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2000年8月 |←次の月|前の月→|最新の日記に↑| |
Hi Speed Bin
と横腹に書かれた配達トラックを見かけたのだった。
それを見た瞬間、私の頭の中には即座に日本語変換されて
「ハイスピード瓶」
という文字が閃いた。コーラかラムネの瓶が高速でかっ飛んでいくイメージがある。流線形なだけにいかにも速そうだ。
しかし、だから何なのだ、という感もある。高速さをアピールするイメージキャラなら、瓶より適当なものが沢山あるだろう。ハヤブサとか、チーターとか、走る人をキャラクターに用いたっていい。いずれにせよ瓶はちょっとないだろう。
ひょっとしたら、瓶が商品なのか。だが瓶というものはふつうデザインや軽さを売りにするものではないのか。瓶を買う人が、高速性に着目するとはあまり思えない。だいたい、瓶の高速性とはなんだ。さっぱりわからない。そんなことは判りたくもないが、少なくとも高速性を売り物にできるのはパソコンと宅配便ぐらいのものだろう。
そこではたと気がついた。
Hi Speed Bin とはまさか
高 速 便 の英訳のつもりなのか。
ハイスピード瓶だとわけがわからないが、
ハイスピード便ならとても納得ができる。
もっとも、後者はあくまで「ビン」と読まなくてはならない。「ベン」と読んでしまうと、はなはだ尾籠な話で食事中の人に申し訳ないことになってしまうのだ。
相変わらずかったるいが熱は下がったので、内科に行くのをやめて整形外科に行った。二、三日前から左足の向こう臑が腫れて、歩くとびっこをひく状態だったのである。医者は、蜂窩織炎だからしばらくは毎日通院して抗生物質を飲むようにと言い渡した。
「もうちょっと進行していたら切って膿を出さないとだめなんです。これは、ぎりぎりの状態ですが、まあ通院と薬でなんとか散らせるでしょう」
というわけで当分、午前中は年寄りに混ざって通院生活。
ほうかしきえん【蜂窩織炎】
皮下あるいは筋肉・内臓周囲の組織が疎である部位(蜂窩織)に生じた急性化膿性炎症。葡萄(ブドウ)球菌・連鎖球菌などによって起こる。局所は赤く腫れて痛む。蜂巣織炎。(大辞林)
37度5分。なまじ微熱なだけによけい体がだるい。
8/27(日)朝起きてテレビをつけるといきなりトドが映った。待ち合わせまで時間がありあまっていたので名古屋駅前を彷徨し喫茶店のモーニングサービスで独り優雅に早めの朝食を採る。午前10時、巨大マネキン「ナナちゃん人形」の前、というか脚の下で待ち合わせ。季節によってスカートを履いたりサンタ衣装を着ていたりするというナナちゃんだが、やはり猛暑のせい(?)かオールヌードで脚線美をさらしている。本日、神楽さんは御友人のYさんを連れて登場。彼女が市内のナビをしてくれるという。さすが神楽さんの御友人だけあってこの人もたいへんパワフルな方。「なまものが好き」だそうで。
早速一行は、神楽さんのインテグラに乗り込んでホビーショップ「レッドバロン」へ。観光名所など最初から話題にすら上らないのがSuccubus Clubオフならではといおうか。レッドバロンではWhite Wolf Magagineのバックナンバーや、私が趣味で集めている海外のクソTRPGや、ワープス(!)のサプリメントなど、数々の掘り出し物があったが、帰りの切符代を思って泣く泣く諦める。一方、美夏さんが釘付けになっていたのはRolemasterの原書ボックスセット。Spell Law, Character&Campaign Law, Arms&Claw Law(他にもセットになっていたかもしれないが覚えていない)が一緒になって6000円、これはかなりお買い得。美夏さん「帰りの交通費が……」と私と似たようなことを言っていたが結局レジへ。店の人が値段をまけてくれてラッキーでしたよね。
昼食は学生御用達のパスタ屋で、大阪標準の1.5倍はあろうかという大盛り(それでも「ハーフサイズ」!)スパゲティを食す。運良くメニューに出ていた「幻のミートソース」は、じっくり煮込んだ味がしみ出てたいへんに美味だった。
午後はパルコのプラネタリウムで夏の特別番組「ホラードーム」を観る。『うずまき』で知られる伊藤潤二原作というので、あの絵が動いたりしたらかなり嫌だなと思っていたが、実写でしかもスライドショー形式だったのでかえってあまり怖くなかった。おそらくお化け屋敷を意識してのことだろう、脅かしどころがかなり前から露骨に読めるので、怖い物がでてきたときには当方に覚悟完了できてしまったせいかもしれない。
夕食はこれまた美味しい飲茶のお店にて。小龍包(中にスープが入っている肉を包んだ点心)の正しい食べ方というのがメニューに載っているのである。そうか、皮の上側をちょっと囓っておいてスープを啜ればよかったのか。いつも口を火傷しながら喰っていた私は目から鱗がおちる思いがする。
再び神楽さんのインテグラにて、まずJRで帰る零さんを送って名古屋駅へ。車内ではなぜか美少女ゲーの話題が……零さんが車内にあったトロのぬいぐるみをいたく気に入って、隙あらば持ち帰ろうと神楽さんとこの日一日熾烈な争いを繰り広げていたというのは嘘なんてことはないです。この後、私と美夏さんは近鉄の津駅まで送ってもらい感謝しつつ神楽さんと別れる。
帰りの特急内では、なぜか赤レザーのパンツスーツとか珍妙にケバい服装のくせに妙に丁寧な言葉で会話する奇妙な一行が近くの席にいて、疲れで半分寝ていたがそれが気になって仕方なかった。
なんというか、食いだおれの本場大阪から出てきて名古屋で食いだおれたオフでした。私の気まぐれにつきあってくれた参加者の方々、ありがとうございました。全く知らない道を自信をもって適当な方向に曲がってしまうという方向音痴の私を実にてきぱきと案内してくださった神楽さん、お世話になりました。市内案内してくれた上、途中ではご自分の車を出してドライバー役までしてくださったYさんにも御礼申し上げます。
次に名古屋に行くことがあれば、今回行きそびれた「ビストロ教会」へぜひ行きましょう。
昼過ぎからどうもだるくなってきて熱っぽい。
帰りの電車の中でぐったりしてました。お年寄りに席を譲らない小悪を実践。
脳みそ煮えてます。1行打つごとに、今、何を考えてたのか思い出さないといけない。
名古屋オフレポートの続きは明日です。すいません。
