力はそれを補ってありあまる。まあ、V:tMで能力値に「勝てません」と書かれていたという伝説の長老よりは数値があるだけマシだろう。

装丁と挿絵

WoD 製品のイラストは本文の内容に無関係なことが多いのだが、本書にかぎっては掲載の精霊や怪物をきちんとビジュアル化してくれているのがうれしい。Lune や Machingan Spirit に挿絵がついているのには正直感動してしまった。しかし最も強烈なのは p. 96の Living Succubus だと思う。夢に出てきたら泣くぞ。

本書はSamuel Araya など繊細で不気味な画風のイラストレーターで揃えたらしく、グロテスクが苦手な人にはつらいかもしれない。『Antagonists』や『Ghost Stories』のビジュアルが好き、という人には受けそうだ。

ちなみに表紙で意味ありげに立っているコウモリ男は内容と無関係です。

……で、買い?

W:tF における主要な敵役はやはり精霊、Host、Ridden であり、基本ルールで不明瞭だったところ、イメージのわきにくいところを本書はみごとに補完してくれる。基本ルールですでに述べたことをくどくど再録したりはしていないので、まさに正しい意味での「サプリメント」である。迷わず「買い」と断言しよう。

ストーリーテラーにとって即戦力となるのはもちろんだが、プレイヤーも自分のPCが影界で相手にするのがどんな連中か知っておいて損はないだろう。へたに論述セクションを読むよりは、p.23〜 A Spirit Bestiary掲載のサンプルをたくさん見たほうがかえって雰囲気を把握しやすいかもしれない。

Host や Ridden の作成ルールは PC としての使用に立派に耐えうる造りになっていて、正直言うと NPC を作るのにここまで必要ないのではと思うほどだ。詳しい解説を読むほどにPCとして使ってみたい誘惑にかられる御仁もいるだろうが、Introduction で執筆陣が警告しているように、そういった使い方をするならST各自で調整が必要になるだろう。

とはいえ、「数値は適当に作ればいいと言われたって、どれぐらいが適当なのかわからないもんなあ」と日頃頭を悩ませているSTにとって、本書の作成ルールは時間こそかかるが変化に富んだNPCをあまりバランス面で迷わずに作れる、という点でありがたい存在になると思われる。

ストック・ナンバー:WW30300
定価:$29.99
ISBN:1-58846-326-5
ページ数:192
ディベロッパー:Ethan Skemp
執筆者:Aaron Dembski-Bowden, Jess Hartley, Forrest B. Marchinton, Deena McKinney, Ethan Skemp
発売年月日:2005年6月27日
通販リンク:
White Wolf Online Catalog
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DriveThruRPG.com(PDF版)

レビュー『Lancea Sanctum』

“Heavenly Father, guide my aim as I serve as your Holy Spear, spilling the blood of the wicked in your name. Amen.”

「天にまします我らが父よ、我が手を導き汝の聖槍たる務めを遂げさせたまえ、汝の名において邪なる者の血を流させたまえ。アーメン」——『Lancea Sanctum』よりThe Hunter's Preyer (p.88)

これは何の本?

本書は『Vampire: The Requiem』のサプリメントで、五大covenantのひとつであるランケア・サンクトゥム(Lancea Sanctum)を専門的にとりあげたcovenant sourcebook第一弾だ。

血族の教会というべきランケア・サンクトゥムの歴史、教義、組織、活動について徹底解説するほか、テーベ魔術(Theban Sorcery)や特殊Disciplineの追加データ、サンプルキャラクターを収録し、またランケアと縁の深い新たな枝族(bloodline)も紹介する。

Prologue: Faithful Service

シカゴのランケア・サンクトゥムを束ねる司教(bishop)の多忙な日々を描いた短編小説。著者Greg StolzeはV:tRのノベライズを手がけており、この短編でもV:tR小説シリーズの登場人物であるSolomon Birchが活躍する。

羊皮紙風の薄茶の紙使い、カリグラフィ風の書体、木版画調に加工した挿絵といった見かけの古めかしさとは裏腹に、内容は銃弾乱れ飛び革ジャケが血に染まるバリバリの現代物だ。ランケアの「中世の装いをまとった現代」というイメージを象徴するようなデザインである。

本文に使われている書体があまりに装飾的すぎて、読みづらいこときわまりないのが残念。結局PDF版のテキストをテキストエディタにコピーし書体を変えて、やっとのことで判読した。

Introduction: Rejoice, For Thou Art Damned!

