3月19日(火)

甘食

「かんしょく」ではない。「あましょく」である。
 今ではめったに店頭で見かけなくなったから、若い人々の中には生まれてこのかた食べたことはおろか見たこともないという方もいるかもしれない。

直径は5、6cmほどだろうか。平べったい円錐形をした、茶色で甘い焼き菓子である。女性が胸にボリュームを出したいときにブラジャーの中に入れるという、あの「パッド」に似た形状をしている。食感としてはメロンパンの皮の部分だけを固めに焼いた感じ、と言おうか。

しかし、こうして形状や堅さや味を事細かに説明することはできても、「じゃあなんで『甘食』と呼ばれているんだ」と突っ込まれると返答に窮してしまうのだった。甘くて食えるものなら他にいくらもあろうに、なぜこれだけが「甘食」なのか。だいたい、どこからどう見ても菓子にしか見えないものにわざわざ「食」という漢字をあてて食用であることを示したところで何の役に立つのか。これが食えなかったらいったい何に使うというのだ。ブラジャーに入れて胸を大きく見せるのか。

調べてみたところ、大辞林に微かな手がかりを見つけた。

あま-しょく【甘食】
菓子パンの一。薄く甘みをつけた円錐形のパン。甘食パン。

なるほど、甘食というのはパンの一種らしい。甘食パンの略で甘食というわけか。

まったく納得いかない。

そもそも食パンはなんで食パンというんだ。それがわからないことには甘食の謎も解けないようだ。

というわけで調査続行中。

3月11日(月)

やる気がない

最近、連日仕事場に泊まり込みで作業をやっていて、家にあまり帰っていないので更新ができなくてすみません。

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9日、10日と大阪に出張だったので、ついでに休みをもらって1日だけ実家に帰っていた。東京に帰る前に、大阪在住の友人と待ち合わせ、挨拶もそこそこに日本橋へ。自宅のTAが壊れているのに修理する暇がないまま家を出てきたので、何としてもTAを大阪で買って帰らねば、ネットにつなげない環境にこれ以上我慢できそうになかったのだ。

まず梅田の駅前の某大型電気屋で、店員のお姉さんが広大な店内をかけずり回ったあげくルータしか見つからなかったところから嫌な予感はしたが、日本橋で5軒も回ったのにTAはほとんど見つからないという事実に、友人共々愕然とする。

時代はもはやブロードバンドということか。

結局、最初の店で妙に安かったN○C製品を購入。喫茶店に入ってしばらく無駄話をした。ここで私は珍しい事態に遭遇したのだった。

そこは、どこかで聞いたような洋菓子メーカーの名前を冠した店だった。ほどほどに洒落た雰囲気で、女性客がやけに多かったように思う。まあ、ここまでは別に何の変哲もない店だった。

ウェイトレスは私と友人の注文を聞くと、無言でぷいと奥に引っ込んでいった。まあ、ここまではよくある話だ。

ややあって戻ってきたウェイトレスは(残念ながら注文を取った彼女と同一人物だったかどうかは覚えていない)やはり一言も発することなくコーヒーカップとジュースのグラスをテーブルに置くと、サービスらしいクッキーを1枚ずつ我々の前に投げ出したのである。

とどめとばかりにクッキーの上に伝票を放り出し、ウェイトレスは無言でぷいと奥に引っ込んでいった。

それはもう、カップやグラスは投げ出すと割れるから仕方なく普通に置いてやったとでも言わんばかりの給仕であった。

たしかにそのクッキーは、店と同じ名前の洋菓子メーカーのロゴが付いたビニル包装にくるまれており、ちょっと乱暴に置いたからといって割れるものでもなければ衛生上の問題が生じるわけでもない。 しかし、まるで父親のブリーフを箸でつまんで洗濯する娘のごとく、汚物でも扱うように伝票を目の前に投げ出された日には、旨いコーヒーもまずくなろうというものだ。

すっかり気を悪くした我々は、出されたものを早々に平らげ(味は良く覚えていない)、別の店へ移ったのだった。

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2軒目はたしか新大阪の駅構内の喫茶店だったように思う。

店内に一歩踏み込んだ瞬間、
「い〜らっ〜しゃ〜いませ〜ぇ」
 と、なんとも間延びしたウェイトレスたちの合唱が私と友人を一気に脱力させた。

その、「い」と「らっ」と「しゃ」と「い」と「ませ」の間に挟まる0.5秒ぐらいの不自然な間はなんだ。店内に入っていた客から真っ先に目がいく位置にたむろしているにもかかわらず、だらしなくカウンターにもたれていたり、足首を回す運動をしていたりするのはなぜだ。君らは出走前のランナーか。

頭の中で危険信号がみーみーと音を立てて鳴り出したが、すでにやけになっていた私は、いっそこの店のダメ度を見きわめてやろうと腹をくくって片隅に座ったのである。

……案の定、ここでも伝票はかったるそうな手つきで投げ出された。と思えば、ミルクと砂糖のポットはすぐに下げにくる。隣の空席では、さっき足首回し運動をやっていたウェイトレスが眠そうな顔つきで、テーブル上のスタンドにスティックシュガーをせっせと詰め込んでいる。やる気があるのかないのかわからない。だいたい、そのスタンドにはすでにスティックシュガーがぎっちり詰まっており、後からそれを取り出す客はさぞかし苦労するだろうと傍目にも推察できるほどなのだ。つまり、彼女に給仕をさせる客たちに対する、彼女なりの一種のいやがらせなのだろうか。

我々はもはや腹も立たずに呆れかえるしかなかったのだった。