8月26日(土)午前10時半、近鉄なんば駅に大阪より名古屋へ向かう大阪部隊が結集した。今回は少数精鋭ということで隊員2名。つまり私ことProfessorと、美夏さんである。
大阪オフで黒スーツの蒸し暑さに懲りた私は今回、目印として涼しく、かつ特徴的な服装を採用した。それを見た美夏さんが、駅で出会うなり開口一番。
「あ、ほんとにTシャツだ」
そう、私はかねがね宣言していた通り、『Tシャツ』とアイロンプリントされた自作Tシャツを着て行ったのだった。美夏さんの視線にマイ恥ずかしさゲージ25%増。
近鉄特急に揺られること2時間で名古屋に到着、ホテルにチェックインしたり昼食をとったりしてから2時にJR名古屋で神楽さんと初顔合わせ。このとき私はまだ『Tシャツ』Tシャツを着用しており、スリット入りスカートのシルエットもすらりとした神楽さんと向かい合ってマイ恥ずかしさゲージ50%増。1時間後、今回唯一の滋賀部隊、黛零さんが到着。これまた長身の爽やかな印象の方で、しつこいようだが『Tシャツ』Tシャツをまだ着用していた私はマイ恥ずかしさゲージついに極大に達し、針が振り切れて壊れてしまったので以後開き直ることにした。
名古屋を知り尽くしたという感じの神楽さんの的確な案内にて、ガイドブックにも載っていない近道を通ってゲームスペース『エル・ディスパレホ』へ。茶を飲みながらテーブルゲームやカードゲームが楽しめるためゲーム好きの溜まり場となっている、いい感じにだめなスポットと聞いていたのだが残念ながら本日休業。階下の茶店で夕方までしゃべくりたおす1次会となった。なぜか、方言の話にやたらと花が咲く。
夕刻、一行は今回の目的地の1つである居酒屋『月天』に向かった。ここは女性店員が全員、白装束に赤い袴の巫女コスプレをしているという飲み屋である。どうやら神社を意識しているらしく、入口下りてすぐに手水があったり、メニューに「お供え物」というカテゴリがあったりする。切り分けているうちになんだか純なものを陵辱しているような気分になる「トマト姫」や、色といい艶といい「まぁご立派(おばちゃん風アクセントで)」とコメントするしかない「米ナス殿下」など料理のネーミングも楽しい。
まずは生ビールで勢いをつけた私は、用意のフラッシュ付き『写るんです』を片手に、注文を取りにきたロングヘアの可愛らしい巫女さんを呼び止めて、「一緒に写真撮ってください」と迫ったのだった。
「実は、ここの巫女さん装束見たさに、はるばる大阪から来たんですよ」
本当は店内撮影禁止だった様だが、我々のあまりな物好き加減が店側の心を動かしたのか許可が下り、巫女さんは苦笑しながらもちゃんと両手を合わせて写真に収まってくれた。『月天』のスタッフの方々、ありがとうございます。何も御礼は出来ませんがこの場を借りて宣伝しておきます。この店は良いところです。
2軒目は私のもう一つの狙いである『監獄in食』。客席が全部、鉄格子のはまった牢屋になっており、客は監獄の中で飲食するという、これまた色モノの飲み屋だ。ここで我々は、今回のオフのキーワードともいえる、全員の想像を絶する料理の数々と遭遇することになったのであった。
まず乾杯は、金属の杯でよく冷えた『ドラキュラズ・ブラッド』から。メニューにあるのを見た途端、やはりSuccubus Clubのオフであるからにはこれを注文すべきだろうということで全員の意見が一致した。私は以前飲んだことがあったので安心して頼むことができたという理由もある。
サソリの石焼き:本物のサソリ(小型)が何匹も、熱した石の上で焼けた状態で出てくる。唐揚げの要領で炎をあげている塩を少々つけて食す。私個人的にはクリスピーで悪い味ではなかったと思うが、神楽さんはこれに手をつけるのを断固拒否した(笑)
毒入り? 死刑囚のヘボ飯:美夏さんが最初に箸をつけて、「これは……」と絶句。勧められるままに食べた者がみな、箸を手にしたまま凍りつき、オフ終了まで語り草となりつづけた伝説のメニューである。ベースはどこか懐かしいとさえいえる味で炊き込んだ飯なのだが、問題は米と一緒に炊き込まれている代物だ。黒い触角が生えた頭(の一部)といい、同じく黒くつやつやした胴体(の一部)といい、おそらくアリの一種なのだろうが問題はそのサイズである。私もご飯粒のすきまから出てきた黒い物体を目にした瞬間、「うっ……」と呻いたまま数秒間、機能停止してしまった。目の焦点を少し手前に合わせて、ややうつろな目で食べるのが完食のこつである。
R指定のコーヒーゼリー:食べればたちまちネーミングの理由に納得。甘さ控えめどころか、ノンシュガーのブラックコーヒーゼリーなのである。たしかにお子様にはちょっと食べさせられません。
マル秘ア・イ・ス:やけに大盛りのシンプルなバニラアイスが出てきたと思ったら、崩してみて吃驚、「な、中から湯気が出てるよ!」……中身はふかしたカボチャかサツマイモらしいのだった。ちなみに美夏さんが冗談で「まるかぶアイスください」と言って頼み、「は?」と素で聞き返されていた。
『監獄in食』の系列店『ビストロ教会』が名古屋駅近くにあることが判明し、行こうかどうか迷うが結局ゲーセンでTyping of the Deadに興じることになった。明朝、巨大マネキン「ナナちゃん人形」の下で待ち合わせを約束して解散。
<つづく>
11:30 帰宅いたしました。さすがに今から報告はちとつらいのできちんとしたご報告は明日まとめてということで。
参加された美夏さん、神楽さん、黛零さん、お疲れさまでした。おかげさまで大変楽しいオフになりました。
ところで、なんで、豚なんですか。
蚊取り線香を入れるあの陶製の容器の話ですよ。
何の飾りもない、ただ円筒形のものの次に多いのが、豚形。あたかも、昔ながらのものは豚形といわんばかりに、ちょっとレトロな雰囲気を漂わせているが、ほんとうに昔から豚が標準だったのか。そうでなければ、スタンダードが豚形になったのは、いつからの話なのだろう。
掲示板、復活しました。ついでにデザインを統一してみました。
明日はSuccubus Clubの名古屋オフ会なので、更新は明後日になります。
「Tシャツと書いてあるTシャツ」も完成しました。いい感じにばかな柄になってます。明日はこれを着てる奴が私ですよ。
はじめ、ひとりで名古屋に行って、店員が巫女さんの格好をしている居酒屋で冷や酒を飲みながら巫女さんコスプレを鑑賞するだけの計画だったのに、ずいぶん遠くまで来てしまった。
体力温存のため、今日は早く寝ます。おやすみなさい。