本書の概要、テーマとムード、各章の内容紹介、用語集。公式サイトからp.24〜25のPDFサンプルがダウンロードできる。

p.24 The Home of the Lanceは基本ルールで説明されなかった「そもそもLancea Sanctumという言葉は何を意味するのか?」という疑問に答えている。なんとなくロンギヌスの槍のことと思いがちだが、そうではないというのだ。公式フォーラムでも議論になった話題なので、一読しておくと知ったかぶりプレイヤー対策になるかもしれない。同ページParishes and Domainsは、ランケア独特の言い回し「parish」の定義について。

p.25 Lexiconは、ランケア・サンクトゥム内で使われる用語集。見出しをざっと眺めただけでも、闇のメシア、黒修道院、ロンギヌス聖書……と、抹香臭さというかゴシック的雰囲気満点の言葉が勢揃いだ。V:tR開発当初「サバト」と呼ばれていた(!)covenantだけのことはある。

Chapter One: The History of the Lancea Sanctum

p.30〜41がランケア・サンクトゥムの歴史、p.42〜p.47が世界各地における現状。

前半は、教祖ロンギヌスの遍歴から聖典編纂者モナクスの宣教、テーベ魔術(Theban Sorcery)の発見、各Creed(宗派)の誕生、新大陸進出から現在にいたるまでを綴る。ロンギヌスの槍や天使といった伝奇的要素も登場するが荒唐無稽に走ることもなく、説得力のある背景史になっている。ランケア草創期に活躍したヴァンパイアはすべて滅びたか失踪したかのどちらかで、V:tMにおけるメトセラ的存在がひとりも出てこないあたりは、いかにもWoD2.0らしい。

ランケア・サンクトゥムは由来が由来だけにカトリック的な雰囲気が色濃く漂うが、実際にはもっと懐が深い。人間社会のキリスト教会の盛衰を歪んだ鏡のように映しながらも、あくまでヴァンパイアの、ヴァンパイアによる、ヴァンパイアのためのキリスト教として独自の発展をとげ、あげくにイスラム教やユダヤ教までCreedとして呑みこんでしまったからだ。厳密にいえば「血族のキリスト教」というより「血族の一神教」と呼ぶべきなのかもしれない。

とはいえその歴史には現実のキリスト教会史が巧妙に溶けこんでおり、ローマの迫害、使徒の伝道と殉教、失われた聖槍、世俗権力との対立、異端審問、宗教改革や宗派分裂……と、随所で「ははぁ、これは◯◯のパロディだな」とにやにやさせられることうけあいだ。

後半は世界各地のランケア・サンクトゥムが、現地事情に合わせて活動や教義をどのように変えていったか。Creedについて頻繁に言及されるので、先にp.59〜64 The Creedsを読んだほうがわかりやすいかもしれない。相変わらず日本も中国もインドも東南アジアも十把一絡げの列強植民地扱いだが、とりたてて親日家でもないアメリカ人の認識などまあこんなものなのかもしれない。むしろ『Kindred of the East』のようなアクの強い設定が出てこなかったことにほっとした。

Chapter Two: Unlife in the Lancea Sanctum

p.50〜はランケア・サンクトゥムの教義解説。二大聖典であるThe Testament of LonguinusとThe Sanguineous Catechismの内容が主だが、聖典自体にどう書いてあるかには一言も触れず、構成や内容や表現の分析という体裁でひたすら間接的な言及にとどめているのが逆に想像をかきたてる。ところどころ矛盾や欠落、現代では古めかしすぎて顧みられない部分、中世とは異なる解釈をとっている部分などの指摘があるのも変にリアルだ。『Rites of the Dragon』の例もあるので今後フィクションとして出版される可能性は考えられるが、このままずっと想像の余地を残しておいてほしい気もする。