お涙頂戴ものの演出につい涙を誘われるのはまあ、当然のこととして、人を泣かせることを全く意図していない物を見聞きした時、不覚にも涙ぐんだりしてしまうことがある。「琴線に触れる」というのだろうか。しまったと思った瞬間には目頭にじわっと涙がにじんできて、それを隠すためにわざわざ空あくびをするはめになったりして、はなはだ厄介だ。
私の場合、うっかり電車で読んではいけない最たるものが心理学系の本である。どういうわけか、この手の本に使われている言葉は、私の「琴線」にヒット率がきわめて高い。「自己の無価値感に苛まれ」という言葉を読んだ瞬間じわっと来るのはまあ、自分なりに判らなくもないが、「髪の毛を引き抜き」という箇所で涙ぐんでしまった時には、己の正気を疑いたくなる。どうしてそんな言葉に感情を動かす力があるのか、と不思議に思うよりたかが「バウムテスト」などという六文字に動揺させられる自分がいやで仕方ない。どうせ無駄な塩分と水分を流すのなら、せめてもっと普通の人間らしい、映画の感動的なシーンなどに、じわっときてほしいじゃないか。
夢をめざすには遅すぎる歳かもしれないが、今の職場に永住したくもないし。
400円出してキットカットを買ったのだった。
ふつう、キットカットといえば某有名菓子メーカーが製造している、ウェハースをチョコでくるんだ甘いスナックのことだが、もちろんそんなものに私がわざわざ400円も払うはずがない。
それはインド製らしかった。製造会社の住所がカルカッタになっている。そして、なんだか日本のキットカットのまがい物のようなオレンジの小さなビニル袋に入っており、『Kit Kat』と妙にアジア臭い書体で商品名が印刷されていた。袋の一部が透明になっていて、どうやら、妙に黄色い色をした柿の種のようなものが中身らしかった。みるからに辛そうだ。
「やみつきになる辛さです 400円」
と、店主が手書きの説明カードをつけていた。辛いのに名前がキットカットというのが面白くて、即座に一袋買った。それは店主の趣味でやっているような、わけのわからない品物が並んでいる雑貨屋だったから、暇そうな店主が目を丸くしていた。
「入ってきて、こんなに早く物を買っていかれたお客さんは初めてですよ」
そう言われても返事に困る。
「いや、なんか、面白かったから、これ」
「そうでしょう。味はね、……まあ、言わないでおきましょうか」
と店主は意味ありげに笑った。
帰ってきて開けてみると、フレークとピーナツと、その他正体不明の緑の豆に、カレー味の香辛料がたっぷりふりかけてある。見かけにたがわず恐ろしい辛さで、三口も食べると水を飲まずにいられなくなり、五口も食べるとそれ以上口に運ぶ気が失せるのだ。ちょっと休憩。
しかし、五分もすると、『あれは、辛かったなあ』と思いながら、またつまんでいる自分がいる。あまりの辛さに、さっき食べて辛かった記憶がとんでしまっているのだ。記憶がなくなるほどの辛さを、私は初めて知ったのだった。
風呂に入っていると、何の前ぶれもなく、ドアがすうっと開いたのだった。
「おーい、入ってるんだぞ」
抗議したが返答はない。それに、家人が開けたにしてはえらく遠慮がちな勢いである。私は「何か用?」と聞きながらドアを開けてみるが、誰もいない。立ち去った足音も聞こえない。
狐につままれた気分で風呂上がりに「いくらなんでも声もかけずに開けるとはひどいじゃないか」と家人に抗議した。
家人はきょとんとした顔で自分はずっとTVを見ていたと言う。
じゃあ誰が開けたんだろう。
弦楽五重奏団の練習場所である市民会館には食堂がある。一度もそこで飯を食ったことはないが、ガラスケース内のメニューを見るたびに新たな発見をしてしまう。
親子井 ○○○円
牛井 ×××円
天津井 △△△円
天井 ○○○円
天井。てんじょう。やはり汁は少な目で衣がぱりっとしているのがいいです。
「Tシャツ」と書いてあるTシャツを作ろうと思って、アイロンプリント用紙を買ってきたのはいいが、肝心のTシャツに適当なのがなかなか見つからなかったのだ。たいてい、既にプリントが付いていたり、妙に濃い色だったり、ポリエステル地だったりするのである。本日ようやく白無地のTシャツを入手する。
明日は休みがとれたのでTシャツ製作日。
奇妙なところに付いているとは思ったのだ。
前の職場の話である。デッキブラシの先端部分、毛の植わっている木製のあの場所に、半透明で褐色の丸いゴム状の吸盤がびっしり付いていた。どう考えても、何かの役に立つとは到底思えない部位である。というか、デッキブラシにそもそも吸盤は必要なのか。不思議でならなかったが、それでなくとも当時の職場は怪しさ満点だったので、デッキブラシがちょっと変わっていたぐらいでいちいち尋ねてたら仕事などできなかったのである。
そんなある日社員総出で大掃除をすることになり当然ながら私も駆り出された。
「君はそこの床掃除ね。裏の物置にデッキブラシがあるから」
むろんそれは件の「吸盤付き」デッキブラシである。いったい、吸盤はなんのためにあるのか。この会社では吸盤を使用した特殊な掃除方法を実践していたりするのだろうか。良い機会だと思って意を決して聞いてみたのだった。
「あの、部長。このブラシに付いてる吸盤は何に使うんです?」
「やーね、それはキノコよ。ちゃんと落としてから掃除してね」
キノコよ、の時点で私が「わあ」と叫んでデッキブラシを思い切り放り投げたからとて、どうか責めないでもらいたい。そんなもので床を掃除したら最後、キノコの菌糸がフロア中にまんべんなく塗布されて、あたり一面、吸盤キノコだらけになるに違いないのだ。私は、床に吸盤の生えた職場で仕事をする気にはさらさらなれなかった。
昼飯は超高層ビルから地上の展望を見下ろしながら冷やしラーメンを食す。前評判通り大変に美味しい。しかし、昼休みが45分しかないのに中華料理店でランチなんぞ頼むから、帰りは競馬で第4コーナー回った後のお馬さん並みのダッシュで職場に戻るはめになった。優雅なのか優雅でないのかよく判らない。
TRPGサークルの例会。発売されたばかりの『ヴァンパイア:ザ・マスカレード日本語版』を早速遊ぶことにする。プレイヤーは Werewolf: The Apocalypse 経験者だが Vampire や Revised Rule に関しては初心者同然である。いつも、初心者を相手にしているような気がする。一度ルールブックを読みこなした熟練プレイヤーばかりのセッションがやりたいのだが、そんな具合だと私の方がついていけないので現状に甘んじようと思う。
Storytelling System自体には慣れているプレイヤー達だが、私の私家訳による用語と公式訳のギャップに戸惑った(『〈蠱惑〉は〈威厳〉になります』『えっと〈虚言〉は旧〈かけひき〉技能だから』)のと、今回初めて導入したアーキタイプの選択に頭を悩ませた模様。説明しながらのんびりやったせいもあるが、キャラ作成に2時間を要する。
シナリオと言えるほど長くはプレイできなかったが、とりあえず〈飢え〉に苛まれたPCが次々と人血の誘惑に屈していく様は呈示できたので良しとしよう。女性が多いのにちょっとストーリーテリングがねちっこすぎたかな、とは思うが。皆が筋を忘れないうちにもう一度セッションをする機会があれば続きをやる。
ルールブックに早速、誤植を発見。p.121 "Confonmist"は"Conformist"のミススペルである。
また、p.56の「メイジ」とp.310の「魔術師」は訳語を統一すべきだと思うが、どうだろう。いくら原語がMageとMagiだからと言っても、指し示しているのは明らかに同じ集団だし(事実索引では「魔術師 56, 310」と同一用語扱いされている。それとも、MageとMagiは別物なのだろうか。私はMage方面はからっきしなので、詳しい方のご教授ねがいたいものだ。
昼飯を買いにコンビニに行くと『○ェラティーヌ』なるゼリーを発見。「今までにない食感」と書いてあるので、変な物研究家の当然の義務として買って食す。林檎味でかなり甘ったるいがまずくはない。ないが、やはり妙な食感である。普通のゼリーより固めでぷるぷるしているが、蒟蒻ゼリーほどの歯ごたえはない。というか、なんか舌触りが卑猥なものを連想してよろしくない。まずくないのに舌触りゆえに食べるのにためらいを感じてしまうというのは、いつぞやの牛タンの煮物以来であった。しかし、食べた私は「ああやっぱりろくでもない食品だった」と胸をなで下ろすのである。なぜか。
それは予定調和とでもいおうか、私が珍しいと思って食べた物はまあ大抵において美味しくないという結果に慣れているせいだ。だから、こないだ駅構内のジューススタンドで飲んだ「アボガド入り冷やし抹茶」が美味しかった時は奇妙な不安感に襲われさえしたのである。だって抹茶にアボガドが入ってるんだぜ。奇天烈な味を期待させるじゃないか。なのに普通に美味しかったんだ。そんなにインパクトのある名前なのに、味が普通では話のネタにもなりはしない。
美味しかったから不満を覚えるなどとは、私も相当歪んできたようだ。
しばしば、トイレの洗面台には「衛生のため手を洗いましょう」などと張り紙がしてあるが、手を洗ったから衛生的とは限らないんじゃないかと思うのだ。
手を洗うには、まあ当然のことながら蛇口をひねらねばならず、洗い終えた後は、これまた当然のことながら手で蛇口を締めなければならない。
しかし、その蛇口は、洗う前に汚い手で触った物なのだ。
これで本当にきれいになったと言えるのか。
英語版Mac OSの標準システムフォントは
Genevaという名前なんですが、
ずっと「ジェノバ」と読んでました。
まさか「ジュネーブ」だったなんて。
青天の霹靂。
患者さん教室 TEL 0000-00-0000
たしかに、今の世の中、米のとぎ方からギャグの飛ばし方まで、大抵のものは金さえ払えば教えてもらえるようになっているが、それにしても『患者さん教室』というその看板はあまりに不可解だった。
教室とは役に立つ知識や技術を教える場所である。すると「患者さん」を教わると何やら有益なことがあるにちがいない。しかし「患者さん」を習うとはどういうことなのだろう。なにしろ、患者、である。ふつう教室とはなにかの行為を教えるものだが患者というのは実体であって行為ではない。いや、ことによると行為と呼べるかもしれないぞ。
患者と呼ばれる人々はその定義上、病気や怪我を患っている。世の中に真面目に病気と闘っている人がいることを承知で書くが、人は病気になって、周囲から心配や同情などされると、「俺は病気なんだ。ちゃんと、病人らしくしてなきゃだめなんだ」と奇妙な意識にとらえられることがある。軽い病の者にとってこれは問題だ。ともすれば、彼は病人でないように見えてしまう。そこで演技が発生するのである。「患者さん」を教えるのは難しいが、「患者さんらしく見せること」を教えることはできるだろう。「患者さん教室」の目的はそこにあるのではないか。
しかし、いったい病人らしさとはなんだろう。
まず第一に、病気を患う者は、顔色が悪くなければまずいのではないか。
小麦色に灼けた肌や、紅潮した頬というのは、どうも病気にはふさわしくない。だからといって、顔色の悪さをどう演技したらいいのだろう。蒼白い顔にするため化粧をすればいいかというと、それはちょっとどうかと思うのだ。化粧は近くに寄ると簡単にばれる。性別によっては、化粧していることが悟られるとむしろ、病気の種類を疑われることになるだろう。化粧はだめだ。少なくとも男の病人にはよくない。では、メーク以外の方法で病人らしさを演出する方法はあるだろうか。
「とろんとした目をする」
目を半分閉じて、どこか遠くを見る。相手に視線を合わせて話をしてしまうと、明確な意志が感じられてどうにも病気らしくないので、絶えず視線を泳がせる。とにかく、焦点の定まらない目つきがよい。これは病人としての演技の初歩である。
「口を半開きにする」
これも重要だ。真一文字に口を結んでいるというのは、これまた明確な意思を感じさせて、病人とはいいがたい。
「足下を危うくする」
考えてもみたまえ。すたすた歩いてゆくような病人ではまずいだろう。足下は緩慢だ。そして、右へ、左へ、蛇行するのだ。まっすぐ歩くなど、もってのほかだ。
ことによると「患者さん教室」とは、そういう患者らしい振る舞いを学ぶ場なのかもしれなかった。
メモするという行為が苦手で、電話しながらメモを取ると、話したことを覚えているうちに清書しなければ、まず他人には読めないばかりか、自分でも何を書いたんだか後で読み返してわからないことになるのだった。たとえばスケジュール帳を開くとある日の欄に「ゆのみ持参」とだけ書いてある。それも無職だった時期だ。いったい、私はゆのみをどこに持っていかねばならなかったのだろう。実際にゆのみを持って外出した記憶はない。