p.59 The Creeds〜はCreed各派の紹介。カトリック的正統派のMonachal Creedをはじめキリスト教の宗派を反映したものが中心だが、聖典をイスラム教の文脈で解釈するIblic Creed、ユダヤ教徒をとりこむDammitic Creedといった非キリスト教Creedも登場する。異端Creedの例として、ランケア版聖母崇拝Livian Herecyとクー・クラックス・クランばりのCrimson Cavalryが挙げられている。

p.64 Titles and Offices〜はヒエラルキーと役職の解説。各役職を得るのに最低限必要なCovenant Status (Lancea Sanctum)のドット数が示されていて、誰が誰より偉いのか、どの程度重みのあるポストなのかがわかりやすい。1ドット前後の役職はけっこう多く、またlay position(在俗)といって比較的戒律のゆるやかな地位もあるので、PCへの報酬にしてもおもしろそうだ。後々その役職の仕事をシナリオネタにもできる。

カトリック教会とよく似た階級構造を持つとはいえ、ランケア・サンクトゥムに教皇はいない。汎世界的な組織を作りあげているわけでもない。上下関係は原則として一つの都市内で完結し、ある街の揉め事に「どこかよそにいるもっと偉い奴」が横槍を入れる、という事態を考えなくてもいいよう配慮した設定になっている。そのためランケアにおけるBishopやArchbishop、Cardinalは、カトリックの司教や大司教、枢機卿のイメージとだいぶ異なる点には注意が必要だろう。

p.72 Clan Roles in the Lancea Sanctum〜はランケア内における各Clanの役割。併せてそのClanの血族がランケアに入信する動機や、Creed選びの傾向などにも触れている。

p.77 Lancea Sanctum Ritae〜はランケアが行う大小の儀式(Ritae)。改まったApostolicaと日常的なEcclesiaに大別される。Apostolicaはミサや告解、四旬節といったカトリック由来の儀式が中心で、ときに残酷ながらも抑制の効いた印象だ。参加者にちょっとした特典(Willpower回復、一時的な判定ボーナスなど)を与えるオプションルールもあるが、採用する前にp.78囲み記事の警告は読んでおくべきだろう。レビュー冒頭に引いたThe Hunter's Preyer はEcclesia儀式のひとつで、ランケア信者が狩りにでかける前に呟く祈りだが、たった2行の短さなのでPCの日常のロールプレイにさりげなく織り込んでみたくなる。

p.89 Domain Politics〜はかつてInvictusと並ぶ権勢を誇ったランケアの、現在の権力観について。

Chapter Three: The Lancea Sanctum and the Danse Macabre

Neonate篇(p.96〜)、Ancilla篇(p.115〜)、Elder篇(p.128〜)に分け、各世代の血族がランケアのどこに惹かれて入信するのか、信徒になるとどういう義務や責任があるのか、他の世代にどんな態度で接するか、またそれが歳を経るにつれどのように変化していくかを考察する。

特にプレイヤー・キャラクターになることが多いneonateには20ページも割いて、布教や入信の過程、勧誘に使われる理屈、ランケアにとってneonateが象徴する意味に到るまで徹底的に解説している。これでイメージが湧かないとは言わせない、といわんばかり読み応えある情報量だ。

またancilla、elderについてもその世代ならではの役割を示し、彼らも血族社会の責任ある一員なのだということを改めて実感させてくれる。血族の長老と聞くとどうも「ありあまる暇をかけひきや陰謀に費やしている偏執狂の怪物」というイメージしか浮かばない、という向きには一読を勧めたい。

p.135 Relations with the World of Darkness〜は、他のコヴナント、ワーウルフ、メイジに対するランケアの基本姿勢。

Chapter Four: Factions and Bloodlines

p.144〜166はランケア内部に存在する各faction(党派)の紹介。Creedが人間の宗教でいうカトリックやプロテスタントのくくりだとすると、factionはその中でもさらに原理派、穏健派、改革派、保守派……と細分化された小集団を示すようだ。いささか不穏当な例えを使うなら、イスラム教シーア派の過激派グループ「アラーの鷹」なる集団がいたとしよう。「イスラム教シーア派」の部分がCreed、「過激派グループ『アラーの鷹』」の部分がfactionにあたる。

この章はえらくわかりづらい構成になっている。p.145〜154 Major Factionsに登場するHardliners、Unifiers、Neo-Reformistsは、実はfactionそのものではなく、数あるfactionの思想傾向を5つに分類した「タイプ」のうちの3つだ。3つしかないのにステレオタイプの項には5つ出てくるから混乱するが、残るMendicants、Procelytizersはp.154 Example Factions以降に説明がある。項目名が Mendicants: The Nepheshimというのは、Mendicantsに分類されるfactionの一例として、ここではThe Nepheshimというfactionを紹介しますよ、どうぞSTの叩き台に使ってください、という意味である。p.161のProselytizers: The Messengers of Longinusも同じ。

p.167以降がランケア・サンクトゥムに縁の深い新bloodline(枝族)。神が認めた血族の支配者を自認するIcarians、死の研究にとりつかれた隠者Osites、現代の鞭打ち行者Mortifiers of the Fleshの3つが追加されたが、実はもうひとつ、隠れキャラ的枝族がp.160 Nepheshim as Bloodlineにちらりと出てくる。

Chapter Five: Disciplines and Rituals

p.178〜185が追加Discipline。Icarian用のConstanceは、わずかなVitaeでResolveとWillpowerをはねあげるのでアンバランスに強く見えるが、IcarianはWillpowerがなかなか回復しない欠陥を抱えているので実は収支がつりあっている。Osites用のMement Moriは、幽霊が見えたり死人に口をきかせたりする、V:tMの《死霊術/Necromancy》っぽい能力だ。

Nahdadはp.160の「隠れ枝族」Nepheshim bloodline用。きわめて地味だがサバイバルにはきわめて重宝な術で、断食と放浪を続ける彼らにはぴったりといえよう。

だが最も個性的なのはMortifier用のScorgeだ。
自分を激しく鞭打ち→贖罪してすっきりしたのでWillpower回復
とか、苦痛=負傷ペナルティを肩代わりしたり押しつけたりするとか、この枝族の特徴にこだわりながらもゲーム上ちゃんと利用価値のあるパワーになっている。

p.186〜205はテーベ魔術について。そもそもこれは何なのか、というところから始まって、ゲームシステム上の各能力値との関係、新しい術法の発見や習得といったかなり突っ込んだ話にも触れている。

だが本書で最も有用なページはやはりp.195 Theban Sorcery Overviewだろう。なにげないサマリに見えるが、実はV:tR基本ルールで不明瞭だった記述を書き直した改訂版で、V:tR基本ルールも増刷分からはここの記述に合わせて訂正が入るそうだ。といってもどれが初版でどれが増刷かなんて見た目ではわからないし、そもそも数ページの改訂のために基本ルールを買い直すというのも不経済だから、結局、本書を買うのが建設的ということになる。

どうせV:tR本体と同じ値段だしな。

Appendix: Allies and Antagonists

サンプルキャラクター集。略式能力値のNon-Conbatants(非戦闘員)17人、完全データ付きのCombatants(戦闘要員)3人。すべて肖像画付き、といってもいまひとつ冴えないご面相ばかりだが、p.218 Inspired Crusaderの眼帯姉ちゃんはかっこいいです。

基本的に汎用NPCとして、STの急場しのぎやNPC作りのたたき台に使われることを想定した作りのようだ。背景設定はQuote(象徴的な台詞)、Background(経歴)、Description(外見)、Storytelling Hints(演出上の要点)が簡潔に書かれているのみ。そのぶん大司教から異端者から少数派Creedの信者まで幅広くカバーしている。『WoD: Antagonists』や『Hunting Ground: Rockies』の、背景設定だけでご飯3杯、もといシナリオ3本は書けそうな個性派NPCもいいが、こちらは別の意味で実用性が高そうだ。

装丁と挿絵

表紙の凝ったデザインがひときわ目を惹く。胸に血で十字架を描いた裸の男が両腕を高々と差し上げている絵の、指の部分がタイトルロゴの隅に微妙に重なっていて、つや消し加工の指とつや出し加工のロゴの対比が絶妙な立体感を生んでいるのだ。他にもWorld of Darknessロゴの背景にLanceaのシンボルマークの一部が薄く敷き詰められていたり、Vampireロゴの色が鮮やかな朱に変えてあったり、背表紙下にcovenantマークが小さくあしらわれていたり、と細部まで神経が行き届いている。

挿絵は画風がかなりばらばらで好き嫌いのわかれるところ。

……で、買い?