ともかく、絶対に飛んでくるはずのない包丁が飛んできたことは、否定しようもない事実だった。台所の包丁が一本減っていて、しかも家中くまなく探しても、壁に刺さるほどそんなものを飛ばせそうな人間はおろか何かの仕掛けすら見つからないのである。
包丁は二人して引き抜いたら刃がぼろぼろになったので、こっそり燃えないゴミに出した。壁の傷の上にはポスターを貼った。
そして私は次の日有無を言わせず近所の神社に彼女をひきずっていってお祓いを受けさせたのだった。
Iにつきまとっているのは霊だかプラズマだか知らないが、お祓いのあまり効かない相手であるらしかった。今にして思えば、お祓いを受けた神社に祀られていたのが商売繁盛の神様だったせいかもしれない。Iはだんだん学校を休みがちになっていった。
これではだめだ、と私は思った。神社はあてにならないことが判った。あとは坊さんにお経を読んでもらうか神父さんに悪魔払いをしてもらうしかないだろう。しかし、近所には寺はないし神父に知り合いもいない。だいたい、神社のお祓いと同じ結果にならないという保証はどこにあるのか。
中学生なりに私は考えた。そしてなんと
「じゃあ自分で除霊してやろうじゃないか」
というとんでもない結論に達したのだった。いまでこそ黒魔術師だのモリアーティ教授だのと言われている私だが(ちなみに両方とも事実無根だ)、当時はまだまだ純真とはいえなくても善良な若者だったのだ。
以来私は定期テスト前もかくやという勢いでオカルト関係の書物を読み始めた(むろん親は気味悪がったが)。けっきょく、人に取り憑いた霊を追い払う方法を書いた本は見つからなかったが、西洋魔術で場所を浄化して不浄な存在が立ち入れないようにする、という術を見つけたのだった。ならばIがいる場所を浄化すれば、彼女に取り憑いている奴もいたたまれなくなって離れるのではないか。と、素人中学生なりに一所懸命考えたわけである。そもそもそういう術を使うには素質と修行が必要である、という事実に思い当たらなかったあたりは中学生の浅はかさだ。
そしてついにある放課後、学校の教室を閉め切って私は「除霊」を始めたのだった。当時参考にした本が手元にないので詳細は思い出せないが、ともかく、東西南北に召喚の五芒星を書き四大天使を召喚して行なう、わりと基本的な術だったように思う。
Iを傍らに呪文を唱え終えたとき、突然、ドアも窓も閉め切ったはずの室内に風が渦巻き、壁の張り紙が一斉に宙に舞った。鍵をかけた窓がひとつ――よくあるクレセント錠で、外側からは
まず開けられないタイプだ――ばたんと開いた。
その向こうには誰もいなかった。
今にして思えば、あんな「除霊」が実際に効力をもっていたとは思えない。が、なぜかその日以来Iの発作はぴたりと起こらなくなり元の健康優良児に戻った。バレンタインには手作りの泣くほど辛い『わさびチョコ』をくれたぐらいだ。たぶん、Iの発作自体、なにか心理的なもので、除霊そのものより私が彼女のために労力を費やした事実が深層心理になんらかの影響を及ぼしたのではないかと思う。
まあ、そうだとしても、あの包丁や、密室の中で吹き荒れた風のことは、どうしても説明できないのだった。
ちなみに、私がこんなオタクまがいのことをしたのは中学のこのときだけで、現在はオカルト関連書を読むにしても単なる学術的興味にとどまっていることを、自分の名誉のためにひとこと言い訳しておく。
Iは現在、りっぱなお母さんになって元気にやっているそうだ。
『あのさ……今晩、父さんも母さんも用事でいないんだ……発作が起きたらどうしよう』
電話口の幼なじみIの声は震えていた。
「うちに泊まりにくる? 窮屈だけど一人で寝るよかましだし」
『委員長の家は怖いからイヤ』
霊感体質のIは、私が住んでいる団地の棟から飛び降り自殺者が出たことを聞いて以来数年、頑として私の家に近寄ろうとしない。
「じゃあどうするよ?」
『委員長が泊まりにきてよ。夕飯作ってあげるから』
「……あの、それだと私の方が怖いんですけど……(いつ発作を起こすかしれない、女の子と一晩中二人っきり……)」
『どうせあんたは見えないし聞こえないから平気じゃない』
「そういう問題じゃ……ちょっと待て。まさかそういう問題なのかっ!?」
『詳しくは来てから説明するから』
「冗談じゃない、そんなのは誰か専門家をあたって……」
『じゃあ紹介してよ』
「うっ……だけど私だって詳しいわけじゃないぞ」
『でも委員長が近くにいるとき発作を起こしたことないもん』
「そうだ彼氏は? そういう時こそ彼氏を呼ぶべきじゃないのか!」
『法事で田舎』
「……」
『委員長が来てくれなくて、私が一人で発作起こして死んじゃったら、化けて出てやるからね』
「……わかりましたよ、行けばいいんでしょう行けば」
『判ればいいのよ』
まったく最初の頼りなげな声は芝居だったのか、とそのときは思ったが、その晩私はその真相を思い知ることになったのだった。
両親をなんとか言いくるめてIの家に来たときにはすでに日はとっぷりと暮れていた。
Iお手製のカレーライスを食べて(まあ、中学生の自炊といえばそんなものである)、大人がいないのをいいことに深夜までTVゲームをしていたが、そういう時にかぎって、ふっと会話が途切れる瞬間が訪れるのだった。壁掛け時計の秒針の音が急に大きく響き始める。
「……説明してくれるって、言ったよな? そういえば」
Iはしばらくしてようやく重い口を開いた。
「あのね、『こっくりさん』してた子たちの横を通った時から始まったの、あの発作」
彼女は、呼び出された「こっくりさん」というのは然るべき手順を踏まないと立ち去ってくれないのだ、と説明した。ところが初めて発作がおこったあの日、いつになく早く教師が来たもので、こっくりさんをしていた女子生徒達は送還の手順もそこそこに紙やら鉛筆やらをばたばた片づけていた。そうとは知らず横を通ったIだが、急に胸が締め付けられるように痛くなって、これはただの病気じゃないと直感したのだという。
「なんで『こっくりさん』に関係あると思ったわけ?」
「だって……ずっとついてきてるんだもん」
Iはすっと片手を上げて部屋の片隅を指し示した。
私には、そこにはただ壁紙と何もない空間しか見えない。
「私はなんにも見えな――」
言葉の残りは、私の頬を掠めた鋭い風に引きちぎられた。
ガツッ、と背後に鈍い音がした。
呼吸するのも忘れて、私は壁しかないはずの後ろを振り返る。
包丁が。
刺さっている。
壁に。
深々と。
刃の半ばまで。
壁紙一枚めくればコンクリートの壁に。