もしあなたが、以下にひとつでも思いあたることがあるなら、悪いことはいわない、とりあえず買っておいたほうがいい。

  • 基本ルールの説明は読んだがランケア・サンクトゥムのイメージがさっぱりつかめない
  • というか、信者が普段何をやっているのか想像がつかない
  • デモクロニクルで公子やマルドナートの言動が理解できない
  • 背景設定にはあんまり興味ない。でも追加データは欲しい。
  • ニューオリンズを舞台にしたシナリオをやる予定がある。

こうした需要に応える「ツールボックス」が本書である。膨大な設定のバリエーションが用意されているが、都合の良い部分だけ引き抜いてきて使っても破綻が生じないようになっているし、そもそもそういう使い方を想定して作られている。

ひとつの物を作るのに、道具箱の道具を全部使う必要はない。これはV:tRの元ディベロッパーJustin Achilliも、現ディベロッパーWill Hindmarchも、繰り返し述べていることだ。

だから、総計220ページのかなり分厚いサプリメントとはいえ、全部読まないと使えない、なんてことはない。とりあえず興味のある章節だけ拾い読みするのもありだろう。率直に言って読みにくい部分もあることだし。

レビュー『Hunting Ground: The Rockies』

これは何の本?

本書は『Werewolf: The Forsaken』(以下W:tF)のサプリメント第1弾で、米国コロラド州のデンバー市を中心としたロッキー山脈地方を舞台にゲームをするための地域設定資料集だ。

正確にいえば、ロッキー地方の設定と主要NPCの一部はすでにW:tF巻末に掲載されているので、本書の設定はそれを拡張する形になる。

Prologue: Bushwhaked (p.2)

『Werewolf: The Forsaken』310ページに登場するサンプルキャラクター、Moriartyを主人公に据えた短編小説。女ヴァンパイアにこてんぱんに叩きのめされる話なのだが、敗北を美化せず、情け容赦なく、惨めに描き出しているあたり、ある意味「滅びの美学」のゲームだったWerewolf: The Apocalypseとは違うのだなあと感慨深い。

叩きのめされるか叩きのめすかの違いはあるが、お蔵入りしてしまったW:tF小説『Heart of The Hunter』で最初に登場する敵役も女ヴァンパイアだったから、正直なところ「またか」という感は否めない。W:tFにはせっかくAzluBeshiluといった独自の敵役がいるのだから、そちらが登場する話を読みたいものだ。

ストーリーはMoriartyが瀕死の重傷を負う場面で終わっており、不吉な未来を暗示しながらも結末ははっきり描かれない。これはMoriartyをPCやNPCとして利用しようとするユーザーをメタプロットで束縛しないための配慮だろう。あえて以後の展開を読者の想像にゆだねることによって、この短編はストーリーフックとしても利用できる「二度美味しい」仕掛けになっている。

Introduction (p.10)

見開き2ページのみの潔い前置き。WoDサプリメント冒頭の「いつものやつ」、すなわち章別の概要・本書のテーマ&ムード・参考資料が載っている。必要な情報がページをめくらずに手に入る簡潔さはかなり快感。WoDサプリメントで「あれはどのへんに載ってたっけ?」と探すとき、目次や索引をあたるよりHow To Use This Bookセクションの各章概要を見るほうが往々にして効率的だからだ。

p.11 Useful Resourceが参考資料リストだが、書籍のほかWebサイトがいくつか挙がっている。年々変化する街の最新事情をとらえるには確かに早くて安上がりだし、市や観光当局、大学の公式サイトなど比較的信頼性の高いソースが厳選されているのはうれしい。