ふと我にかえると、Iが私にしがみついたままガタガタ震えていた。
「寝てると、夜中に首をしめたりしてきたんだけど……今日は、委員長がいるから……近づけないから……」
霊とかお化けが見えも触れも話せもしない私ですら、そのとき背筋をつめたいものが這い上がるのを覚えたのだった。
<続く>
盆である。
やはりこの時期には怖い話を書かねばならないだろう。
その手の『霊体験』というのは、誰しも一つや二つはちょっとしたエピソードを持っているもので、中には連続エッセイが書けるほど体験豊富な奴もいる。
だが私が語れるのはたった一つの物語しかない。
語れるだけで、私はその体験に関する解釈をもたない。
私はいわゆる霊感体質とはほど遠い。
生きている人間なら隣の部屋で起きる気配まで判るが、生きてない人々のほうはてんで駄目である。「霊が見える」とか「いる」とか言って大騒ぎするのは、人の関心を引きたくて言い出したのが自己暗示になって、本当に見えると思いこんでしまったんじゃないのか、と、子供の頃からそういう冷めたことを考えていた。
中学2年の夏だった。
ちょうどコックリさんが流行っていた時期である。女子生徒は授業の合間と休み時間と放課後に欠かさずノートに図を書いて「おいでくださぁい」とやっていた。よくそんなに動物霊に聞くことがあるものだと思うが、残念ながら彼女らが何を尋ねていたのか私は知らない。
というのも彼女らのコックリさんの手順には
「召喚を始める前に委員長(私)を教室から追い出す」
というのが含まれていたからだ。私が近くにいるとことごとく失敗するばかりか、コックリさんが「委員長が近くにいる時は来たくない」とまで言ったそうである。なんだか理不尽な話だが、当時の彼女らにとって霊のお告げは教師の言葉より重かったから、逆らいようもない。
ともかく、その日もいつものように追い出しをくらった。
「委員長ー、委員長ー、ごめん。始めるから……」
「はいはい、いま出るよ」
当時の私はある理由で生徒会室に入り浸っていたので、居場所には困らなかった。別クラスの友人と雑談しているうちにチャイムが鳴り、慌てて教室に駆け戻ると、なぜか異様な緊迫した空気が。
「何かあった?」
「Iが倒れたらしいよ」
なるほど教室の隅に人だかりができている。うずくまっている女子生徒は幼なじみのIらしい。社会の教師も心配げにのぞきこんでいた。
「I、気分が悪いのか?」
「I……大丈夫か? 生きてる?」
「大丈夫……治った」
彼女は蚊の鳴くような声で言った。立ち上がるとまだ顔が真っ青である。
もちろん保健室直行だった。
その授業が終わった後、どうせまた追い出されるならIの見舞いに行ってこようと思ったが、なぜかお声がかからない。
「あれ? やらないの?」と冗談めかして尋ねても誰も答えない。
彼女らの顔はさっきのIにおとらず蒼白だった。
「びっくりしたな。Iが倒れるなんて」
ふだんのIは私よりヒットポイントが倍ぐらい多そうな健康優良児なので、これは私の本心からの台詞だ。
「あたしも自分でびっくりした。朝はぜんぜん何ともなかったのに」
「貧血?」
「ううん。胸が締め付けられるように痛くって」
「実は心臓病とか(笑)」
「体育の授業にはちゃんと出てるでしょ!」
頭をはたかれた。
「なんだ元気そうじゃん。次の授業出る?」
「うん」
「ひょっとして仮病?」社会科の教師は生徒から嫌われていたのだ。
「苦しかったのはほんと。なんか委員長が来たら治った」
「わはは、恋わずらいですか? (声色を作って)『オレに惚れると火傷するぜ』」
すぱーん!(打撃音)
……うう、いくら彼氏アリの子に禁句の冗談とはいえ、使用済スリッパでツッコミを入れるのはひどいよ。
Iの『発作』はその後も頻発した。突然、締め付けられるような胸の痛みと呼吸困難に襲われるという。さすがに担任も心配して病院での検査を勧めたが、異常はなかったらしい。
伝聞として書いているのは、私はいちども彼女の『発作』の最中を見たことがなかったからだ。同じ教室にいる限りIは元気そのものだったし、発作が起きたと聞いて心配して見に行ったらもうケロッとしている。私はコックリさんだけでなく彼女の『発作』にも嫌われているらしかった。
「あ、委員長、大変! Iがまた玄関で発作起こしたって。救急車呼んだほうがいいかもしれないから、保健の先生探してきて!」
「……(自分で行けよな)」
私は立ち上がり、保健室には行かず、玄関に直行した。下駄箱の前でIがへたり込んでいる。
その前に立ったまま私は言った。
「……治った?」
「うん……」
顔色は悪いが、中学生の目から見ても救急車を呼ぶほどの容態には見えない。
「なあ、I、それ……ほんとに病気か?」
「……わからない」
「ひょっとして、私じゃなくて彼氏に来てほしかった?」
Iは黙って首を振った。
「だったら芝居でこんなことしないもん。でもあんたが来るとなぜかぴたっと治るの」
「ん〜、私を薬にされてもなぁ(ぽりぽり)」
「あたしがしたわけじゃないわよ」
「だけど四六時中一緒にいるわけにもいかないじゃん。夜中に家とかで発作が起きたらどうするの」
「電話で呼ぶ」
「……それはやめてくれ頼む……」
しかし、数日後その話は現実のものとなったのだ。
『あのさ……今晩、父さんも母さんも用事でいないんだ……発作が起きたらどうしよう』
電話口の彼女の声は震えていた。
<続く>
やたらとくしゃみが出ると思ったら、なんか変な噂が流れてました。
私は関係ないです。というか、関係あったら今の職場でくすぶってたりしませんとも。
病院に行って、久しぶりに何も考えずに過ごす一日。
6時間眠りました。
あすから盆休みだけど日記は休まない。
仕事で得意先と請求書の件で電話していたのだった。
「じゃあご請求は御社宛で……どちら様宛で伝票お作りしましょうかね?」と私が訊ねると
「ものは相談なんですがね」と先方の担当者がふいに言い出したのである。
「たとえば僕が『月光仮面』と名乗ったとしますよね。そしたらお宅、弊社の月光仮面宛で請求書送ってくれます?」
さしもの私も3秒間ほどその場に凍りついた。いちおう、うちの会社も先方の会社も、業界ではちょっと名の知れている堅いところなのである。そんな請求書に『○○社 月光仮面 様』と書いて送るのは、なかなか魅力的な悪戯に思えた。しかし、あとでその担当者に『月光仮面なんて名乗ったおぼえはない』としらを切られれば、怒られるのは私の方である。あやういところで自己保存本能がはたらいて「いや〜勘弁してくださいよ〜」と笑ってごまかしたが、日常にふいにぽっかり口をあけた非日常をかいま見た思いなのだった。