ちなみに・Native American Resources:のいちばん最初、http://www.colorado.edu/csilw/arapahoproject/ は、今年3月にhttp://www.colorado.edu/csilw/newarapproj2.htmに移転している。

Chapter One: Time And Place (p.12)

p.14〜20はデンバー市を中心としたコロラド地方の略史。メタプロットを排したWoD2.0世界では無味乾燥な章になるのではと心配していたが、蓋を開けてみればなかなかどうしてネタの宝庫だ。各時代の主要な史実をとりあげて「実はワーウルフの仕業であった」と強引にこじつけるのではなく、「そういう時代だったのでワーウルフたちはこんなことをした」という描き方にはとても好感が持てる。設定に無理がないうえ、このゲーム世界の主人公はワーウルフだということが素直に伝わってくるのだ。またp.15 War with the Utesでは先住民Uratha対入植者Urathaの抗争に触れつつも、「Urathaには同族を犠牲にしてまで人間を守る義理はない」「イデオロギーではなくテリトリーをめぐる争いであった」と明言しているあたり、tribeに民族色を持ちこまない毅然たる姿勢が感じられる。

W:tAのような神話や伝説への言及は皆無なのでガルゥ愛好家には物足りないかもしれない。ただW:tAが現代より神話時代の描写に詳しいのとは対照的に、この略史は現代へ近づくほど詳細になり、コロラドの現状に多大な影響を及ぼしたGurdilag討伐戦にもっとも紙数を割いている。そのため、過去から現在まで6ページ半と、記憶力と疲れ目と慌てるSTの負担にならない優しい分量でありながら、ただの読み物に終わらない資料価値を持っている。

さらに囲み記事として各時代を題材としたストーリーフックが登場する。どれも過去の因果が現代に報い……という話なので、これらを使うだけのために「Stone Ages: Werewolf」だの「Uratha: Wild West」だのをひねり出す手間もいらない。もちろん手間をいとわないSTならここの記述をもとに過去の時代を舞台にしたゲームをやっても面白いだろう。個人的にはp.15 War on Wolvesあたりのシナリオ化に挑戦してみたい。

p.20 Points of Entry〜p.25 The Wolf-Bloodedは、PCを本書の設定に導入するためのST向けのガイドラインだ。最初の変身を迎えたUrathaが、地元のワーウルフにどう扱われ、どのようにして各tribeに参入し、パックを組み、なわばりを確保し、一人前にやっていくのかが詳しく説明されている。とりあえず基本ルールで作りたてのPCで、デンバーを舞台にキャンペーンをやってみようと考えている人は必読。

p.25〜29 Geographyがコロラドの地理の解説、というか、ワーウルフにとっての重要スポットの紹介。ワーウルフにとっての暮らしやすさやテリトリー価値についての解説が主体で、地理や風土に関する基本情報は概説すらない。そういうものは観光ガイドなり地図なりWebサイトなりで最新情報をあたってくれ、ということらしい。ちょっとした観光ガイド並みの詳しさを誇った『Chicago by Night』などを記憶する身には寂しいかぎりだが、現実の情報は風化することを考えれば合理的だろう。

ここにはコロラドならではの風物に関するシナリオフックが6種類登場するが、デンバーで一番人気のテリトリーの領有権を争う天下一武道会風の Contendersには笑ってしまった。

Chapter Two: Tribes Of The Moon (p.30)

本書の目玉、コロラド地方にテリトリーを構えるパックの大紹介。11のパック、44人のForsaken、10箇所のlocus、10体のパック・トーテム、すべてNPCとしてもPCとしても使える完全なデータつき。PCたちのパックが新規参入する余地もむろん用意されている。

各パックは他のパックに対してきちんと自分の意見を持っており、金や義理やイデオロギーで互いに協力しているところもある。といっても全部が全部つながっているわけではないので、一部だけ登場させても大丈夫だ。11種類も出したって把握できないよと思った人もご安心あれ。

さらには全パックに2通りずつのシナリオフックが用意され、敵として登場する場合と味方として登場する場合でがらりと異なる顔を見せてくれる。もう食