ところが、べつの職場で働く友人に、まさかこんな経験をしたことはないだろう、と思って件の出来事を話すと、その男――田中(偽名)としておこう――がぽつりと言ったのだ。
「あ、それ、俺もやったことある」
こともあろうに田中(偽名)は、どうせ社外に出ずにすぐ破棄してしまう伝票だからと思って、自社担当者の欄に○ャア・アズナ○ルと書いたそうだ。もちろん、それはマーフィーの法則に従って上司の目に止まり、社内放送で『伝票にシャ○・アズ○ブルと書いた田中(偽名)君、言い訳を考えてから部長のところにおいでー』と名指しで呼び出されたあげく、こっぴどく叱られた。予定調和という奴である。
田中(偽名)と違って小心者な私には、月光仮面名義の請求伝票は作れそうになかったが、それでも、自称月光仮面氏が「あ、ところでそちらさんのお名前は……」と訊ねてきたときに、こう言ってやればよかったと思うのだ。
「貴様に名乗る名など無いッ!」
7000hitを超えたのを忘れていた。
ちょうど給料日と重なる8月15日に発売されるというから指折り数えて楽しみにしていたのに、6日も早く発売するとは、何ということをしてくれたんだアトリエサード。まったく、嬉しいことこの上ないじゃないか。ありがとうございました。
昨晩、すでにギルドとイエサブの店頭に並んでいたと聞いて、医者の診察が終わるなり神戸に直行したのだった。ちなみに鼻血は「ぜんぜん心配ないですよう」と、きっぷのよい女医に太鼓判を押されたので、猛暑のせいと思うことにした。それよりも問題はV:tMだ。昔から議論の種になっていたあの単語とか、あの表記とか、あの訳語とかが、どう解決しているか早く見たいではないか。骰子回転劇場のコンテンツの訳語も合わせないといけないし。
まだ、本当に目を通しただけだが、第一印象は『製作チームの苦労の結晶だなぁ』だった。なにしろ、原書のレイアウトをほぼそのまま再現しているのだ。英語から日本語に翻訳すると、どうしたって文章量が増えてしまうものだが、それを原書と厚みは変えず、ひとまわり小さいサイズに詰め込んだ技術は称賛に値する。文字が窮屈に見えるのはやむをえまい、下手をすれば上下二分冊になっていたかもしれないんだから。
訳語も相当に練られたことが目に見えるようで、Disciplineを『訓え(おしえ)』と訳しているのには、はっきりいって脱帽した。脱いだ帽子をそのまま食べられるぐらい脱帽してます。継嗣(Progeny)など今度は日本語訳のほうで読み方でもめる単語が出てこないか心配になったりしますが。The Rackを敢えて「物置」と訳した理由も私には判りませんが。しかし、なにはともあれ、この日本語版が広まれば、私もSTばかりでなくプレイヤーになって楽しめるだろうから、めでたいです。
秘蔵の地酒でひとり宴会。
夕方、来月開催のコンベンションの準備打ち合わせの後で、酒好き同士が出会った時のまあ当然の帰結として、大衆居酒屋に飲みに行ったのだった。
ビールを大量に摂取した当然の帰結として、トイレに行ったところ、洗面所を鮮血の海にしてしまったのだった。
これが吐血ならまだシリアスにもなれようが、日記を読んでいる方ならご存じのとおり、私は鼻血体質なのだった。自分の家のでもない洗面所の流しをせっせと洗っている自分にちょっと哀れを感じる。
明日は仕事を休んでちょっと病院に行ってきます。
イエサブの売り出しでWoDサプリメントを20冊買って帰る。さすがに、肩が抜けるかと思った。両手に巨大な紙袋を2つ提げた格好は、小学生が罰としてバケツを両手に提げて廊下に立たされている姿に酷似している。かなり、ばかに見えるのだった。
酒飲みで辛党の私といえども、こうも猛暑が続くと冷たい甘物が食べたくもなるわけで、コンビニに行ったのだった。見れば棚に、涼しげな水色のカップに入って
ネムラナ
イゼリー
というゼリーがあるではないか。『ネムラナイ・ゼリー』、眠らないゼリーとは初めて見た。無生物が眠るのかどうかという問題はさておき、珍しいもの、飲み食いしたことのない物に弱い私は、即刻そのゼリーを買ったのである。しかしよくよく見れば、カップのラベルには
ネムラ
ィリゼ
と書いてある。私はすっかり困惑した。ネムラ・ィリゼとは何だ。発音困難なカタカナ名前は、何という名前だったか、伝説上の大陸の名を冠した雑誌の文通欄によく見受けられる、自称前世が神官だったり護衛隊長だったりするひとびとを彷彿とさせる。前世とゼリーに関連があるとは思えない。思えないが、ひょっとしたら、食べたら前世が見えるとか、もっと即物的に、蓋を開けると裏側に前世占いが書いてあったりするのかもしれなかった。いずれにしろ、早く食わねばゼリーがぬるくなる。そこで
食った。
食った。
さらに食った。
……ラムネの味がする。
私はやっと、この水色ゼリーの商品名が『ラムネ・ゼリー』であることに気づいたのだった。そう、あの意味不明の文字の羅列は、単にラムネゼリーを昔風に右から左に書いただけのものなのだ。
仕事帰りにイエサブに行って、昨日ひとえに持ち帰る体力がなかった故に泣く泣く諦めた残り10冊ほどのWoDサプリメントを買おうと思ったが、同僚に夕飯を食おうと誘われる。生まれてこのかたで最も美味しいカレーだったのでこれはこれで善哉。
旦那がトライアスロンをしているという女性と話していたのだった。
何kmだか忘れたがまず泳いで、上陸後自転車を100km以上漕いで、その上20kmだか25kmだかを二本の足で走るのだという。人間というのはそんなに丈夫な生物だったのか。類友というか、友人にとかく不健康な生物が多いので、認識を新たにさせられてしまったのである。
しかし、いくら丈夫な生物でも食事は必要だ。ましてトライアスロンというのは競技開始から5時間か6時間ぐらいずっと休憩なしで運動しっぱなしなのである。競技中に腹が減ったりしないのか。訊くと、マラソンと同じで途中に補給所があって、走りながらバナナなどを食べるのだという。いくら、柔らかい食べ物だからといって、走りながら食べたら喉に詰まったりしないのか。補給所通過直後に、ンガググとか、サザエさんみたいな音を発している選手が、きっと一人や二人ぐらいはいるんじゃないのか。大会主催者が隠しているだけで。
しかし、バナナならまだいい。バナナは、走りながらでも皮を剥くことができる。いったん皮を剥いてしまえば、片手に持って食べることもできる。天津丼だと、そうはいかない。走りながら食おうとすると、まず、ご飯粒が飛び散る。卵も、多少落ちるだろう。そして選手の口の周りは、例のとろっとしたあんだらけになるに違いないのだった。
しかし、天津丼も、走りながら食うこと自体は不可能ではない。片手に丼、片手にれんげを持てばよい。そう、単品ならば大丈夫だ。定食になると、もうだめだ。おそらくカフェテリアによくあるプラスチックの盆の上に、天津丼と漬け物とギョーザと中華スープの皿を載せたまま、選手はそれを両手で持って走りつづけるしかない。そのときの彼の顔は、混雑する学生食堂で定食の盆を持ったまま空席を探して彷徨する学生のそれに近い表情を浮かべているだろう。
雷を伴った激しい夕立。駅が停電している。
2時間だけと決めて仮眠をとったはずなのに、3時間目に目覚ましを殴って黙らせる自分に少々厳しくしなければと思うこの頃。
TRPGサークルの例会でGMを張った後、別サークルの人と来月のコンベンションの打ち合わせ。あいだ1時間半ほど空き時間ができたのでイエサブに寄ったら、洋物TRPGのサプリメントがなんと100円均一のワゴンセールをやっている。即刻15冊購入、1500円也。なにせ、その前まで6210円だったハードカバーの"Law of the Night"まで100円だ。これを買わずに何とする。
先週2000円で買った "In Nomine: Corporeal Player's Guide" まで100円だったのは、多少癪に障ったが。
携帯の留守録が嫌いだ。
用件があるなら聞きますよと言っておきながら、ほんの30秒で「これ以上録音できません」とか宣って勝手に電話を切ってしまう、あの失礼ぶりはなんだ。制限時間があるというなら、録音を始める前に言ってくれればこちらも用件をまとめられるのに、予告なしに30秒経ったからと言って切れてしまうから、仕方なく何度も「すいません、さっき切れた件なんですが」と留守録を入れるはめになる。喋る相手が機械だけによけいに虚しい。ひどいのになると、最後に#を押さないと今しがた喋ったメッセージをきれいさっぱり忘れてしまう留守録もある。なんて、ばかなんだ。
今日も仕事でアポの電話を携帯に入れたら留守録で、「とりあえず……」○日に予約をとってます、と言おうとしたらその手前で「コレ以上 録音 デキマセン」と切られた。「さっき切れた件なんですが……もしご都合悪いようでしたら折り返し電話ください、番号は……」とこちらの電話番号を入れようとしたら、また切られた。
番号は、と言ったところで宙ぶらりんになってしまった台詞をもてあまし、電話機の前で突っ伏していたら、職場の先輩に
「なんだか、密かに一人で笑いをとってるタイプだよね」
とぽつりと言われて返答に窮した。観客がいるわけでもないのに一人ボケ一人ツッコミの一人漫才自家発電。
寝ころんでしまったのが運の尽きだった。
糸が切れたように眠りこんでしまい、気がついたら土曜の朝だった。
睡眠時間が短くても平気だったのは、単に、疲労を自覚していないだけのことらしい。恐竜並みの鈍覚を自覚し少々衝撃をうける。
昨夜は睡眠日と決めたので日記更新してさっさと寝ようと思ったら電灯を消そうとスイッチに手をかけた瞬間電話がかかってきた。
「いや、なんか、暇だったから」
と言う電話の主にちょっぴりどころではない殺意を覚えた。
朝リゲインとカフェイン4錠飲んだのを忘れて緑茶のペットボトルを飲んでしまう。カフェイン摂取量が合計500mgを超えたせいだろう、いちにち副作用の吐き気に悩まされる。私の身体には400mgが適量らしい。しかし、そろそろこういう体を張った真似はやめたほうがいいような気がする。
もう2週間以上、まとまって4時間以上の睡眠をとっていないことに気づく。
いまのところ体調に変化はないが、これはちょっとやばいのではないか。いやかなり。睡眠時間が足りないことより、それで全く平気なふうに思えてしまうことが怖い。なにしろ平均6時間は寝ないと保たないたちなのは自分でよく判っている。
というわけで、今日は睡眠日と勝手に決めてさっさと寝ることにする。
おやすみなさい。
小学生の頃、高層団地の15階や20階から水風船を落とすという悪戯が流行ったことがあった。水風船といえども、それだけの高度から加速つきで降ってくれば、ばかにできない威力になる。危険な遊戯とはまさにこのことである。
しかし考えてみれば、雨粒はもっと高い空から降ってくるのだ。数百m、いや下手したら数百kmの高みから、毎秒9mちょいの加速をつけて落下する水滴。地表に到達するときは銃弾の初速などメじゃない超高速に達していてもおかしくないはずじゃないか。雨が降るたびに我々が穴だらけにならないのは一種の奇跡ではないのか。
むろん、そうならないのは空気抵抗のおかげである。
職場を一歩出たとたん、夕立にジャストミート。
もちろん折り畳み傘など鞄に入っているはずはない。
雨に打たれてとぼとぼ歩く。昨日の時計難の次は、水難なのか。神よ私になにか恨みでもあるのか、と呟いたところで微かな既視感を覚えた。
水難というのは便利な言葉だ。水は地球上に普遍的に存在する物質であるから、人間が日々遭遇する災難にも水が関わっている確率はきわめて高い。大きいのでは海で溺れるというのから、些細なものではトイレで手を洗っているとズボンの誤解を招きかねない部位を濡らしてしまい、どうにも出るに出られなくなってしまった、というのまで、実に様々な事故を「水難」という言葉で表わすことができる。つまり人に向かってあてずっぽうに君は水難に遭う水難に遭うと言っていれば、かなりの確率で的中するわけである。これであなたもにわか占い師。ちっともありがたがられないだろうがね。
同様に使える言葉として「女難の相」がある。人類の半分は女性であるからして、確率的にいうと人災の半分は女性が原因のはずなのだ。それをいうなら「男難の相」も存在するはずだがどういうわけか女難の相ほどには耳にしない。女性運動家の方々は、Chairpersonなんて言葉を作ったり、生理休暇の普及に腐心するよりも、「男難の相」を言い当てる占い師を増やしてはどうかと思う。男だって女とおなじぐらい厄介事をもたらすのだという認識を広めることで、女性差別を取り除くのだ。
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